第4回 交渉を“実践”する時に大切にすべきこと

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IT現場の道先案内人 Key Conductors

第4回 交渉を“実践”する時に大切にすべきこと

2016/03/28

交渉における最も重要なスキルは「冷静でいること」

 前回、交渉に必要な3つのスキルをご紹介しましたが、実は交渉における最も重要なスキルは「冷静でいること」です。交渉全般を通して、基本となる姿勢と言ってもいいでしょう。冷静でいるからこそ、3つのスキルも活かせるのです。

 米国第3代大統領、トーマス・ジェファーソンの言葉に「腹が立ったら“10”数えよ、それでもだめなら“100”数えよ」というものがあります。交渉過程のさまざまな場面でこれを思い出して下さい。関連した交渉技術として「“間”の使い方」を挙げておきます。交渉の現場において、ちょっとしたブレイクを設けることにより、冷静さを保ち続けることができます。コーヒーブレイクでもトイレ休憩でも何でも良いのです。

交渉には心理と論理、両方のバランスが必要

 人が最終的に決定するのは感情によるとも言われています。自分より歳が若い、役職が低い、あの人には負けたくない…などなど、良くないと分かっていても感情が先立ってしまうことがありますよね?

 交渉相手も自分も人間ですから、当然、感情を持っています。しかし、それが前面に出すぎると「立場」で考えるようになり、真の「利害」が分からなくなってしまいます。

 ですから、自分では気づかないうちに相手の心証を害し、相手が感情的になってしまう状態は絶対に避けなければなりません。一度決定的に心証を害するとどんなに良い提案をしても「どうせ、この人の提案だから信じられない!」となりかねないのです。

 また、自分の意見が正しいと思い込んでしまうと、相手の意見は間違っていると決めつけてしまう。そんな経験もありませんか?

 人の考えはさまざまであることを受容し、その上で文化の違い、地域、国、宗教など、相手の状況も理解することができれば交渉が円滑に進む可能性は高くなります。

「準備5分」でビジネス交渉は劇的に変わる!

 交渉学において、交渉成功への近道はとにかく事前準備」であると説明されます。ハーバード大学での交渉学研究の第一人者、ロジャー・フィッシャー教授に「交渉で最も大切なことは何か」と学生が尋ねました。それに対しての回答は3つ。

「備えなさい」、「そして備えなさい」、「更に備えなさい」

と答えられたそうです。このように交渉の8割は、準備で決まると言われています。

 では十分に時間をかけて「ミッション」「ゾーパ」「バトナ」を準備し、交渉シナリオをしっかり作って臨めば、交渉で達成したいことが必ず叶うのかと言えば、もちろんそうとは限りません。交渉相手が期待した反応をしないこともありますし、交渉相手から予想外の条件を提示されて戸惑うこともあります。しかし事前準備をしていなければ、すべてが現場での対応となり質の高い交渉は望めません。

 すべての交渉で十分な時間をかけて事前準備ができるわけではないと思いますが、たとえ短時間であっても交渉の準備(事前確認)をすべきです。交渉相手が突然やってくる場合もあります。そんなときでも、不意打ちによって弱点をさらけ出すリスクを少しでも低下させるフレームワークのミッション(=この交渉は何のためのものか)を認識しておいて下さい。たった5分でも、準備をすればビジネス交渉は劇的に変わります!

交渉学は現代に不可欠なビジネススキル

 グローバル社会において「交渉学」は日本の強みを発揮するために不可欠なビジネススキルであるとも言われています。是非、皆さんのビジネススキルの1つとして身につけていただきたいと思います。

 ちなみに、私が講師を務める交渉学の研修プログラムでは、受講者から「どのような交渉になったら成功なのか」と訊かれる場面が多くあります。受講者には、同じ時間、同じケースを使用して実践形式で模擬交渉をしてもらいますが、まったく同じ交渉になることはありません。交渉を行う相手によって、交渉内容や進め方が異なってくるからです。これこそが正しい交渉であるという解答はないのです。

 あえて言うならば、「準備を重ねて、じっくり考えて作った交渉シナリオに近いかたちで交渉が進み、満足の得られたものは上手くいった交渉と言えるでしょう」とお答えしています。

 ここまでお読みいただいたことで、皆さんの“交渉”についてのイメージも変わり、「交渉学」に興味を持っていただけた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 最後に右図「交渉の前にもう一度確認したい5つの心得」を皆さんに贈ります。

 繰り返しますが、交渉は学べば誰でもできるようになります。さあ、“本当の交渉”を学んでみませんか?

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情報システム部門の責任者として、社内外向けに多数の業務システム開発を担当。開発全体のマネジメント、及び顧客やハードメーカー、協力会社との交渉を多数実施。現在では、その経験を活かし、交渉学をはじめプロジェクトマネジメント、情報セキュリティなど社内外向け講師を担当。唯一の趣味は、小さな居酒屋でまったり過ごすこと。

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