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新世代不揮発性メモリ「NRAM」って何だ?5分で分かる最新キーワード解説(1/3 ページ)

新素材カーボンナノチューブ(CNT)を用いた注目の不揮発性メモリ「NRAM」が登場した。既存メモリ技術と比較する。

» 2016年12月14日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 今回のテーマは、各方面から注目される新素材カーボンナノチューブ(CNT)を用いた不揮発性メモリ「NRAM」だ。電源がなくてもデータを保存できる不揮発性メモリは、ITシステム省電力化と処理高速化の切り札の1つ。HDDとDRAMの中間に位置付けられる次世代不揮発性メモリの中でも従来技術の弱点をカバーするものとして本格実用化を目前にする。一体どんな技術なのか。

「NRAM」とは

 NRAMは、米Nanteroが開発したカーボンナノチューブを利用した次世代不揮発性メモリだ。国内では、55ナノメートルテクノロジーでの商品化に向け、富士通セミコンダクターおよび三重富士通セミコンダクターがライセンスを受け、3社で共同開発することを2016年8月に発表した。

 不揮発性メモリは、通電しなくても記憶を保持できるメモリデバイスだ。PCやサーバに搭載される製品でいえば、HDDやフラッシュメモリ(SSD、USBメモリなど)などが代表例だ。組み込み機器用には、半導体不揮発性メモリが多用される。

 メモリデバイスは、容量、高速性、パッケージサイズ、消費電力、耐久性(書き換え可能回数や記憶保持期間)、コストという6つの項目で比較検討されて、目的や用途に合わせて最適なものが選ばれる。

 コンピュータユーザーには揮発性メモリであるDRAMやSRAMはおなじみだろう。これらは高速な読み書きができる半導体メモリとして多用されるが、記憶を保持するには常時通電する必要があるため、多くはHDDやSSDなどの不揮発性メモリと併用される。

 不揮発性メモリには光ディスクなどもあるが、今後発展が期待されるIoTデバイスを始め、各種の組み込み機器に搭載する不揮発性メモリとして注目したいのは、コンパクトで省電力な半導体チップの形で使え、データの書き換えが自由にできるメモリデバイスだ。これにはEEPROM、NAND Flash、NOR Flashなどがこれまで使われた。

 SSDではNAND Flash技術が利用され、現在では筐体サイズ当たりの容量でHDDを追い越す製品も登場した。大容量でありながらHDDよりも高速に動作するところから、HDD代替あるいは併用が進んだのはご存じの通りだ。

 しかし、HDDより高速とはいえ、他の半導体メモリに比較すると決して速くはないし、書き換え可能回数の上限も10万回程度といわれ、比較的早期に限界が来る。

 NOR Flashデバイスは読み出し速度が速いという長所があり、組み込み機器のファームウェア格納に多用される。一方、集積度が低く書き込みに時間と高電圧が必要という弱点がある上、書き換え可能上限は10万回程度だ。

 EEPROMは書き換え上限が120万回程度と1桁優れているものの、他は同じ弱点を持つ。同様の用途に用いられるのがFRAM(FeRAM)で、こちらは読み書きともに10兆回程度、書き込み速度はDRAMには及ばないが他の不揮発性メモリよりもずっと速く、消費電力も低い。

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