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アクセンチュアが語るAI活用実例とトランスフォーメーションKeyConductors

AIを活用するために日本企業に足りないものは何か。事例を引きながらコンサルタントが語った。

» 2017年01月10日 10時00分 公開
[キーマンズネット]

 2016年12月13日と14日に開催された「Salesforce World Tour Tokyo2016」では、アクセンチュアが「エンタープライズビジネスにおけるAIの活用 〜EinsteinとFullforceを活用したトランスフォーメーションとは〜」という題目で講演を行った。今回はその内容の一部を紹介する。

マルチスピードITを実現するITアーキテクチャとAIの要素技術

 まずアクセンチュアの篠原 淳氏は、同社が提唱している「マルチスピードIT」というキーワードの解説から始めた。「ERP、ホストコンピュータなど重厚長大なITを維持しながら、一方でセールスフォースのような早くて軽いアーキテクチャを合わせて運用・開発していかなければならないというマルチスピードITが求められている」と話した。

篠原 淳氏 アクセンチュアテクノロジーコンサルティング本部クラウドファーストアプリケーションズアジア・パシフィック統括マネジングディレクター 篠原 淳氏

 篠原氏は、そのマルチスピードITを実現するためにAIの活用が欠かせないと述べた。そしてAIをどのように活用するべきか――篠原氏は、目指すべきITのアーキテクチャの中で、AIを「1.インテリジェント・インフラストラクチャ」「2.インテリジェント・プロセッシング」「3.デジタルアシスタント」の3層に分類し、多面的なAIの活用が必要だとした。

 「米国では『ブティックAI』と呼ばれるそれぞれ専門性を持ったAIベンチャー企業が多く存在する一方で、IBMのWatsonのような重厚長大なAIもある。それぞれに得意不得意があり、これらを使い分ける必要がある。AIの活用には、目的に対して適切なAIを選ぶ目利き力、AIを育てる能力、AIをつなぐ能力が重要で、今のうちから準備しておくことが求められる」と篠原氏は述べた。

 また、篠原氏は世界市場でのAIの潮流を俯瞰した。「日本のマーケットでは高度なAIに注目が集まっているが、世界ではもっと手軽に使えるAIや簡単な判断を伴うロボティクス・プロセス・オートメーションの検討・導入が活発化している。AIと一口に考えるのではなく、どのような要素技術が使われていて、それが自社のAI活用に影響があるのかないのか理解することが大切。つまり、AIはただの“箱”であり、それをどのようにトレーニングし、育てていくかを考えた上で導入することが必要だ」とAIを構成する要素技術について次のように示した。

  • 知覚:ロボットの目、画像認識、音声処理、音声認識、センサー処理、センサー認識
  • 理解:自然言語解析・処理、ナレッジ・ベース、知識表現
  • 行動:インタフェースエンジン、推論エンジン、ルールエンジン、エキスパートシステム
  • 学習:機械学習、深層学習

 これに続き篠原氏は、AIを企業内に適用する領域として、「自動化」「増強」「データの複雑さ」「仕事の複雑さ」で定義される4つの活動モデル、すなわち、効率化モデル、有効性モデル、エキスパートモデル、イノベーションモデルについてそれぞれ紹介した。

AIの活用実例とトランスフォーメーションの加速

 次に篠原氏はAI活用の実例をヘルスケアと、金融の分野で紹介した。「ヘルスケアの分野では、予約、スケジューリングなど自動化しやすい領域の一方で、eコンサルティングやバイオメディカル、リサーチなどは人の活動を増強・強化する技術として適合可能性が見いだせる。一方で医師に代わって簡単な診断を行い、症状を絞り込んでから専門家の診察を受けるなどをAIがサポートする、資料に基づく処方のアドバイスする、手術ロボットのアシストなどのほか、大きな病院で患者に待ち時間を与えないなどワークフローの制御、人間の判断間違いを避けるためのレコメンデーションなどをAIはサポートする」(篠原氏)と述べた。

 また、篠原氏は、「金融業界、特に銀行では膨大なトランザクションや、顧客の対応などにAIの活躍が予想される。コンタクトセンター、ヘルプデスク、パスワードのリセットなどさまざまな分野でAIが使える。フィナンシャルアドバイザーなど専門知識をもって顧客に対応する分野や、膨大な商品について現在管理し切れていないものに、これらにエキスパートシステムが活用できる」と述べた。さらに篠原氏はこれらの事例は「今後、自分が所属する業界でどのような分野にどのような種類のAIが適応できるか、その順番やスケジュールを考える際のヒントになる」とまとめた。

 続いて篠原氏は、セールスフォースのAIについて話題を転換し次のように続けた。「セールスフォースが優れているのは、アプリケーションそれぞれにAIを組み込むのではなく、プラットフォームとして中間のレイヤーに独自のAIである「Einstein(アインシュタイン)」を置き、どのモジュールでもEinsteinを使ってデジタルアシスタントを受けることができるようにしたことだ」(篠原氏)とポイントを強調した。

 また、軽く、早くデジタルアシスタントを実現するのにせよ、精度の高い業務データとその活用シーンの精査、ベストアシスタントの蓄積と推進する枠組みが肝要だとした。

 講演の最後に、篠原氏はアクセンチュアのようなコンサルティング企業の働きとして、「AIを活用して具体的な活動を支援する。Einsteinには期待している」としてセールスフォースが挙げているEinsteinの活用の4分野

  1. 洞察・分析
  2. 予測・予兆
  3. 推奨
  4. 自動化

について解説した。4分野を紹介すると(1)の洞察・分析は、Saleceforceに蓄積されたデータを見せる洞察・分析のこと、(2)の予測・予兆は、蓄積されたデータをスコアリングする予測・予兆のこと、(3)の推奨は、次の一手を推奨すること、(4)の自動化は、手作業の集計を自動的に行うこと――である。

 そして、日本企業に求められることとして、「これまでのように新しく登場した技術を戦略なしに少しだけ試みてやめてしまうのではなく、上層部が腹をくくって取り組むことが重要。また、事業の壁を取り払い、組織的なトランスフォーメーションを起こすために、組織の下から改革を起こすことも重要だ。セールスフォースを使い倒し、それを梃にしてトランスフォーメーションの動きを起こしてほしい」と篠原氏はまとめた。

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