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後を絶たない内部からの情報漏えい、そのメカニズムと対策すご腕アナリスト市場予測(3/3 ページ)

» 2014年06月19日 10時00分 公開
[益子 るみ子情報処理推進機構]
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悪意のない不正行為への対策

 企業で発生する内部不正は、明確な悪意を持った不正行為だけではなく、本人に悪気がなかった場合も多い。例えば、作業の遅れを挽回するために、社内ルールに違反して社内資料を持ち出し自宅で漏えいさせてしまったり、PCの紛失や盗難、SNSや掲示板への安易な書き込みなどがある。

対策

  • 社内教育を通し、情報の無断持ち出しが不正行為であること、ルールに違反すると社内規定で罰せられることを認識させる
  • 個人のUSBメモリなどの使用を禁止する。また、情報漏えい対策ソフトのデバイス制御機能などによりUSBへのコピーを防止する
  • PCの紛失や盗難、または、誤って関係者以外に渡ってしまうことを考慮し、保存してあるデータを暗号化する
  • ソーシャルネットワークサービス(SNS)の利用に関するルールを決め、教育を通し、従業員に周知徹底する。また、社内での不満をインターネットの掲示板に安易に書き込んだり社内情報をSNSへ送付したりすることを防ぐため、コンテンツフィルタなどによりSNSや掲示板へのアクセスを制限する
  • 資産管理ソフトなどにより、ファイル共有ソフトなど無許可のアプリのインストールを禁止する

職場環境に起因する不正行為への対策

 IPAの社員向けアンケート調査では、社員が不正行為を働く動機を高める要因として、処遇面の不満に関する項目が上位を占めた(表2参照)。ここでは、従業員に不正行為を踏みとどまらせる対策として、職場環境の整備について、IPAが実施したインタビュー調査とアンケート調査の結果に基づき述べる。

不正行為への気持ちを高める要因 表2 不正行為への気持ちを高める要因(社員向けアンケート、複数回答の上位5項目)(出典:IPA)

対策

  • 適正な労働環境:職場環境や労働環境を整備して、業務量や勤務時間を適正化する。また、特定の従業員の業務負荷が極端に高い状況を是正する
  • 良好なコミュニケーション:相談しやすい環境を整備し、業務の支援や上司や同僚との良好なコミュニケーションがとれる職場環境づくりを推進する
  • 公平な人事評価:公平で客観的な人事評価を整備し、従業員が評価内容を理解、納得できるよう、人事評価結果を説明する機会を設ける。また、適切な人員配置および配置転換をする

 今回、4つのケースでの対策を紹介したが、他のケースや、早期発見のための通報制度、被害を最小化するための事後対策など、他にも検討すべき項目がある。

トップダウンで組織横断の取り組みを

 これらの対策からも分かるように、内部不正には、人事部門や法務部門、情報システム部門など複数の部門が連携し、企業全体で取り組む必要がある。そのため、企業のトップが積極的に関与して体制を構築し、部門横断での取り組みを推進することが重要である。

 最後に、IPAでは、内部不正による事故・事件発生を防止するため、2013年3月に「組織における内部不正防止ガイドライン」を策定し、公開している。ガイドラインでは基本方針や技術的管理、人的管理、物理的管理など10の観点から30の対策項目を示しており、自社の対策状況を把握するためのチェックシートがついている。

 また、内部不正対策の具体的なソリューションとして、30の対策項目に対応した製品、サービスを、日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)の「内部不正対策ソリューションガイド」で紹介している。内部不正防止のための環境整備に役立てていただきたい。

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