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統合プロセッサの潜在能力を引き出すフレームワーク「HSA」とは?5分で分かる最新キーワード解説(1/3 ページ)

CPUとGPU一体化の能力をフルに発揮するためのプラットフォーム「HAS」が登場した。潜在能力を引き出すための新たな試みに注目する。

» 2014年07月16日 10時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 今回のテーマは、「HSA(Heterogeneous System Architecture)」だ。現在、CPUとGPU(Graphics Processing Unit)を1チップに一体化したプロセッサが多くなった。しかし、プログラム技術は必ずしもその真価を十分に引き出せていない。

 HSAは、CPU用とGPU用で別々に作られたプログラムを1つにし、アプリケーション開発を容易にしようという取り組みだ。GPUが持つ並列処理能力をグラフィックス以外にも活用し、CPUとGPUが処理を分けあって協働すれば、ビッグデータ解析が80倍の早さで行える可能性がある。PCやサーバのみならず、組み込みシステムへの応用も有望なHSAのあらましを見てみよう。

「HSA」とは

 HSAは、CPUとGPUの特徴を生かしながら上手に処理を分け合うことで、これまで不可能だった高い性能、低消費電力、低コストで価値あるアプリケーションを作り出すための新しいフレームワークだ。プロセッサメーカーのAMDが提唱し、ARMやサムスンなど有力企業が参加して標準仕様が2014年4月に策定された。

 HSAの前提になるのは、CPUとGPUをそれぞれマルチコア化して1つのチップに集積する、最近の統合プロセッサのハードウェア構造だ。HSAの「H」は「ヘテロジニアス」(異種混合といった意味)のことで、CPU、GPUなどの異なるプロセッサのことを指す。

 システムアーキテクチャを定義しようというのがHSAで、従来異なるプログラミングが必要だった異種プロセッサを統合的に利用し、最新統合プロセッサが秘める可能性を100%引き出すことを目指したハードとソフト両面からの最適化アプローチだ。

 HSAを利用したアプリケーションの実行イメージは図1に見る通りで、1つのHSA対応アプリケーションで統合プロセッサ上のCPUはもちろん、GPUをグラフィック用の他に汎用(はんよう)数値演算の並列処理に利用することが、従来よりも簡単かつ低コストに実現すると期待される。

「HSA」を利用したアプリケーションの実行イメージ 図1 「HSA」を利用したアプリケーションの実行イメージ(出典:日本AMD)

有力企業が集うHSAファウンデーション

 HSAは、特定プロセッサを対象にするものではないが、現実的にはAMDがx86系CPUとGPUを同一ダイ上に構成したAPU(Accelerated Processing Unit)の効果的な利用が目下の課題となる。

 AMDが中心になって2012年に発足した業界団体「HSAファウンデーション」が標準仕様を策定し、標準1.0版は2014年4月18日に公表された。HSAファウンデーションには、AMDの他にARMやImagination Technologies、テキサスインスツルメンツ、サムスンなどが参加したため、x86系CPUばかりでなく、ARMなど別種のCPUとGPUが統合されたプロセッサ対象にも利用される可能性が広がる。

 ゆくゆくはLinuxなどを利用する組み込み系システムの世界でも、CPUの性能にGPUの並列処理性能を組み合わせて生かす高速コンピューティングが、仕様をきっかけに普及を始めるかもしれない。

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