第3回 ITADと廃棄リスク 〜E-waste問題とバーゼル条約〜

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第3回 ITADと廃棄リスク 〜E-waste問題とバーゼル条約〜

エンドポイントセキュリティ 2016/04/06

 前回までは、セキュリティの観点から事例を通じてIT機器処分のリスクを紹介しましたが、今回は環境問題の側面からIT機器処分の課題を考えたいと思います。

「E-waste」とは?

 「E-waste」という言葉をご存じでしょうか?E-wasteは、Electronic wasteの略で、電子機器や電気機器の廃棄物の意味です。

 ウィキペディアによると、“電気・電子製品の廃棄物には、鉛・カドミウム・水銀などの有害物質を含むものが多く、近年その急増が環境問題として取り上げられ、特に発展途上国における悪化が問題視されている。日本の家電リサイクル法によって中古家電製品が途上国に輸出され、その結果としてE-waste問題に拍車をかけていることが指摘されている”とあります。

 もちろん、企業から排出されたIT機器もこのE-waste問題に深く影響を及ぼしておりますが、企業側の認識や課題としてE-waste問題が話題にあがる事は、ほとんどありません。

企業自治体などの処分PCはどこへ?

 皆さんは、排出した使用済パソコンの行き先を考えた事がありますでしょうか?排出機器の流通経路は、大きく分けると国内流通海外流通の2種類に分けられます。

 国内流通で適切に処理されると、(1)リユース(2)リサイクル(3)廃棄の3種類に区別されます。不適切な事例としては不法投棄などの問題もありますが、IT機器はマテリアルの価値も高い事から、事業者からの排出ではこの問題は少なくなっているように感じます。

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 海外流通としては、基本的には“リユース”だけになります。後述するように、廃棄物の輸出は国際条約で禁止されていますので、海外での廃棄は不適切な処分という事になります。リサイクルとしてのマテリアルの輸出も廃棄品との区別が不透明な事から、輸出に関してはかなりグレーな状況で、認められていない国がほとんどです。 
 
 これらを前提に、現在、国際的に問題になっているE-wasteと呼ばれる海外廃棄問題に関して、詳しく述べたいと思います。

バーゼル法とバーゼル条約

 バーゼル条約(※1)という有害廃棄物の輸出入を禁じる国際条約があります。もちろん、日本もこの条約に調印しており、それを受けて「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」という一般的には、バーゼル法と呼ばれる法律が定められております。つまり日本において、有害物質を含む電子機器に関しての輸出には規制がかかっています。 

 再利用できるリユース品の輸出に関しては、バーゼル法上の問題はありません(ただし、中国やベトナムなど輸入元の国で中古品の輸入に規制がかかっている事もありますので、注意は必要です)。

 問題となるのはリユースには適さないものが、中古品と偽って輸出され、輸出相手国、特に発展途上国において、その中古品から部品や金属等が回収されている実態があります。それらの機器に含有する有害物質が、人の健康及び生活環境に悪影響を及ぼしていることが強く懸念されているのです。

中古品の輸出判断基準

 そのようなリユース偽装が横行している為、平成25年9月に環境省から「使用済み電気・電子機器の輸出時における中古品判断基準について」(参考資料/PDF)という通達が出されました。

 こちらの内容としては、 [1]年式・外観、[2]正常作動性、[3]梱包・積載状態、[4]中古取引の事実関係、[5]中古市場の5項目によって構成されています。 バーゼル法に基づく輸出の基準を満たさずに輸出された場合、日本においてバーゼル法の違反となります。更に、バーゼル条約上の不法輸出として国際問題に発展する恐れもあります。

IT機器処分の一言では済まない現状

 企業にとって、使用済電子機器はあくまでも「不用品」の一言で終わるかもしれませんが、その排出されるIT機器の状態によって、バーゼル法・廃掃法(※2)など各種法令の規制が関わる事になります。廃掃法に関しては、一定の認識を持って対応されている企業がほとんどですが、IT機器排出の際に、バーゼル法に係る最終処分の状況まで配慮されている企業はほとんど無い状況です。

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(環境省資料:廃棄物等の不適正輸出対策強化に 関する課題について資料3-1より抜粋)

 次回は、日本から輸出されたE-wasteがどのように、途上国の環境に悪影響を与えているのかを“具体的な事例”を通じて紹介したいと思います。

 そちらの事例を知っていただいて、使用済IT機器を売却したら終わりなのか、廃棄したら終わりなのか、企業の社会的責任はどこまであるのか…という事を再考していただければ幸いです。

本文内の注釈について

※1
有害廃棄物の輸出時の許可制や事前通告制、不適正な輸出や処分行為が行われた場合の再輸入の義務などを規定した国際条約として定められています。我が国も1993年に同条約に加入し、その履行のための国内法としてバーゼル法を定めています。
経済産業省ホームページより)

※2
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(はいきぶつのしょりおよびせいそうにかんするほうりつ、昭和45年12月25日法律第137号)は、廃棄物の排出抑制と処理の適正化により、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的とした法律である。廃棄物処理法、廃掃法と略される。最終改正は平成20年5月2日法律第28号。
ウィキペディアより)

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キーマンズネットとは
株式会社パシフィックネット取締役。アセット・ビジネス・カンパニー長として数多くのリユースの現場に携わる。環境省使用済製品等のリユース促進事業研究会委員を務めるなど、社外での活動にも積極的に参加。渡航経験も豊富に持ち、海外のIT機器リユース事情に精通する。

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