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» 2016年06月08日 10時00分 公開

すご腕アナリスト市場予測:強い組織を作る新コミュニケーション基盤「SMAC」 (1/4)

強い組織を作るには「SMAC」を念頭に置いたコミュニケーション基盤が重要に。そのポイントをアナリストが徹底解説する。

[鵜澤 慎一郎,デロイト トーマツ コンサルティング]

アナリストプロフィール

鵜澤 慎一郎(Shinichiro Uzawa):デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員パートナー

「デジタル人事」を提唱し、クラウド、ソーシャルメディア、ビッグデータを組織、人事の世界に応用し、生産性向上や職場環境の改善を行うことに注力している。日本のHR Transformation(人事部門改革)サービスリーダーとして、グローバルスケールの人事組織再編、オペレーション、人事システム改革プロジェクトを統括。大規模、複雑なグローバル人事プロジェクトおよびクラウドHRソリューション導入に関する日本における第一人者として豊富な実務経験を有する。『AS ONE 目標に向かってひとつになる』(共訳/プレジデント社)、『ワークスタイル変革』(共同執筆/労政時報選書)他、人事専門雑誌への執筆、企業への講演も多数行う。


 ビジネス変化への迅速な対応はITの永遠の課題。グローバル化やワークスタイルの多様化が進む現在、その対応力を担う基盤が従来のままでは限界があるのではという疑問を抱く企業は多いことだろう。

 今後のITをけん引するのは「ソーシャル」「モバイル」「アナリティクス」「クラウド」、すなわち「SMAC」(4テクノロジーの頭字語)であり、これらがもたらすビジネスの機敏性が競争力を左右することは間違いない。中でも今、激しい変化が起きているのがコミュニケーションの領域だ。今回は、SMACの「ソーシャル」「モバイル」が変えていく企業コミュニケーション基盤に注目し、競争力ある強い組織を作るためのポイントを考えてみる。

既存コミュニケーション基盤の限界

 企業の情報共有とコミュニケーションは昔からツールの導入によって発展してきた。IT以前からのフェイストゥフェイスの対話や会議というツールレスの方法に、電話、ファックス、電子メールといったICTツールを次々に加えることにより、物理的、地理的な距離の制約をなくし、時間短縮が可能になった。これに加えて電話会議、TV会議を利用する企業も多い。

 こうしたコンシューマテクノロジーの発展以前から使われてきたテクノロジーは、広く受け入れられてビジネスのスピードアップに多大な貢献を果たしてきたが、その一方でコミュニケーションを希薄化させてきてはいないだろうか。

 図1は、デジタルツールの活用で起こる社内コミュニケーションの課題および社内コミュニケーション増加の必要性をまとめた調査の一例だ。

社内コミュニケーションの課題の有無とコミュニケーション増加の必要性 図1 社内コミュニケーションの課題の有無とコミュニケーション増加の必要性(左)出典:マイナビ(右)出典:みずほ総合研究所「職場のコミュニケーション」に関するアンケート 2012年

 ここに見るように、社内コミュニケーションに課題を感じている従業員が5割を超えており(左図)、社内コミュニケーションが不足していると感じている企業は何と82%にものぼる(右図)。もう少し詳しく社内コミュニケーション課題を調査した資料が表1である。

社内ITツール利用上の社内コミュニケーション課題 表1 社内ITツール利用上の社内コミュニケーション課題。n=121社 該当するものを3つ以内で複数回答(出典:NHKビジネスコミュニケーション調査 2012年)

 ITツールがコミュニケーションを阻害していると感じる人がいかに多いかが分かる。例えば、職場での会話が少なくなった、会話する人が限られて他部署の人との話がしにくくなった、社内外のいろいろな人との対話からのアイデアが得にくくなったという感覚は多くの人が抱いているのではないだろうか。ことに対面ならではの、全て説明しなくとも意思が伝わるような「あうんの呼吸」のような非言語要素を含んだコミュニケーションが、ITツールを介することによって成立しにくくなっている。

 恐らくデジタルコミュニケーションが人間関係を希薄化させているという感覚は、大多数の人が共有しているのではないだろうか。図2に示すように、コミュニケーション相手の範囲は広がる一方、相手との相互理解の度合いはむしろ低くなっているのが現状のようだ。

デジタル化の進展によるコミュニケーションへの影響 図2 デジタル化の進展によるコミュニケーションへの影響

 皮肉なことに、コミュニケーションツールの活用がかえって社内コミュニケーションの不活性化をもたらしているといえる。特にメールは、一昔前にはコミュニケーション改善、効率化の立役者となったが、今では受信量が1日に100通から1000通と大量になり、受け取る情報量が膨大な「メール洪水」現象をもたらすようになった。これほどの量のメールを相手にしていては、メールの見落としなど業務に差し障りが出てくるのは当然のこと。必要なメールの仕分けだけでも多くの業務時間をロスしている。

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