「Fintech」とクラウドサービスで企業会計はどう変わるのか?

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「Fintech」とクラウドサービスで企業会計はどう変わるのか?

基幹系システム 2016/08/05

 2016年7月13日〜15日、東京ビッグサイトで開催された「総務・人事・経理ワールド2016 会計・財務 EXPO」の特別講演(13日)では、「Fintechがもたらすクラウド会計の未来!」と題し、マネーフォワード代表取締役社長(CEO)辻庸介氏が登壇した。

金融とITの相性の良さを生かした新サービスが続々登場中

 「Fintech(フィンテック)」はITを駆使して金融領域の新サービスを提供することを指すキーワード。近年は金融領域のベンチャービジネスを指すことも多い。2012年に創業したマネーフォワードは、多くの銀行やクレジットカード、電子マネーに対応した個人向けオンライン家計簿サービスで急伸し、現在は企業ERPとして活用可能なクラウド会計ソリューションにも事業を拡大している。

 辻氏はスマホカード決済のSquare、P2P金融のLending Club、PFM(個人財務管理)のMintなどのFintechプレイヤーによる市場拡大動向を示した上、Fintechのキーワードとして次の5つを示した。

(1)クラウド化(IoT、IoE)
(2)スマートフォン
(3)Peer to Peer → シェアリングエコノミー
(4)AI(人工知能)
(5)政府の電子化推進

 中でも「業界を変えてきたのはスマートフォン」だと辻氏は言う。「消費者はスマートフォンによるB to Cの分かりやすいUXに慣れ、セキュリティの堅牢性を重視した従来サービスよりも、もっと柔軟で使いやすいサービスへと流れている」と分析し、将来の変化について次のように語った。「IoTによるヘルスケア情報などの膨大な情報がクラウドに集約され、それをAIが人間よりも迅速に正確な処理をする時代がやってきます。それを背景にシェアリングエコノミーが発達するでしょう。インターネットは例えば配車サービスのUberやAirbnbのように、利用者とサービス提供者のマッチングを低コスト化し、よりユーザーに利便性も経済性も高いサービスをもたらします。金融の世界でも個人間や機関投資家と企業間などのP2P金融が生まれています。マイナンバー制度や電子帳簿保存法など政府の電子化推進の流れも、シェアリングエコノミーを支えます」。

 これは確実に金融業界に変化を迫る。辻氏は「金融サービスは従来のタテ統合から、ヨコのレイヤーに広がる」とし、次の図を示した。「決済」「送金」「交換」「融資」「投資」「保険」のサービスは従来は1社がインフラから販売、サービスの各レイヤーを自社で運営してきたが、今後は各レイヤーが横に広がって細分化していく。その細分化されたレイヤーごとに新サービスが、多様なプレイヤーから提供されるようになる。「メディアの世界では、例えば新聞社は従来コンテンツ作成から配達までをカバーしてきましたが、今では各種のニュース配信サービスでコンテンツを読むことができます。これと同じことが金融でも起きていると考えると分かりやすいでしょう」(辻氏)。

Fintechの全体像

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Fintechの全体像

 さらに国内の代表的なFintech企業についても図示し、仮想通貨、クラウドファンディング、ロボアドバイザー(分散投資の最適ポートフォリオをAIを用いて低コストで作るなどのサービス)への広がりを強調し、「まだこれからサービスは増えていくところ」であり、「さまざまなユーザーとのインタフェースを通して便利なサービスが続々生まれてくる」と予想した。

国内の代表的なFintech企業

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国内の代表的なFintech企業

 こうしたFintechの発展はビジネスにどのようなインパクトを与えるだろう。辻氏は次のポイントを挙げた。

 ・中小企業金融のチャネルが増え、個人投資家や機関投資家が直接融資を行える。
 ・会計や経営の可視化により意思決定と行動がシームレスになりビジネススピードが向上する。
 ・ロボアドバイザーによる投資教育効果などで資産運用が適正化して成長投資が可能になる。
 ・キャッシュレス決済で経済が活性化する。
 ・ブロックチェーンにより決済・データ保存が根底から変わり、サービスコストが低下、金融業界が変わる。

 なお、政府の動きとしても産業競争力会議で成長戦略としてFintech推進が議論されており、電子帳簿保存法が2016年9月には改正され、スキャナー文書保存要件が緩和されるなど、Fintech拡大には追い風となっているとのことだ。

経理の世界にはどんな影響が?

 Fintechとの関連が強い経理の世界では具体的にどんな生産性向上が期待できるだろうか。辻氏は仕訳の際の原データは既に90%以上が自動取得可能になっているという。POSや電子マネー、インターネットバンキングとのAPI連携がそれを可能にしている。デジタル化されたデータはAIによる自動仕訳や、BIツールによる分析など、自動処理も容易だ。

仕訳データの処理

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仕訳データの処理

 さらに経費精算の各業務もデジタル化で効率化する。また入力手段には音声入力、レシート自動入力などの画像識別・入力、予測変換などの技術の向上が生産性向上につながっている。さらにマイナンバーや行政APIなどの電子政府関連のデジタル化も大いに省力化に寄与する。

 このようなFintechを支えるクラウドサービスは多数あり、その大半は無料で試用できる。辻氏はその中の1つである同社の「MFクラウド」サービスを例に引き、導入事例と効果を、導入企業のインタビュー動画も利用しながらいくつか紹介した。省力化・時短効果としては、オンライン業務が多い場合は会計業務の時間が5分の1に短縮した例、ワークスタイル変革効果としては、在宅業務や担当者が代わっても引き継ぎ作業が最小限で済む自動ルール処理などが紹介された。また経理以外のバックオフィス業務がそれぞれ別々のシステムで行われていると、業務間の連携に手間取り生産性が阻害されることを指摘、高い生産性のためには各種業務を統合可能なサービスが望ましいとした。

バックオフィスのクラウド化

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バックオフィスのクラウド化

 辻氏は最後に、「クラウド、IoT、P2P、AIは人がやらなくてもよい仕事をどんどん自動化していきます。それで生まれる時間は経営や営業などの”人でなければできない仕事”に利用することができます。そのような環境で、意思決定者に“今やるべきことは何か”を教えてくれるようなサービスをいつか提供したいと考えています」と述べ、講演を終えた。

                              (執筆者:土肥 正弘)

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