データセンターにおける、キャパシティー管理と省エネルギー

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データセンターにおける、キャパシティー管理と省エネルギー

データセンター 2017/11/02

 第1回では設備構築と設備運用体制、そして第2回ではネットワーク設備とセキュリティ設備について、データセンター選定のポイントを紹介してきました。最終回となる本稿は、設備のキャパシティー管理と省エネルギーについて取り上げたいと思います。

将来的な拡張性を意識したキャパシティー管理

 データセンターの建設においては、「センター全体の床面積」「コンピュータ室の面積」「冷却効率」などを考慮して、必要設備(UPS設備、熱源設備、空調設備等)を設計します。しかし建設当初からすぐにコンピュータ室が満室になることは無いため、その時点での顧客の要望にあった分のみの設備を構築し、その後の「成約状況」もしくは「使用量の増加」に合わせて、順次、設備を導入していきます。つまり、データセンターの竣工当初は、そのときに必要十分な設備のみを構築し、その後は負荷(需要)増に対応するべく、時期を確認しながら設備を増強していきます。これは、不用な初期投資を抑えるばかりでなく、稼働設備の保守費用の削減にもなります。    
 
 しかし急激な負荷増になった場合、供給設備をすぐに設置するのは不可能です。設備の増設、増強は大なり小なり、製作期間、据付期間、試験調整期間が必要になるからです。例えば、大型のUPSや冷凍機などは受注生産制のため、使用できるまでに半年から10カ月は必要です。そこで重要になってくるのが、キャパシティー管理です。    

 データセンターのキャパシティー管理を行っていく上では、お客さまの設備(主にコンピュータの台数やラック数)の拡張計画と、今までの負荷の増加傾向が、重要な判断要素になってきます。これを見誤ると、電気容量不足による稼働開始時期の延期、空調能力不足による熱だまりの発生とそれに起因するシステムトラブル、ネットワーク回線不足による稼働開始期間の延期等が発生し、お客さまに多大な迷惑をかけてしまいます。だからといって過分な設備量を保有していれば、点検費や減価償却費、修繕費の増大などで経営を圧迫しかねません。一方で、竣工当初は休眠させておくことを覚悟してでも設置しておいた方が、長い目で見たときにコストダウンにつながる設備もあります。その辺りを「良いあんばい」で初期構築することも、重要になってきます。    

 以上で述べた通り、選定予定のデータセンター事業者が適切なキャパシティー管理を実施しているかどうかは重要なポイントです。実施していないと、年次点検などで設備を停止していく際に冗長性が確保できなかったり、突然の障害で機器停止になり深刻なサービス停止に陥る可能性もあります。現場確認の際には、最新の設備を有しているかではなく、どのようなキャパシティー管理を行っているかを確認をすることをお勧めします。  

省エネルギー関する認証と数値

 相当量のエネルギーを使用するデータセンターでは、エネルギー使用量の削減は重要な経営課題です。    

 しかし、お客さまが使用するコンピュータ機器やネットワーク機器に対しては、自身の判断で省エネ機器を導入していくしかありません。データセンター側でできる省エネ対策は、空調、熱源系のエネルギー削減と照明のコントロールが主な対策です。

 このデータセンター事業者の省エネ対策の判断基準として最も厳しく規定かつ詳細に記述しているのは、東京都で実施している「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」に基づいた「優良特定地球温暖化対策事業所の認定ガイドライン」かと思います。この認定基準は、最新の省エネ機器を導入しているかを見定めるのではなく「どのように運用をしてチューニングをしているか、省エネ対策についてPDCAをいかに的確に実施しているか」を、幅広く審査するものです。このガイドラインの認定基準に適合していると東京都知事が認めると、「優良特定地球温暖化対策事業所」(トップレベル事業所)と認定され、削減義務率も軽減されます。    

 特に、データセンターの各設備は、最大負荷を想定し設計されているため、設備運用時には設計条件や設計性能通りに使用されることが少ないため、運用時の負荷と使い勝手に合わせて、最適な設定と運転方法にチューニングすることが重要となります。    

 「トップレベル事業」認定などの外部認証については、データセンター見学時に確認できますが、データセンター業界では、この省エネの判断指標として「PUE(※1)」という指標を設定しています。JDCCでの規定もありますが、事業者間で算出上の案分に対する考え方の違いや、センサー、メータの誤差があるため一概に横並びでの数値比較ができるわけではありません、しかしそれぞれのセンターで継続的に算出し評価していることを確認することにより、取り組み方の評価が可能です。    

 省エネを実現するためにどのようにデータセンターの運営を行っているかなど、その背景にある思想をしっかりと把握しておくことも重要です。

※1 PUE: Power Usage Effectiveness、データセンターのエネルギー効率を示す指標の1つ。

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キャパシティー管理と省エネを実現する上で重要な負荷試験

 最終回は「キャパシティー管理」と「省エネ」の観点から書きましたが、この2点は表裏一体で、「どちらかが素晴らしくできて、どちらかができていない」ということはありません。設備運用をしっかり行っていき、それぞれをドキュメント化していけばおのずと整備されていきます。    

 そしてもう1つ重要なポイントは、模擬負荷を使用した現地試験(以下、負荷試験)を実施しているかどうかです。

 データセンターの竣工当初は利用率も低く、運転効率もなかなか上がらないのが現実です。またその時点では顧客数も少ないため提供エネルギーも少なく、設備の最大効率で運転できるところまで到達せず、結局低効率での運用になります。しかし、その期間を利用すれば、設備に余力がある状態での負荷試験が行えます。工事業者による確認は無負荷時でのものがほとんどで、想定される負荷を実際に掛けての試験は行いません。そして負荷試験はコンピュータ室の利用契約が進み、フル稼働した時にはもうできなくなるといっていいでしょう。また、設備量と負荷量の均衡状態では、思い切った試験ができなくなります。つまり、データセンター事業者にとって、竣工当初こそが負荷試験を行える絶好の時期なのです。    

 その後の本格運用時に「ノーダウン」が求められるデータセンターにおいて、「省エネ」の試験のためにさまざまな設定変更を行うリスクは避けたいのが本音です。その際、前述の負荷試験のデータを持っている事は、管理値の設定変更などにおいて重要な判断要素となるのです。    
 
 最新の設計思想や設備を導入すればそこそこの運用はできますが、データセンターに求められる「ノーダウン」と「省エネ」の両立は、長年の経験と蓄積してきたデータ、たゆまない努力によってなしえるのもです。   

 データセンタの選定時には、「キャパシティー管理の方針」「省エネへの取り組み」そしてそれらの裏付けとなる「事前試験や負荷試験の取り組み」を確認してはいかがでしょうか?

最後に

 3回に分けて話をさせて頂きました。これらが皆さんのデータセンター選定時のお役にたてればと思います。お付き合いいただき、ありがとうございました。

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キーマンズネットとは
1982年4月東京電力株式会社入社、2000年6月株式会社アット東京発足に伴い出向。データセンターの設計・構築運用の技術責任者(CTO)となり現在(理事)に至る。データセンターの建設に加え、コンピュータ室利用の提案から設計・構築・最終動作確認・運用、さらに、データセンター利用段階時の省エネを含めた運用を多数提案している。

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