実際の運用をどこまでのぞけるか?データセンター選定のポイント

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実際の運用をどこまでのぞけるか?データセンター選定のポイント

データセンター 2017/07/31

データ社会の屋台骨である「データセンター」

 昨今のデータ社会を支えるデータセンター。その選定要件や企業がデータセンターに求めるニーズはこの15年ほどで大きく変化しています。

 施設の堅牢性や電力供給など施設としての機能が重要視された2000年代初頭。その後、外部ネットワークとの接続性や、どのような通信キャリアとも接続可能なキャリアダイバーシティーが重視されるようになり、現在では「データセンター構内でどういった企業と接続できるのか」といった、データセンター内でのエコシステムがより重視されるようになってきました。
 
 そのような環境の中、選定される側としてデータセンターの運営業務に15年以上携わってきた立場から、データセンター選定のポイントをご紹介します。第1回となる今回は、実際の運営を想定した設備、サポート体制について述べさせていただきます。

金額では判断しきれない利用者と施設側の信頼関係

 データセンターは企業の基幹となるシステムとそれを搭載するサーバを設置する場所であるため、当然ながら施設の堅牢性や電力供給の安定性、非常時のバックアップ体制などがしっかりした建物・設備であることが必須条件となります。その設備基準については、データセンター事業者の業界団体である「日本データセンター協会(通称JDCC)」が「JDCCファシリティスタンダード」(http://www.jdcc.or.jp/pdf/facility.pdf)として取りまとめています。現在は、ほとんどのデータセンターがこの設備基準を満たしており、RFPなどの評価シート上ではほぼ優劣をつけることができなくなっているのが現状です。

 では利用者は、設備構成以外のどのようなポイントで選定を行っているのでしょうか。確かに利用料金の大小は大きな決定要素だと思いますが、重要な点はそれだけではありません。

 基幹となるシステムを設置すれば、少なくとも3年、長ければ10年はそのデータセンター事業者と付き合っていくことになるでしょう。そのため、利用決定前にそのデータセンター内部の実態を知るためにも、候補となったデータセンターの見学をおすすめします。データセンター事業者である当社では必ず行っていただいている内容です。
 
 データセンターの設備構成は千差万別です。それは、事業者がそれぞれ今までの運営経験を生かして設計、構築を行っているからです。データセンター見学は、その運営実態を見ることができるまたとない機会といえるでしょう。

 信頼度を上げるために冗長化された大規模な受変電設備、コンピュータシステムを冷却するための熱源設備・空調設備、ネットワークの中継地点となる通信設備などこれら設備を見学するだけでなく、実際に運営している人々を知るのも重要な要素ですので、最大限、見学の機会を活用してください。では、その際に確認すべきポイントを3つ紹介します。これらのポイントは実際に選定される側の立場として、お客さまからの質問や要望が多かったものです。

1. 設備、運用体制の丁寧さ

 施設見学は実際の現場を見る機会として、サーバルームだけでなく、UPS(無停電電源装置)やEG(非常用電源装置)、空調などの設備をより詳細に確認すべきです。

 例えば、UPSであれば今までの稼働状況や機器の更新計画を確認することは当然ですが、それ以外の機器についてもそれぞれの状態だけでなく「それらが設置されている環境」をしっかり確認することが重要です。

 機器に錆や油漏れはないか、掃除が行き届いているか、また、電源ケーブルや通信ケーブルが整然と配線されているかなど、普段見えないところにも管理が行き届いている施設であればあるほど、丁寧な仕事振りが見え、安心感につながるはずです。

 これらの点は非常にさまつに感じるかもしれませんが、施設を運営する側の思想や哲学が大きく現れるポイントです。丁寧できめ細かい対応を求める場合には、そういった点にまで手が行き届いている施設をおすすめします。

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MDF室(通信ケーブル)

2. 災害時の対応体制

 地震や津波などの自然災害は、首都圏においても無視できないリスクといわれています。そういった自然災害発生時の対応力も重要な確認ポイントです。施設としての堅牢性だけではなく、災害発生時の運用スタッフの体制は忘れずに確認しておきましょう。緊急事態こそ熟練の運用管理者の技量が試されます。そういった人員がどのくらい配置されているのか、また彼らの交代体制がどのようになっているかを確認しておきましょう。  
 
 さらに、EGの燃料がどのような思想で備蓄されているかも非常時のチェックポイントとしては大切です。そういったポイントを確認するために、東日本大震災のような過去の災害時の対応状況の確認も有効です。地震発生時の初動対応や、災害時の被害状況、計画停電時の対応などを具体的に確認しておくと、実際の対応時にも安心感が生まれます。また、日々の防災訓練の実施方法も確認しておくと、施設の防災意識レベルを図ることができます。

3. 過剰な冗長化がされていないか

 データセンターの運用において、冗長化することはリスク排除の面で重要ではありますが、過剰な冗長化は管理する機器の点数が増え、障害発生時の原因特定の長期化を招く恐れがあるため、逆にリスクとなることがあります。  
 
 もちろんどのような目的でデータセンターを活用するか、またデータセンター事業者の設計思想により、冗長性をどこまで備えるかはそれぞれですが、「冗長化が過度なのでは?」と感じた場合には、より一層障害時の対応を確認すると良いでしょう。

利用者側の事情を考慮した柔軟性(対応力)

 データセンターを運営する上でもう1つ重要なことがあります。それは、柔軟性です。柔軟性には、施設としての拡張性という意味もありますが、それ以上に、利用者の希望を受け入れながら、運営実績をもとにした確実な内容で提案する「柔軟性」をもっているか否かが、選定における大事なポイントになってきます。  
 
 例えば、利用者からより高い冗長性を求められた時、施設構成や運用管理の複雑性、構築費用、納期の面で対応が厳しい場合でも一方的に否定するのではなく、利用者とデータセンター事業者が一丸となって最適な方法を検討することが非常に重要です。使用する製品・メーカーの良しあしをデータセンター事業者の事情で説得するのではなく、じっくり利用者と仕様の確認を行い、データセンター事業者側から最適と考える提案を行う。このやりとりを繰り返していくことができない相手とは、長期にわたってデータセンターを活用していくことが難しくなってしまいます。  

 一方で、利用者へ柔軟な対応をするということは、個別対応業務が増え実際の運営が複雑になるということでもあります。そのような運営に対しても臨機応変に対応できることが、データセンター事業者の腕の見せ所ともいえるでしょう。

 もちろん、データセンター利用に関する予算は利用者によって千差万別です。設備構成や金額にさほどの違いが出ない場合、「窮屈な既製服」を選ぶのか「自分にフィットした服」を選ぶのかは利用者次第となります。目的によって、またその状況によって選定をされることをおすすめします。

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サーバルームでの作業の様子


 第1回である今回は、データセンターの選択時に確認すべきポイントとして、実際の運営を想定した設備運用、サポート体制について述べました。次回はネットワークとセキュリティについて、書いていきたいと思います。

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キーマンズネットとは
1982年4月東京電力株式会社入社、2000年6月株式会社アット東京発足に伴い出向。データセンターの設計・構築運用の技術責任者(CTO)となり現在(理事)に至る。データセンターの建設に加え、コンピュータ室利用の提案から設計・構築・最終動作確認・運用、さらに、データセンター利用段階時の省エネを含めた運用を多数提案している。

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