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» 2015年09月28日 10時00分 公開

IT導入完全ガイド:ビジネス加速に不可欠、あらためて考えるDevOpsツール (1/5)

クラウド、モバイル、IoTと近年ますます加速するビジネス環境下で再注目されるDevOps。ビジネス効率改善にどう役立つか。

[土肥正弘,ドキュメント工房]

 「DevOps」(デブオプス)は、アプリケーションを継続的に短期開発、リリースしていくために有望視されている方法論と技術、ツールを指す。2013年ごろに小ブームがあり、その時期を過ぎるととたんに「バズワード」扱いされたDevOpsだが、クラウド、モバイル、IoTと、近年ますます急加速するビジネス変化に追随できるITを望む企業に再注目されている。

 しかしツールベンダーが提供する製品はスコープがそれぞれ違い、DevOps導入で何がどう変わるかが理解しにくいのも事実だ。その場の都合でDevOpsツールを導入していけば、やがて全体の一貫性を保てなくなり、本来望みうるビジネスパフォーマンスが得られない懸念もある。そこで今回は、DevOpsが本来目指すべきビジネス効率改善にどう役立つかという視点で、最新ツールをベースに考えてみたい。

「DevOpsツール」って何だ?

 「開発と運用の協調」がアプリケーションの高品質化、リリース短期化、速やかな改善に貢献するというのははるか昔から言われ続けてきた一種のスローガンだ。しかし増加する一方のアプリケーションとその改修、新ビジネスの立ち上げなど、ITの活躍する舞台が増えるほどIT部門の負担が増え、開発チームも運用チームも専門領域の仕事をこなすのが精いっぱい、両者間の溝の深まりにも気付かない……そんな状況に心あたりはないだろうか。

 もし「運用には話が通じない」とか「開発は無理ばかり言う」という声が聞こえたら赤信号だ。図1のように、開発側も運用側も相手の業務を過小評価して、ITライフサイクルの全体が見えなくなっている状況が考えられる。

運用チームと開発チーム相互にありがちな無理解 図1 運用チームと開発チーム相互にありがちな無理解。上は開発チームから見た運用のイメージ、下は運用チームから見た開発のイメージ(出典:日本IBM)

 数年のスパンで更改する基幹系システムさえしっかり稼働させれば大丈夫という時代はもう過ぎた。月に数十本レベルでアプリケーションをリリースする企業は今では少しも珍しくない。ビジネススピードに追随するには、ITのライフサイクルは年レベルから月、週、日単位で考えなければならなくなってきた。

 そこで注目したいのが「DevOps」だ。これは古いスローガンを新しい装いでくるんだだけのものではない。具体的な方法論とツールで、開発と運用のギャップを埋め、アプリケーションリリースサイクルを劇的に、しかも継続的に短期化しつつ、高品質化やサービスの高度化も望めるポテンシャルを持っている。それはどういうことなのか、まずはDevOpsの生い立ちから簡単に見てみよう。

 「DevOps」の考え方の発端は、2008年のWeb技術に関する国際会議「Velocity」でのChefとPuppetと呼ばれるサーバ構築自動化ツール(運用自動化ツールともいう)の紹介だ。これらツールは、コマンドだけでサーバマシンにミドルウェアやアプリケーションを導入して環境設定も済ませることができた。Chefの場合、欲しいシステム構成のスクリプト(レシピ)を書けば、Chefが自動実行し、その構成定義(クックブック)を保管して、同一環境をまた作るときにはそれを呼び出すだけで構築可能になる。

 従来運用管理技術者がサーバマシンの前で手作業でやってきた仕事が、開発と同様のスタイルで、前準備を除けば人手を介さずに(つまり速く、間違いなく)できるようになったわけだ。その翌年の同会議では、「開発(Development)と運用(Operation)の協調」により、「1日に10回のアプリケーションリリース」が可能という発表が行われた(画像共有サービスのFlickrのスタッフによる)。一方、ほぼ同時期にOS以下の環境をクラウドに自動構築できるクラウド自動構成ツールOpenStackが公開されるなど、クラウド側の自動化技術も進み、以降はサーバの用意から環境構築までの自動化を実現する各種ツールがそろっていく。

DevOpsがビジネス加速のキーワードに。しかし誤解も生じる

 こうした「開発のスタイルで運用も行える」ツールを使えば、これまでアプリケーション開発短期化のネックになっていた運用側の仕事を削減し、リリースまでの期間を大幅に短縮できる。その結果、ますます激化するビジネス変化に合わせてITがタイミングよく追随できると考えられた。

 この考え方に「DevOps」という呼び名がつき、たちまち世界のWeb系サービス会社やSIer、大口ITユーザー、開発者コミュニティーなどが飛びつき、国内でも2012年には関連イベントが開催され人気を博した。

 それ以降、DevOps導入企業は国内でも通信、製造、金融、運輸などの大手企業、B to B/B to C EC、モバイル系、ゲーム系企業に広がりを見せており、基幹系アプリケーションへの適用も一部始まった。今後、エンタープライズ事例が公開されていくと、国内でもDevOpsの本格的普及に拍車が掛かるとみられる。

 ただしその一方で、DevOpsツールベンダーの方向性やスコープの違いから誤解も生じており、「ビジネスの加速」のためにどう生かすかという本質的な議論が十分でないまま、目先の都合に沿った個別ツールを無計画に導入して全体効率向上を妨げるケースが生じるなど、期待を裏切られる場合もあるようだ。「バズワード」化したといわれる背景には、DevOpsに関する情報の錯綜(さくそう)も一因になっていそうだ。

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