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売り上げ拡大やコスト削減に効く、産業領域のIoTユースケースIT導入完全ガイド(2/3 ページ)

» 2015年11月25日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

マーケティングや小売現場での顧客の動線分析

 人間行動を追跡、記録できることもIoTの活用によって初めて可能になる。人感センサー、視線検知センサー、カメラ、ビーコン、POS情報などで、店舗内やショッピングモール内などで顧客を発見し、追跡して動線を記録することも技術的には難しくなくなっている。これまでとは比較にならない精度で動線分析などに生かし、天候情報などと組み合わせれば、購買傾向がより明確に把握できる。

 しかしコストとプライバシー保護などの問題は考えなければならない。マーケティングに必要な情報の取得と引き換えに、情報取得を了承した顧客のみに付加価値の高いサービスを提供し、顧客に利益がもたらされるように運用を設計するのがお勧めだ。街角や施設内のデジタルサイネージを利用して情報取得したら、それと同時にクーポン発行やポイント付与、役立つ情報の提供などを行うようにすれば、分析用のデータ取得と店舗への集客の一挙両得になりそうだ。

 なお、顔認証システムとの組み合わせによれば、お得意様やブラックリスト中の人物などを見分けることも可能になり、入店前に対応の用意をしたり、店内の安全確保を行うなどの行動もとれる。

CRM、マーケティング、小売現場での動線分析のIoTモデル 図2 CRM、マーケティング、小売現場での動線分析のIoTモデル(出典:富士通)

生産現場の見える化

 工場の内部のモニタリングはIoTの最も得意とするところだ。工場内の生産機器などからは常時稼働情報がとれるし、温湿度・照度・CO2濃度などの作業環境も把握できる。環境情報や生産管理情報を取り出して分析することにより、工場全体のパフォーマンスや環境の「見える化」ができる。ひいては視覚化された情報から経営指標(KPI)を抽出し、ダッシュボードなどの形で工場内の操業状況とビジネスとの相関が経営者など現場の人間以外にも容易に把握可能にできよう。

 図3はあるメーカーの製造現場の生産情報、作業情報、稼働情報などをIoTデバイスによりセンシングし、その背景情報や説明情報とともに分析、KPIを画面上に分かりやすく整理して、経営層、現場管理者、作業員がそれぞれの立場で現場の状況を確認できるようにした実例だ。

 この例では製造現場が可視化されて情報共有が進んだことにより、改善のための課題検知、分析作業は、約1週間かかっていたものが即日に完了するようになり、作業者が改善活動の効果を直接体感でき、作業意欲が向上する効果も見えたという。

生産現場の可視化のイメージ 図3 生産現場の可視化のイメージ(出典:富士通)

 ある工場では、ライン停止が30%削減する効果も生まれている。図4は、製造現場の可視化の一例だ。工程ごとの予定時間と実際との差分をとることで問題発生箇所が分かり、ライン作業者からの情報などと突き合わせて要因を特定することも容易になっている。

製造現場の見える化の例 図4 製造現場の見える化の例(出典:富士通)
  • 計画値と収集したデータの実績値の差分(時間)が見える
  • センサーなどからの生データに、ライン作業者などの背景データをひも付けることで、因果関係を見いだす

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