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BYOD、CYOD、COPE、スマートデバイス業務利用の選択肢すご腕アナリスト市場予測(1/4 ページ)

BYODという概念だけでなく、CYODやCOPEといったスマートデバイス管理の在り方も。デバイス管理のあるべき姿をアナリストが解説する。

» 2015年11月19日 10時00分 公開
[城田真琴野村総合研究所]

アナリストプロフィール

城田真琴(Makoto Shirota):野村総合研究所 デジタルビジネス推進部 グループマネージャー

大手電機メーカーのシステムコンサルティング部門を経て2001年、野村総合研究所に入社。以来、最新IT動向の調査と分析を行うITアナリストとして活動。専門は、クラウド、ビッグデータ、M2M/IoTなど。近著に『パーソナルデータの衝撃―一生を丸裸にされる「情報経済」が始まった』(ダイヤモンド社)がある。


 ワークスタイルの変革、デバイスコストの削減、新技術の先取りなど、さまざまな理由でスマートデバイスを業務に利用しようとする企業が増えている。導入形態としては、「企業がデバイスを一括購入して従業員に貸与する」あるいは「従業員の私物デバイスを業務でも使用する」の大きく2つに分けられるが、最近ではさらに細分化して考える動きも出てきている。今回はスマートデバイスの業務利用の状況と導入の選択肢について考えてみよう。

国内企業のBYOD導入率は?

 「ワークスタイル変革」というキーワードとともに、スマートデバイスの導入形態として一時期注目を集めたBYOD(Bring Your Own Device)は、「私的デバイスの業務利用」を意味し、2012年ごろから広まったキーワードである。従業員が自費で購入し、プライベートで使用しているスマートデバイスを会社の業務のために使うことを指し、毎月の通信費用については、会社が一部補助するケースもある。

 BYODでは従業員が自分の好きな端末を自由に選択できる他、端末を2台持ち歩く必要がない。このため利便性が高く、自分の使い慣れた端末が使えるだけに、企業にとってはトレーニングコストが掛からないというメリットがある。端末の購入費用なしにモバイル活用を推進できることもあり、中小企業中心に一部で導入が進んでいる。

 しかし、国内企業全体でみれば、それほど導入が進展していないのが実情である。2013年時点の調査結果ではあるが、国内のBYODの導入率は図1のようになっている。

国内のBYOD導入率 図1 国内のBYOD導入率(出典:NRI「企業情報システムとITキーワード調査」2013年9月)

 日本の状況は青色の棒が示しているが、他国に比べ、導入が進んでいないことが一目で分かるだろう。他国がおおよそ30%以上、特に米国では半数間近の導入率になっているのに対し、日本ではわずか9.8%だ。現在ではもう少し増えているかもしれないが、他国に比べ、導入率が極めて低い傾向に変わりはないだろう。また、今後の予定についても、「当面許可する予定はない」「全く検討していない」という企業が合わせて約7割もあった。

 この調査結果からは、日本企業のセキュリティや情報漏えいに対する意識の高さが覗える。BYODは「Bring Your Own Disaster(文字通り、Disaster=災害を社内に持ち込んでしまうということを意味)」とやゆされることもあり、セキュリティ面では不安が残る。

 万が一、社内にウイルスが持ち込まれたり、情報漏えい事件が起こったりすると取り返しのつかないことになるという考えを、メリットよりも上位に位置付ける企業が日本には多いことを示しているといえるだろう。

 加えて、日本企業には「仕事に使う道具は会社が支給するのが当たり前」という考え方が一般的であることが、BYODの導入率の低さにつながっている可能性もある。日本社会は欧米と異なり、成果主義が徹底されているとは言いがたい。そのため、欧米企業の従業員のように「自身の生産性を最大限に向上させるために、普段使用しているスマートデバイスを使わせて欲しい」というニーズ自体があまりない可能性がある。従って、企業がBYODを許可したからといって、従業員の満足度向上に直結するとはいいにくい。

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