あの“ThinkPad開発の聖地”大和研究所で受け継がれる開発哲学

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あの“ThinkPad開発の聖地”大和研究所で受け継がれる開発哲学

スマートデバイス 2016/07/08

 レノボ・ジャパンは2016年6月30日、神奈川県横浜市にて同社の研究開発に対する取り組みを解説するイベント「大和TechTalk」を開催した。開催地は同社の「大和研究所」。みなとみらいにある同研究所は、言わずと知れた“ThinkPad開発の聖地”である。

レノボ・ジャパン 取締役副社長 内藤氏

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レノボ・ジャパン 取締役副社長 内藤氏
“ThinkPadの父”の異名を持つ内藤在正氏

“ThinkPadの父”が語る大和研究所とThinkPadの関係

 イベントが始まると、まず登場したのはレノボ・ジャパン取締役副社長である内藤在正氏。IBM時代から長く国産機の開発に関わってきた人物で、ThinkPadがIBM(現レノボ)のフラッグシップノートPCとして躍進するきっかけとなったキーマンだ。内藤氏は日本語を使える汎用機やワークステーションなどの開発を経て、IBMの世界市場向けPC「IBM PS/2」の開発を担当。その後“最初のThinkPad”である「ThinkPad 700Cの開発に携わった。無論、開発拠点は「大和研究所」だ。

 大和研究所は1985年に神奈川県大和市に設立され、主としてThinkPadの研究・開発が行われてきた。その後レノボやNECとの事業統合を経て、2010年に現在のみなとみらいに移設された。

レノボのPCSD組織

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レノボのPCSD組織
内藤氏はレノボのPCSD(PCとスマートデバイス)部門にて、PC全体のテクノロジーとイノベーションを担当する立場を担う

 内藤氏は「ThinkPad 700Cの登場からすでに約四半世紀が経過し、IBM時代を経験していないエンジニアも多くなった。しかしThinkPadを産み出す“理念”は今も継承されている」と述べた。なお現在、ThinkPadは大和研究所のほか、米沢事業所、中国・北京、アメリカ・モリスビルが開発拠点となっているが、その中でも「Japan Team」として大和研究所と米沢事業所がThinkPadおよびレノボブランドのPC開発に関わるテクノロジーを牽引しているという。

 内藤氏は「買収などがありながらもThinkPadシリーズの開発は続き、2014年にシリーズ累計1億台を出荷した。今後も“オフィスから離れたビジネスマンの重要なツール”という開発当初からの理念を受け継いでいく」と語った。

ThinkPad 25年の歩み

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ThinkPad 25年の歩み
初代「ThinkPad 700C」から約25年が経過し、現在は“第5世代”となっているThinkPad。レノボのフラッグシップPCとして君臨し続けている

ThinkPadの“理念”を継承する「木」、そして加わる「イノベーション」

 次いで登壇したのは大和研究所 ソリューション開発部 システムデザイン戦略エンジニア・山崎誠仁氏。約四半世紀に渡るThinkPad開発の根底に流れ続けてきたある“理念”について解説した。

 その理念とは「ThinkPad開発哲学の木」なるもの。大和研究所に所属するエンジニアそれぞれが個人で抱えてきた「哲学」を、現在ではグローバル化する開発エンジニア全員で共有するために具現化されたもの。ThinkPadにある「信頼される品質」「親しみやすさ」「先進性」といった“幹”を中心とし、「開発のベース」が“根”、そして「Goal」が“実”に模されている。

システムデザイン戦略エンジニア 山崎氏

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システムデザイン戦略エンジニア 山崎氏
レノボ・ジャパン 大和研究所 ソリューション開発部 システムデザイン戦略エンジニア 山崎誠仁氏
「ThinkPad 開発哲学の木」が生まれた経緯

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「ThinkPad 開発哲学の木」が生まれた経緯

「ThinkPad 開発哲学の木」の概要

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「ThinkPad 開発哲学の木」の概要

 山崎氏は「この“開発哲学の木”にある理念を、開発に関わるそれぞれのエンジニアが自分の担当する分野へ置き換えることが重要」と説明。大和研究所のみならず世界中のThinkPad開発に関わるエンジニアがこの「木」を念頭にして開発に取り組む姿こそが理想としている。そして、各エンジニアが「原点を振り返るための基準」としても利用していると語った。

 次いで登壇したのが大和研究所 STIC 先進技術開発アドバイザリーエンジニアの川北幸司氏だ。川北氏はレノボが取り組んで要る「WOW+」活動について解説した。

アドバイザリーエンジニア 川北氏

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アドバイザリーエンジニア 川北氏
レノボ・ジャパン 大和研究所 STIC 先進技術開発 アドバイザリーエンジニア 川北幸司氏

 「WOW+」とは、レノボから新たなイノベーションを創出するための活動の1つであり、社員のボトムアップを目的にしたもの。技術展示会のテーマや、新入社員の研修の課題としても取り入れられている。

 川北氏は「かつてPCは、CPUやメモリ、HDDの増設によって性能向上ができ、ユーザのペインポイント(不満点)を改善できた。クラウド時代の現在は便利なデバイスが身近になったため、PCは今までの枠を超え、より洗練された製品になる必要がある。機械のほうから歩み寄る、空気を読む、ユーザーを支える、そういった新しい機能が求められる」と語った。

イノベーションを創出するための取り組み

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イノベーションを創出するための取り組み

レノボにおける、イノベーションを創出するための取り組み。その1つに「WOW+」活動が含まれている。

 そういった新たなイノベーションを生むのがWOW+活動というわけだ。川北氏は「ユーザーに“ワオ!”と言ってもらえるような機能を実装するのがゴール」と説明した。実際に、活動の中から「インテリジェント・センシング・エンジン」「WRITEit」といった機能が実装されているという。

「WOW+」の実績

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「WOW+」の実績
実際に「WOW+」プロジェクトから創出された新機能。

チャレンジを続けるThinkPad、受け継がれる開発哲学

 最後に登壇したのは、大和研究所 STIC 先進技術開発 部長/ディレクターの互井秀行氏。ThinkPad最新機種における、“技術的チャレンジ”について熱く語ってくれた。

 レノボのPCのフラッグシップたるThinkPadシリーズの中でもフラッグシップである「ThinkPad X1」シリーズ。ThinkPad中で最も薄型軽量を誇るモデルで、2011年に登場した「ThinkPad X1」はノートPC界に大きな衝撃を与えるスペックだった。しかし、より薄さを追求した「ThinkPad X1 Carbon」が翌2012年に発売され、以降これをベースとした開発が続けられてきた。

先進システム開発 部長 互井氏

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先進システム開発 部長 互井氏
同 大和研究所 先進システム開発 部長/ディレクター 互井秀行氏

現在では「X1」ファミリーとして「ThinkPad X1 Carbon」を筆頭に、「ThinkPad X1 TABLET」「ThinkCentre X1」、そして「ThinkPad X1 Yoga」がラインナップされている。

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「X1」ファミリー。クラムシェル型のノートPC「ThinkPad X1 Carbon」を筆頭に、2in1タブレット「ThinkPad X1 TABLET」、デスクトップPCの「ThinkCentre X1」、そして2in1コンバーチブルノートPC「ThinkPad X1 Yoga」とユーザーニーズを広くカバーする。

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「ThinkPad X1」シリーズの系譜。2016年モデルで第5世代となる。世代を重ねるごとにどんどん薄く、軽くなっていることが分かる。

 このX1ファミリーの中でも、最新機種となるのが第5世代の「ThinkPad X1 Yoga」だ。

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薄型化を図るためにキーボード周りの設計が見直された。

互井氏は「更なる薄さと軽さを実現すべく、議論を重ねて部材を見直した」と言い、タブレットモードへトランスフォームしたときにキーボードが平坦になって持ち運びやすくなる「Lift'n'Lock」機構を採用したこと、薄型化のためにキーボード周辺や「トラックポイント」の設計を見直したこと、スピル(防滴)対策のためにメイン基板に穴を開けたこと、筐体を素材から見直して新素材「スーパーマグネシウム合金」を採用することで60gほどの軽量化に成功した話などなど、製品を進化させるために腐心したエピソードを語った。

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レアアースを含んだスーパーマグネシウムの採用で約60gの軽量化を実現したという。

 軽量・薄型化のための苦労以外にも、互井氏は「ヒンジを動作させたときに発生する“きしみ音”が問題になり、それを解消するために量産1ヵ月前から部材を0.1mm単位で見直した」という話を苦笑交じりに披露した。製品の完成度を上げるためにどれほどの苦労があったのだろうか、と思わざるを得ないエピソードだ。

 そして第5世代のThinkPad X1 Yogaでは、シリーズ初の「有機ELディスプレイ」を搭載したモデルがラインナップされる。通常液晶モデルから販売がやや遅れたもののこの夏に発売されることが発表され、直販価格は32万3000円〜(税別)の予定と互井氏は紹介した。有機ELは液晶ディスプレイに比べてコントラスト比が大きく視野角が広いというメリットもあるが、いくつかのデメリットもある。それらについても互井氏は「消費電力の高さを抑えたり焼き付き対策をしたりと、さまざまな工夫が凝らされている」と説明。更なる苦労と工夫を重ねて同製品は市場に送られるのだ。

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有機ELディスプレイモデルに搭載される焼き付き対策機能、消費電力抑制機能について。

 この最新モデルの開発秘話を耳にするだけでも、ThinkPadの開発にはエンジニアたちの多大なる工夫や努力が注がれているかがよく分かるというもの。今回開催されたイベントでは、そんな真摯なThinkPadの開発手法が25年にわたって培われ、多くのエンジニアに“哲学”として受け継がれてきたことがよくわかった。もはや「え?ThinkPadってIBMから発売されていたんですか?」なんてことを言い出す世代すら出てきている昨今ではあるが、「ThinkPad」という製品が発売されている限り、その開発哲学は永遠に語り継がれていくことは間違いないだろう。

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