第1回 なぜ企業に「申請」「承認」ワークフローが必要なのか?

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第1回 なぜ企業に「申請」「承認」ワークフローが必要なのか?

基幹系システム 2016/03/15

 BCP(事業継続計画)や人材確保の観点から、在宅勤務など場所や時間に捉われない働き方に注目が集まっている。総務省もICT活用、地方創生などを掲げてテレワークの普及促進に取り組んでおり、新しいワークスタイルに寄せられる期待は大きい。今後、こういったワークプレイスのマルチ化は拡大していくと考えられるが、実際に企業が導入するには様々なハードルが残っている。

 その1つが企業に欠かせない「申請・承認ワークフロー」だ。「上司が不在だから承認がもらえない」「申請・承認のために会社に戻らなくてはいけない」など、ワークフローには場所の制約がつきものだ。どこかに集まって働くことを前提とした現在の申請・承認の仕組みのままではワークスタイルの変化に対応しきれなくなっているのだ。

 この連載では3回にわたり、企業のワークフローの現状がどうなっているのか、ワークスタイルが変わりゆく今どのような視点でワークフロー改革を行うべきなのかを考察していく。

 第1回の今回は「そもそもなぜ企業に“申請”や“承認”が必要なのか?」という原点に立ち返りながら、企業にワークフローが必要な理由を整理したうえで、手作業でのワークフローの負荷について解説する。

ワークフローの必要性

ワークフローに掛ける時間は、平均で月に17時間!

 申請・承認ワークフローは組織運営に欠かせない。旅費の精算、取引先に見積を提出する前の上司承認、休暇届など、あらゆる場面でワークフローが必要だ。1件あたりの申請時間は数分程度であっても、積み重なればそれなりに長い時間を取られる。

 当社が行った調査では、企業に勤める人は1ヵ月に平均11時間、見積りの作成などの営業活動に必要な申請業務に携わる人は1ヵ月に平均17時間もの時間を申請・承認業務に費やしているという結果が出ている。出典:株式会社グルージェント「申請・承認業務(ワークフロー)の実態調査」2016年1月

 1日の労働時間を8時間とすれば、1日〜丸2日間をワークフローのために使っていることになる。ワークフローが直接利益を生むわけではないのに、なぜこのように手間や時間を掛けて行う必要があるのだろうか。

もしも企業に「申請」や「承認」がなかったら?

 企業に所属する人は、それぞれ職務分担や役職が異なっている。各々がその責任と権限の範囲で業務上の判断や処理を行う。その最終的な結果が組織としての決定になる。ワークフローは、この一連の流れをスムーズに実現するためのコミュニケーションの仕組みである。

 もし企業に申請や承認がなかったら、コミュニケーションの混乱と責任分担の曖昧化が起きるだろう。組織としての統制が取れず、非効率になる。逐一チェックされないから事故や不祥事も起きやすい。

 例えば、経費の無駄使いが増える。あるいは、営業担当者が目先の売上を優先させて与信が不十分な会社と取引してしまう。審査する人がいなければ債権が回収不能になる危険が出てくる。購買部門でリベートや架空取引などの不正行為が発生する恐れもある。円滑かつ健全に組織を運営するためには、あらかじめ職務の分担や命令系統を明確にし、相互に監視できるようにルールや手順を定めて、それに則って業務を運用していく必要がある。その手段として、ワークフローは「ルールに則って手順が決められている」「決められた手順に従って実行される」「実行結果が記録として残り、必要に応じて追跡できる」ものでなくてはならない。たとえ手間が掛かってもおろそかにはできないのだ。

ワークフローの結果を記録に残す意味とは?

 ワークフローの結果は履歴として残さなければいけないことになっている。法律や社内規定で保存期間が定められ、必要に応じて確認したり、監査の資料として提出したりといったことが従来の主な用途であった。

 近年ではBPM(ビジネスプロセスマネジメント)の観点からもワークフローの履歴を活用したいというニーズが高まっている。例えば、帳票上の「申請日」が必ずしもその申請をした日とは限らない。実際の業務を「いつ」「誰が」行ったのかを可視化することで、業務プロセスを正確に分析し、PDCAサイクルをより効果的に適用するのだ。また、コンプライアンス遵守が叫ばれ、企業の不祥事に対する目は厳しくなっている。申請・承認を実際に行った日時や人物を詳細に追跡できるようにすることは、不正を未然に防ぎ、健全に業務運用することにもつながる。その意味からも、ワークフローの結果を記録することの重要性は増している。

手作業による申請・承認業務のデメリット

 さて、最近ではワークフローシステムを導入している企業も増えているが、これまで申請・承認業務は、申請者が紙を回覧し、承認者が順番に印鑑を押していく方法が一般的だった。先に挙げた調査では2016年現在でも50%近くが紙のワークフローを利用しているとの結果が出ている。ExcelやWordなどのファイルや、メールでのワークフローも、システム化されておらず手作業がベースとなる点では紙の帳票と変わらない。この方法もほぼ30%と、多くの企業で利用されている。(図1)

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出典:株式会社グルージェント「申請・承認業務(ワークフロー)の実態調査」2016年1月

 このような手作業でのワークフローには、以下の問題点がある。

(1)起票時のミス

書き間違い、必須項目の記入漏れ、印鑑の捺印忘れなどが代表的だ。つまらない書き損じをしたばかりに本筋ではないところで引っかかってしまうと時間が無駄になる。知らないうちにフォーマットが変わっていて、それに気づかずに古い書式を使ってしまうこともある。書式の管理にも気を配らなくてはいけない。

(2)回覧の手間

紙の帳票を使っている場合、忙しい業務の合間に帳票をわざわざ届けに行かなくてはいけない。違う拠点にいる場合は社内便や郵便で送ることになり、届くまでのタイムラグがもったいない。メールの場合も宛先を毎回確認し、正しく設定するのは面倒だ。「いつの間にか帳票を紛失してしまった」「ほかのメールもたくさんあるから紛れて見落としていた」なども回覧の途中で起こりがちなトラブルだ。

(3)進捗管理の難しさ

自分が申請した書類がどこまで承認されたのか分からないし、もし忘れて放置されていても気づくことができない。問題なく承認されると思っていたものが期日までに完了せず、取引先にまで迷惑を掛けてしまうこともある。承認する側も、いつどのようなタスクが発生するか分からないので、計画的に進めることが難しい。

(4)保管の煩雑さ

帳票の種類によって、鍵の掛かるキャビネットに保管しなくてはいけなかったり保管期間が異なっていたりと、機密度や重要性が異なっている。適切に分類して間違いなくファイリングしなくてはいけない。そもそも手狭なオフィスでは保管場所を確保することにも苦労がある。コストも無視できない。

(5)活用性の低さ

紙やファイルでの保管は検索性が低い。監査の準備が大変な上、過去の事例も確認しづらい。正確な処理日付の記録も難しいので業務分析や不正防止への応用がしにくい。蓄積されたデータは資産であるがそれらを活用することができない。

 上記に示したように、手作業でのワークフローは労力が掛かる割には活用しづらい。特に営業申請や稟議申請など、ビジネスを推進するのに不可欠な申請・承認業務を手作業で行っている人は、システムを利用している人に比べて、ワークフローに課題や不満を感じている割合が高い。

 ワークフローのスピードや効率は、企業の競争力や生産性に直結する。このような重要度の高い申請・承認業務をまだ手作業で行っている企業はワークフローシステムを導入し、業務の効率化や経営改革を図ることを検討すべきであろう。ただし、システムならどれでも良いわけではなく、自社に合った管理機能の有無や操作性などを十分に考慮して選定する必要がある。次回以降ではどのようなワークフローシステムを選択するべきかにも触れていく。

 第1回目の今回は、ワークフローの必要性と手作業でのワークフローのデメリットについて整理した。次回はワークフローシステムの現状と課題について見ていきたい。

 なお、この記事は当社で実施したワークフロー実態調査の結果を基に作成している。調査の内容はこちらで確認いただけるので、ご興味のある方は是非ご覧下さい。

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株式会社グルージェント ビジネス開発部 統括マネージャー。Google AppsやOffice 365のアドオンサービスの展開におけるセールス&マーケティングをパートナー企業とどのように展開するかを担当。クラウドの導入によるワークスタイルの変革、テレワークの実現をすべくソリューション展開にクラウドの普及に従事。

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