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死活監視だけじゃない、基礎から考えるネットワーク管理ツール入門IT導入完全ガイド(1/3 ページ)

「ネットワーク管理ツール」というと、古くからあまり変わらない分野という印象もある。しかし、ネットワーク高速化、無線LAN対応、仮想化などITの進化とともにネットワーク管理のあるべき姿も変わる。

» 2016年03月22日 10時00分 公開
[宮田健キーマンズネット]

 「ネットワーク管理ツール」というと、これまでは機器の死活監視や構成管理を行うツールを指していた。そのため古くからあまり変わっていない分野という印象を持つ人が多いかもしれない。企業におけるネットワークの活用方法が日々進化する中、ネットワークの監視や管理の目的、手段は変わりつつある。現状の監視手法に過不足がないか、もう一度基礎から知識をアップデートしてみよう。

なぜネットワーク管理ツールが必要なのか?

 今日、どの企業においてもネットワークはビジネスのインフラとして当たり前のように使われている。そもそもネットワークを管理することの目的は「企業におけるネットワークを円滑に運用すること」だ。ネットワーク障害が発生したら素早く問題点を把握し、解決させるだけでなく、そもそも障害が発生しないように兆候を事前につかむことも期待される。

 とはいえ、ネットワーク管理ツールといえば高価で高機能なものという印象が強い。広範囲のネットワークを対象とし大規模システムでないと手を出しづらい分野でもあった。そのため、高い技術を持つネットワークエンジニアありきの運用になり、ノウハウの属人化が問題ともなった。

 しかし、これも解消に向かうだろう。中小規模のシステムでも十分手が届くような100万円前後の価格帯で、最先端の機能を利用できるようなツールが登場している。さらにオープンソースのツールも普及段階にあり、「Zabbix」や「Nagios」などの利用例も増えている。例えば、海外の事例となるがZabbixは金融系システムでも導入されている。

 あらためて「なぜネットワーク管理ツールが必要なのか」を整理してみよう。一般家庭においてもギガレベルのネットワークが「当たり前」となってきた。スマートフォンからでもブロードバンド並みの速度でインターネットを楽しめる時代だ。そのような環境に慣れ親しんだ一般ユーザーにしてみれば、業務で使うネットワークがほんの少しでも速度低下すると「重い。何かおかしいんじゃないか?」と不審に思うわけだ。情報システム部門に入るクレームも増えているそうだ。

 企業ネットワークにおいてはファイアウォールやIPS、IDS、UTMなどのセキュリティ機器の導入が必須だ。このような機器は増える一方であり、一般家庭と同じような高速回線を望むことが難しいという状況は、情報システム部門やネットワーク管理に携わる者ならば当然知っている。しかし、一般ユーザーは違う。そんな時代における新たな「ネットワーク管理」を再考しなくてはならない。

ビジネスにおけるネットワークの意味付けが変化

 ネットワークの「監視」という視点に限ってしまえば、もしかしたら情報システム部は少々“楽観的”に捉えられているのかもしれない。最近ではネットワーク機器の完成度も高くなり、ローエンドの機器であってもなかなか「壊れない」からだ。つまり、取り立ててネットワークを監視しなくてもネットワークは順調に動き続けるというわけだ。

 しかし、昨今のビジネスはネットワーク上こそが「戦場」だ。仮にECサイトを運営しているならば、ネットワークの停止は文字通り死活問題となる。死活だけでなく、予兆の監視が必須となるのは自明といえるだろう。例えば、普段よりもCPUの使用率が高くなったり、エラーレートが増えたりしたときには故障の一歩手前であると判断できるような仕組みが必要となる。

無線化や仮想化による管理ポイントの多様化

 これまでのネットワーク管理の主なポイントは「構成管理」「性能管理」「障害管理」だった。これは現在も変わらない。ここに新たなテクノロジーの登場による課題の追加が発生していることを理解すべきだ。その主な新技術とは「無線LAN」や「仮想化」である。

 無線LANの利用においては、同じネットワークというカテゴリーながら、これまでの管理、監視とは全く異なる視点が必要だ。まず「見えない」こと。ネットワークケーブルが物理的に見えていた有線ネットワークの考え方が通用しない部分も多く、管理手法も異なってくる。

 次に、「品質管理」が重要なこと。先述した通り今日のネットワーク品質は従業員の仕事に直結する。「無線LANにしたらつながらない、仕事ができない」といったクレームが来ないよう、情報システム部門は導入前には入念な検証を、導入後にも継続的な管理を行う必要がある。

 「仮想化」は、仮想マシンを自由に、即時に作れることがメリットだが、同時にそれがネットワーク管理を複雑にもする。仮想マシンの作成をセルフサービスで行えるようにした場合、そのインフラも監視対象になっているかどうかを確認すべきだろう。

 情報システム部門にとって、多様化するネットワークをきっちり監視し、予兆を捉えることで「クレームが来る前に問題を把握し、対処できる体制」を作ることは重要だ。現在ではそれを手助けできるツールが多数登場している。ネットワーク管理を属人化させないためにも最適なツールを選び、適切な機能を用いることが望まれる。

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