IFRSを利用した経営改革!情報システム部門が果たすべき役割は?

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IFRSを利用した経営改革!情報システム部門が果たすべき役割は?

基幹系システム 2016/10/06

 前回の記事では、日本における最近のIFRS動向について確認し、IFRSがスタンダードになりつつある状況について解説した。今回は、IFRSが情報システムに与える影響について検討し、IFRS時代において情報システム部門が果たすべき役割を考察したい。

〜IFRS時代における情報システム部門の役割〜

INDEX

1.IFRSが情報システムに与える影響
2.情報システム部門の役割
3.IFRSを利用した経営改革

1.IFRSが情報システムに与える影響

■ 連結会計システムへの影響
 IFRS導入自体は会計基準の変更であり、企業の決算報告の内容に変化をもたらすものであるが、それに伴い、さまざまな業務プロセスや情報システムに影響を与えることとなる。特に、IFRS導入にあたって、どの程度システム改修が必要になり、また、いくらコストが掛かるのかは興味深いところであろう。

 まず、改修が必要なシステムとして真っ先に思い付くのが、連結会計システムである。これは、IFRSが連結決算に適用されることから当然のことであろう。IFRS導入あたり、よく議題に挙がる連結会計システムの改修ポイントは以下の通りある。

図1 連結会計システムの改修ポイント

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図1 連結会計システムの改修ポイント

■ 他のシステムへの影響

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 その他のシステムでは、固定資産システムや販売管理システム等が主な検討対象となるであろう。

 固定資産システムについては、連結会計システムと同様、複数会計基準データの管理が論点となる。すなわち、固定資産の減価償却方法や耐用年数について、日本基準では一般的に税法上の減価償却方法や耐用年数が採用されている(=テーブルが決まっており、それに当てはめる)が、IFRSでは資産の使用実態等に鑑みて、実態に即した減価償却方法や耐用年数を採用する(=テーブルはなく、実態に合わせて各企業が自身で決める)こととされているためである。

 販売管理システムについても同様で、日本基準とIFRSで売上の計上基準が異なるため、日本基準では売上として認められていても、IFRSでは期ズレしてしまうことが起こりうる。

 このように、基準間に相違がある論点に着目し、関連するシステムについては改修の要否の検討が必要となる。

■ システム改修は必須か?

 ところで、実際にIFRSを導入した企業の声はどうなっているのだろうか。2015年に金融庁が実施したIFRS任意適用企業への実態調査・ヒアリング(以下、「金融庁ヒアリング」という)において、改修の対象となったシステムとして以下が挙げられている(図2参照)。  

図2 IFRSの適用に際して導入又は更新を行ったシステムの内容別の回答数

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図2 IFRSの適用に際して導入又は更新を行ったシステムの内容別の回答数
『IFRS適用レポート資料編 IFRSの適用に際して導入又は更新を行ったシステムの内容別の回答数- 2015年4月15日(金融庁)』より抜粋

 このヒアリング結果の捉え方についてはそれぞれあるかもしれないが、回答の母集団は65社であり、複数のシステムを改修した企業の存在も踏まえると、システム改修を行わなかった企業も相当数存在することが分かる。IFRS導入とシステム改修は切り離せない課題ではあるが、いかにシステムへの影響を最小限に留めるか、または、システムを改修しなくても済むように関係各所と交渉するか、という視点も重要であることを示している。

2.情報システム部門の役割

■ IFRS導入目的に応じた対応を

 では、情報システム部門はどのようにIFRSプロジェクトに関わっていけばよいであろうか。先ほど、必ずしも全ての企業がシステム改修を行っているわけではない旨を述べたが、これはIFRSの導入目的によって異なってくるだろう。

 前回掲載した、IFRS導入目的に関する金融庁ヒアリングの結果を再掲する(図3参照)。

図3 IFRSの任意適用を決定した理由や想定メリットとして1位に順位付けした項目

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図3 IFRSの任意適用を決定した理由や想定メリットとして1位に順位付けした項目
『IFRS適用レポート本編 任意適用を決定した理由又は移行前に想定していた主なメリット- 2015年4月15日(金融庁)』より抜粋

■ 目的がIFRS決算の開示ならコスト・ベネフィット

 これらのうち、(2)比較可能性の向上や、(3)海外投資家への説明の容易さについては、既にIFRSを適用している競合他社との基準差異をなくすべく、IFRS導入の主目的を「IFRS決算の開示」としていることが多い。この場合、コスト・ベネフィットの観点から、業務への負荷・コストを最小限に留めてIFRS導入を行うケースが多い。従って、情報システム部門は、システム改修の要否についてメリハリをつけて判断していく必要がある。  

■ 目的がグローバル経営管理の強化なら共通基盤の構築

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 一方、(1)経営管理への寄与については、IFRSを1つの手段として、IFRS導入の主目的を「グローバル経営管理の強化」としていることが多い。これは、会計基準や決算期の統一により使用可能となる「世界共通のモノサシ」を使って、グローバルベースでの業績評価基準の統一など経営管理を高度化していくものである。

 そのために、その基盤である情報システムについても、グローバルベースの共通基盤を構築する必要がある。特に、グループ全体で同一の情報システムを使用していることはないであろうから、情報システム部門はプロジェクトの初期段階から積極的に関与し、グループ全体の関係部門と密に連携していく必要がある。

3.IFRSを利用した経営改革

■ グローバル経営管理に向けた準備を

 IFRSの導入目的は各企業それぞれでり、もちろん、そこに優劣はない。各企業が現在置かれている状況や将来のビジョンに鑑みて、各企業がそれぞれベストな意思決定を行っていけばよい。

 ただ私は、IFRSの導入目的として「経営管理への寄与」がトップであったことは必然と捉えている。また、中小企業も積極的に海外進出している昨今、この先さらに多くの企業がグローバル経営管理に頭を抱えることになるのではないだろうか。情報システム部門にはその準備をしっかりして欲しいと思っている。

■ 情報システム部門のグローバル化

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 その場合、情報システム部門にはどのような変化が求められるだろうか。

 例えばIFRSを契機にグローバル共通基盤を構築することとなった場合、特に親会社の情報システム部門はグループ各社のシステム環境の把握や、グループ全体の共通基盤構築に向けたリーダーシップが求められることとなる。また、海外子会社が対象に含まれていれば、コミュニケーション手段として英語や中国語も必要となるし、各国の法制度やビジネス慣習にも気を配らなくてはならないだろう。 

  一言で言えば、「情報システム部門のグローバル化」ということである。

■ 強い情シスへ

 IFRSを既に適用している企業からは、IFRS自体は「目的」ではなく「手段」である、という声がよく聞かれる。すなわち、IFRSはあくまでツールであり、それを経営に生かさなければもったいない、ということである。そのため、経営者はIFRS時代において情報システム部門が果たす役割に非常に期待しており、また、情報システム部門はこれまで以上に積極的な提案・情報発信を行うべきと考えている。 

 グローバル競争を勝ち抜いていくために、強い情報システム部門が求められているのである。

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キーマンズネットとは
株式会社ディーバ 連結会計事業部 マネージャー 公認会計士。多数の上場企業や上場準備企業の監査・コンサルティング業務においてプロジェクトマネジメントの経験を有し、また、会計士講師としての講師経験も持つ。特にIFRSや国際税務分野に精通しており、現在も多くのIFRSプロジェクトに参画、提案を行っている。

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