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IT現場の道先案内人 Key Conductors

今こそ、緑を守るためのIT活用を

2016/06/07

 先日ついに迎えた梅雨を越えれば、1年で最も気持ちの良い季節がやってくる。今年の夏はどこに行こう、何をしよう、と仕事以外の期待を膨らませながら通勤する人も多いのではないだろうか。

 そのような折、COP21で採択された、2020年以降の地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」の署名式が4月22日にニューヨークの国連本部で行われた。175を超える国と地域の代表者が署名し、初日の式典での署名数は、国際協定史上最多となったという。国際的な環境意識の高まりがもたらした成果と言えるが、これからは実行面が問われる。この難問に世界で取り組んでいかなければならないのだ。そうした背景もあり、今回は日本のIT企業と温暖化ガス削減の関係について述べてみたい。

日本は世界第5位の温暖化ガス排出国

 まずは現状を把握するところから始めよう。世界のCO2排出量を表したグラフが図1だ。このグラフはニュースなど様々なところで目にするものなので、なじみの方は多いだろう。日本は中国、アメリカ、インド、ロシアに続き5番目の排出国だが、日本よりも排出量の多い国は総じて人口大国である。

図1: 世界の二酸化炭素排出量(2013年)

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図1: 世界の二酸化炭素排出量(2013年)
出典:EDMC/エネルギー・経済統計要覧2016年版 ( http://www.jccca.org/chart/chart03_01.html )

 よって、1人当たりの排出量を見た方が、国の影響度を比べる際にはフェアかもしれない。そこでもう1つ、同じく国が発表している1人当たりの排出量を見てみよう(図2)。こちらを見ると、日本は急成長する中国やインドよりもCO2排出量が多いことが分かる。同様に比較的人口が少なく経済活動(GDP)が高い国が、分母が小さいこともあって上位に上がってきている。

図2:主要国の二酸化炭素排出割合と1人当たりの排出量の比較(2013年)

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図2:主要国の二酸化炭素排出割合と1人当たりの排出量の比較(2013年)
出典:EDMC/エネルギー・経済統計要覧2016年版 ( http://www.jccca.org/chart/chart03_02.html )

 さて、このようなデータを見ていて筆者が課題を感じたのは、実は日本のCO2排出量の高さではない。次のグラフ(図3)は経済産業相が昨年発表したものだが、先進国のアメリカやイギリス、ドイツなどEU諸国は1990年と比較して1人当たりの排出量が減少傾向にあるが、日本は減るどころか増えているのだ。他に増えている国というと韓国、中国、インドといった1990年代以降に高度経済成長を実現した国であり、先進国の中で日本の排出量の増加は異例なのだ。

図3: 1人当たり温室効果ガス排出量の推移

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図3: 1人当たり温室効果ガス排出量の推移
出典:経済産業省発表 温室効果ガス排出量の現状等について
( http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004000/pdf/042_s05_00.pdf )

 日本の排出量の内訳を見てみると、製造業や運輸業については生産の効率化や燃費向上などで排出量は減っている。排出量を増やしているのは、それ以外の商業、サービス、家庭なのだ。これは火力発電の増加やオフィスの床面積の増加などが主な理由として挙げられている。電力に関しては原発のあり方を含めた様々な議論があるため、ここでは取り上げることを控えたいが、特にオフィスでのデスクワークが多い業種は排出量削減に向けて一層努力する必要があるのではないだろうか。

デスクワークにおける温暖化ガス削減

 ではどのようなところから着手できるか。デスクワークは人が主体であるため、人が使う機器などが使用する電力消費を除くと、他に貢献できそうなところはペーパーレス化だ。ただペーパーレス化は日本のオフィスにおいては「神話」と言われるほど、その現実と理想は大きくかけ離れている。1970年代に提唱されたOA(Office Automation)というコンセプトから40年以上たった今でも、相変わらず机の上に紙が山のように積まれている光景をよく目にする。

それでも紙は便利・・・?

 心理学の研究によると、「モノの物理的特性は人々の行動を規定する」という。例えば取手が平たいドアは押す、取手が握れるドアは引くという行動を人は無意識にとる。同様に、紙の薄い・軽い・曲げやすい・不透明・水や油を吸収するなどの物理的特性は、人が持ち運んだり、ペンで書いたりする行動を自然に誘起するため“使いやすい”のだそうだ。デジタル機器やサービスが紙を置き換えるには、そのような特性を持たなければ、心理的に難しく効率も上がらないという。

 ただ最近は持ち運びが楽で、タッチパネルで簡単に操作できる機器が増えている。タッチパネルは言葉を話せない幼児でも使い方を覚えるほどで、このような直感的に使えるデバイスやサービスが多く登場してきた今、心理的負担なく紙を置き換えられる仕事も増えているはずだ。

 クリエイティブな仕事で紙の質感を含めて感性に訴える資料などはともかく、日々のオペレーションで使用する契約書や取引文書などについて、紙にこだわる必要があるだろうか。

 世界では大阪市の面積に相当する200km2の森林が毎日伐採され、その1/3が紙用途だという事実を踏まえると、やはりペーパーレス化は本気で取り組まなければならないと強く感じる。筆者もプリントアウトは不可欠な時のみに限定しており、営業先でも紙の提案書は極力持たず、訪問企業に事前に伝えてプロジェクターやディスプレイをお借りしている。紙を使わない業務は、最初は多少慣れの問題があるかもしれないが、世界平均の4倍* (http://jpa.gr.jp/states/global-view/index.html)も紙を使う日本人は、1人ひとりが環境に配慮した削減努力が求められている。

ITの活用と業界の責任

 近年、スマートフォンやタブレットの普及が進み、単純な自社紹介資料や宴会の場所を印刷して持っていく必要性はだいぶ低くなった。政府もe-文書法、電子帳簿保存法などのデジタル取引文書の法律整備を進めており、契約や取引文書の電子化を促進する材料も整ってきた。プロジェクターやディスプレイも小型化し携帯性も向上した。名刺も電子化できる。デジタルにすることによる検索性、伝達性、省スペース性、共有性、劣化しないなど様々な利点を享受するための障壁は、今までにないレベルに下がっている。

 こうした状況で、ペーパーレス化を真っ先に取り組むべきは、筆者も属するIT業界やIT部門しかないと考える。某大手IT関連企業が公開している情報では、社員1人当たり4400枚程度の紙を1年間に使用しているというが、ITを活用して生産性の向上やコスト削減などを訴えるべき企業が紙の山の谷間で仕事をしているのは本末転倒だ。デジタルの担い手であるIT企業・IT部門が率先して社内のペーパーレス化を進め、それを世の中や社内に訴えていく取り組みをする必要があるだろう。更に言えばIT関連企業は、国内の企業が本気でペーパーレス化に取り組むための社会的な責任を背負っているのではないだろうか。

 緑が色鮮やかに景色を彩り始めたこの時期、今一度、環境とペーパーレスについて考え直してみてはいかがだろうか。

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ハイテク・半導体企業のグローバルサプライチェーン改革のコンサルティングやIT導入に携わり約20年。多国籍メンバー100名以上のプロジェクト責任者や大手企業のアカウントセールスなどを歴任。トレードシフトのビジョンに共感し日本法人立ち上げに参画。趣味は旅行とツーリング。ゼネラルマネジャー、MBA。

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