第2回 3つのフレームワークで実践!交渉学で変わる仕事の進め方

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第2回 3つのフレームワークで実践!交渉学で変わる仕事の進め方

2016/03/14

成功する交渉には共通パターンがある 〜ハーバード大学での交渉学研究〜

 前回は、交渉に関する誤解や交渉の本質である「交渉学」を学ぶことの重要性について説明しましたが、今回は米国ハーバード大学での交渉学研究について紹介したいと思います。

 ハーバード大学において、実際にあった数多くの交渉事を分析した結果、成功する交渉には共通のパターンがあることがわかってきました。それを基にして導かれたのが、ミッション/ゾーパ/バトナという3つのフレームワークです。

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「交渉で何を実現したいのか」を決める 〜「ミッション」〜

 第一段階は、この交渉で何を実現したいのかを設定します。これを「ミッション」と呼びます。

 例えば、新しい顧客に新製品を買ってもらう交渉の場合を考えてみましょう。なぜ、この顧客に買ってもらいたいのでしょうか。買ってもらえるならば、どの顧客でも良いのでしょうか。顧客にはあなたの会社の新製品を買うことでどのような価値があるのでしょうか。そして、それはあなたの会社にとっても価値があるのでしょうか。

 ここでのミッションは「顧客が新製品を購入して使ってくれることで、顧客に○○の価値を出し、そのことであなたの会社にも○○の価値を出す」という設定になります。ミッションは、交渉の軸になるものです。お互いのミッションを共有できない相手との交渉に合意しても、いつかは破綻することになります。交渉前には中長期的な視点で「この交渉で何を実現したいのか」を徹底して考えて下さい。

「最高と最低」、目標には幅を持たせる 〜「ゾーパ」〜

 次に、ミッションを具体化するためには数値などの条件を入れた具体的な目標が必要となります。ここで重要なのは、右図のように最高と最低の2つの目標を設定し、目標に幅を持たせることです。これを「ゾーパ(Zone of Possible Agreement)」と呼びます。

 製品を売る際にも幅のある交渉条件を設定し、高めの条件や「ここを落としどころに」といった「点」で交渉を行うのではなく、最高目標と最低目標の間の「幅」で行うのです。

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合意できない場合のオプションを決める 〜「バトナ」〜

 最後に、ゾーパの中で最低の条件を下回ったときの選択肢を設定します。これを「バトナ(Best Alternative to a Negotiated Agreement)」と呼びます。

 合意は交渉の目標ではなく、あくまでも目標達成の手段であり、交渉の軸であるミッションを達成できない合意には意味がありません。しかし、合意できない場合はどうしたら良いでしょうか。交渉シナリオを準備する段階でオプションを考えて設定しておく必要があります。

 バトナとは、このような場合に備えたバックアッププランであり、最初からバトナを準備しておくことは、リスクマネジメントの考え方と同じです。最低目標を下回ったときに慌てて考えるのではなく、あらかじめ別のオプションを準備しておくのです。例えば部品調達の場合、現在交渉中の調達先とは別の調達先を事前に調査することなどがこれに該当します。

 受講者から、交渉の場で相手のプレッシャーに負けない方法をよく聞かれますが、私は迷わず「バトナを準備して下さい。できれば3つ以上です」と答えます。バトナを準備することで心に余裕ができ、不利な交渉結果にならないで済むのです。ハーバード大学の交渉学研究において、バトナは最大の発見と言われています。バトナのない交渉は、出たとこ勝負で非常に危険であることを意識して下さい。

「交渉力」をアップさせるトレーニング方法とは?

 以上のようなフレームワークを理解した上で、どうすれば交渉の成功率を向上させる能力が身に付くのでしょうか。

 私が交渉学を教えてきた中で、交渉が苦手だと言っていた受講者が目を見張るほど交渉力をアップさせた例をたくさん見てきました。交渉力は生まれつきの才能ではなく、トレーニングにより習得できる「技術」なのです。

 それでは、どのようなトレーニングが効果的かと言えば、とにかく実践形式で行う模擬交渉が一番効果的です。「エドガー・デールの法則」にあるように、「読んだだけ」のことが2週間後に記憶に残っているのは、わずか10%程度と言われていますが、「言いながら実際にやってみる」ことで実に90%が記憶に残ると言われています。ですから、交渉学を学ぶ際にも座学だけでなく、自分が実際に交渉をやってみる模擬交渉が含まれたプログラムを選んで下さい。

 次回は、交渉を実践する上で必要となるスキルについてご説明します。

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情報システム部門の責任者として、社内外向けに多数の業務システム開発を担当。開発全体のマネジメント、及び顧客やハードメーカー、協力会社との交渉を多数実施。現在では、その経験を活かし、交渉学をはじめプロジェクトマネジメント、情報セキュリティなど社内外向け講師を担当。唯一の趣味は、小さな居酒屋でまったり過ごすこと。

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