第2回 派遣法改正でIT現場やエンジニアにどんな影響が!?

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第2回 派遣法改正でIT現場やエンジニアにどんな影響が!?

2016/04/08

IT業界における要員の確保

 前回は”未曾有のITエンジニア不足時代”を迎えている昨今の現状を紹介しました。

 今回はこのエンジニア不足時代における大きなトピックスとして、前回も少しだけ触れた「改正派遣法」についてお話ししたいと思います。

 労働者派遣法は2015年9月30日に改正されました。大きなポイントとしては3つ「専門26業務と自由化業務の区分廃止」「個人単位の派遣期間は最長3年」「事業所単位の派遣受け入れ期間は原則3年」があります。これはIT業界の現場に、今後良くも悪くも大きな影響を与えるでしょう。

 IT業界においては、大規模なシステム開発であればあるほど、作業者(=システムエンジニアやプログラマといった人材)を自社の社員だけで賄えず、足りない人材を派遣会社や当社のような会社に依頼し、要員の増員を進めます。派遣契約や請負契約を結んで人材を確保、体制を作り開発していく手法が一般的です。これは建築業界でもよく見られる下請けの構造と一緒です。

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 派遣法改正前までは、ITエンジニアの実施する業務は期間の制限が適用されない専門26業務に含まれていました。そのため長期で派遣契約、請負契約、準委任契約を結ぶこともでき、発注するベンダやSIerも、必要に応じて人材確保ができたわけです。特にユーザ企業側としては、優秀なITエンジニアは自社のプロジェクトの成功に大きな影響を与えるため、できるだけ長期間で確保したいという思いがあります。今後は更にITエンジニアが不足していくことが予測されているので、その傾向は顕著でしょう。

 しかし、このたびの派遣法改正によって、ユーザ企業側のITエンジニア確保に大きな影響が出ることは明白です。 当社はフリーランス(個人事業主)と呼ばれているITエンジニアをサポートしている企業であり、派遣契約は全体の数%ほどですが、それでも大きな問題と捉えています。

ITエンジニアにとっての派遣契約

 それでは、一方のITエンジニアの立場では、派遣法改正で何が変わるのでしょうか? 

 簡単に言えば、現在”派遣社員”という立場で開発に従事するエンジニアは、原則的に同じ仕事(派遣先の同一の組織単位)に3年以上就くことができない、より詳しく言うと派遣先の組織単位が違っても、業務内容が同じであればそこで働くことはできないということです。

 有期雇用契約であれば、同じ仕事で3年を経過すると、派遣元は別の派遣スタッフに変更しなければなりません。そしてこれまでの派遣スタッフには「雇用の安定措置」を取らなければならないとされています。まずは新たな派遣先の提供、または派遣先での直接雇用契約(契約社員でも可)、あるいは派遣元での無期雇用契約をするなどです。

 多くの登録型労働者派遣事業を行っている企業は、派遣スタッフと無期雇用契約することにリスクを感じるため、派遣先(ユーザ企業側)に、直接雇用の申し入れを行うことになります。派遣先(ユーザ企業側)も同様で、直接雇用することには様々なハードルがあります。直接雇用を希望する派遣スタッフ(ITエンジニア)には、とても良いことだと思いますが、これは派遣先で直接雇用契約が可能な場合や、派遣元で無期雇用契約をすることができる場合に限られ、できなければ契約終了となるわけです。

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 派遣スタッフにとって、3年経過後に直接雇用契約で採用されたり派遣元で無期雇用されたりして、すぐに他の仕事が見つかれば良いのですが、必ずしも自身の希望や条件にマッチした業務に就業できるとは限りません。多くのITエンジニアが職を失う可能性があります。派遣社員として仕事をしているITエンジニアは、最初の契約から3年後には派遣社員として働きたくても、働けない可能性があるのです。その派遣社員が持つスキルを活用できる他の組織単位があれば、派遣社員が職を失うようなことが避けられる可能性もありますが、ITエンジニアのスキルは特殊なので、他の組織単位での業務がマッチするかと言えば疑問です。 

 当社も数十名の派遣スタッフがいて、様々な企業で活躍されていますが、同様に派遣法改正による対応を迫られています。

特定労働者派遣の廃止

 今回の労働者派遣法改正では、派遣事業区分が廃止されました。今までは特定労働者派遣事業であれば、届け出をもって行うことができましたが、改正後は「特定」と「一般」の区分がなくなり、すべての労働者派遣事業は許可制に一本化されました。

 すべての労働者派遣事業が厚生労働大臣の許可を得なければなりません。許可を得るには以下の条件を満たしている必要があります。

基準資産額2,000万円×事業所数

現金・預金1,500万円×事業所数

基準資産額が負債総額の7分の1以上

派遣元責任者講習の受講義務

5年ごとの更新

 このように多くの条件を満たさなければならず、派遣事業から撤退する会社もあるでしょう。つまり、そこで働くITエンジニアは職を失う可能性があるわけです。

 IT業界で働くエンジニアの多くが、この旧特定労働者派遣事業を通じて働いているとも言われています。改正派遣法が施行された後、事業が即完全撤廃されるわけではなく、移行のための猶予期間が3年ありますが、この特定労働者派遣事業の許可制移行によって、現状の体制のままではエンジニア不足に一層の拍車がかかることでしょう。

ユーザ企業とITエンジニアが取るべき道は?

 以上述べてきた通り、この派遣法の改正もITエンジニア市場に影響を与えている要因であり、ユーザ企業側の要員確保は深刻さを増していくでしょう。また、エンジニアサイドにとっても先行きを考えた対処、振る舞いが求められる時期が到来していると言えるでしょう。

 次回は今後のエンジニアリソースはどのように確保したら良いのか、またITエンジニア自身がいま取り組むべき課題は何か、について述べていきたいと思います。

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キーマンズネットとは
東京都生まれ。1992年、首都圏コンピュータ技術者協同組合(現:株式会社PE-BANK)入社。2015年より同社代表取締役。フリーランスITエンジニアと企業をつなぐ開発業務コーディネート事業、および顧客企業のマイナンバーを含む個人情報管理ソリューション事業を展開している。

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