第1回 なぜ失敗するの?プロジェクト“5つの要素”を考える

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第1回 なぜ失敗するの?プロジェクト“5つの要素”を考える

情報共有システム・コミュニケーションツール 2016/02/22

プロジェクトの「35%」は失敗する!?

 IPA ソフトウェア開発データ白書(2014ー2015)によると、ITプロジェクトの成功率が65%という結果があります。ここで言う「成功」の定義は、「品質・予算・納期(QCD)の3要素を計画どおり遂行できた」ということです。65%の成功率を高いと見るか、低いと見るかは難しいところですが…私は35%ものプロジェクトが失敗してしまっている点に注目しています。

 近年のプロジェクトは、短納期化・要件の複雑化・データ量の増加・利用者の増加など、難易度が高くなってきています。プロジェクトをしっかりマネジメントして、失敗しないように運営する必要性がますます高まってきていると言えます。
 ここで少し私の紹介をさせていただきますが、私は、21年間SEを担当しました。その後、プロジェクトマネジメントの講師を8年間担当しています。近年、講座を受講いただく方も増えており、プロジェクトマネジメントへの関心がいっそう高まってきていると感じています。また、プロジェクトマネジメントを組織的に導入し、プロジェクトの品質向上に取り組んでいる企業も増えてきました。

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引用:IPA「ソフトウェア開発データ白書(2014-2015)」図4-14-5:プロジェクト成否の自己評価

 何事もそうですが、まずは基礎をしっかり押さえた上で進めていくことが大切です。今回は、プロジェクトを成功に近づけることができるプロジェクトマネジメントについて、基礎及び勘所を学んでいきたいと思います。皆さんにとっては「当たり前」と感じる部分が多いかもしれませんが、“おさらい”の意味も込めて再度ご確認いただければと思います。

プロジェクトとは?

 それではまず、プロジェクトとはどういうものなのかを見ていきましょう。

 プロジェクトには、共通した定義があります。プロジェクトマネジメントの諸理論の間で若干の差はありますが、大きくは同じです。ここでは、日本プロジェクトマネジメント協会のP2Mのプロジェクトの定義をもとに、プロジェクトとはどのようなものなのか、5つのポイントにまとめてみました。

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引用:日本プロジェクトマネジメント協会:「改訂3版 P2Mプログラム&プロジェクトマネジメント標準ガイドブック」
図表3-1-1:プロジェクトの基本属性

ポイント1:「誰に」「どのような価値」を提供するの?

 プロジェクトは、何かの問題や課題の解決のために実施するものです。

 例えばICTを導入し業務を効率化するプロジェクトは、現状業務の課題を解決するために実施されます。「プロジェクトで新しい価値を創造する」とも言えますね。「プロジェクトは価値創造事業」と言われます。プロジェクトの初期に、「誰に」「どのような価値」を提供するのかを明確にしておくことが大切です。

ポイント2:「制約条件」〜理想どおりにならないことがある〜

 次に、プロジェクトには必ず「制約条件」があるということです。「制約条件」とは、「理想的にはこのようにしたいんだけど、そうならない」ということです。

 例えば、こんなこと、ありませんか?

「このプロジェクトは、10ヵ月の期間があればやり遂げる自信はあるんだけど、お客様から8ヵ月で実施したいと言われている」

 これは、時間の制約がかかっている状況です。

「このプロジェクトは、1千万円の予算があればやり遂げる自信はあるんだけど、お客様から8百万円で実施したいと言われている」

 これは、コストの制約がかかっている状況ですね。

 「このプロジェクトは、職場のエースA君に入ってもらいたいんだけど、A君はその時期、他のプロジェクトに携わっているため引き受けてもらえない」

 これは、リソースの制約がかかっている状況ですね。

 これらは一例で、技術的な制約とか、契約上の制約など、他にもいろんな制約があります。プロジェクトは、理想どおりにならないことを背負いながら進めなければいけないものなのです。

ポイント3: 「個別性」〜世界に一つだけのプロジェクト〜

 「このプロジェクトは世界で1つしかない」…これをプロジェクトの個別性と言います。

 似たようなプロジェクトはたくさんあっても、その時期に、そのお客様に、このメンバーで実施するプロジェクトは、世界に1つしかないという意味です。個別性を持つということは、未経験の要素が入り込むため、課題が発生しやすく、その解決には適応、応用、創造などの知恵や工夫が必要になってきます。

ポイント4:「有期性」〜「始まり」と「終わり」〜

 次に、プロジェクトには明確な「始まり」と「終わり」があるということです。

 プロジェクトの「始まり」では、新たにプロジェクトチームを編成して、定められた期限までに、計画した作業を行い、当初予定した価値を生み出し、プロジェクトオーナーに引渡しを行わないといけません。プロジェクトが「終わり」の時点では、プロジェクトチームを解散します。ここでも、注意点があります。製品やサービスが完成しても、引き渡し条件や内容が不明確で、予定していた「終わり」の時点で終了できないという場合も起こりえます。

 どこが「終わり」なのか、どのようにしたら「終わり」になるのかを、プロジェクト開始時に明確にしておく必要があります。

ポイント5:「不確実性」を克服する〜それが大事〜

 これまで見てきたように、プロジェクトというものは、世界に1つしかないものを(個別性)、決められた期間の中で(有期性)、理想どおりにならないことを背負いながら(制約条件)、 価値創造しなければならないものです。

 
結構、厳しいですね。このようなものであるからこそ、プロジェクトには「不確実性」が必ず存在します。「不確実性」とは「リスク」と置き換えて考えていただくと理解しやすいのではないでしょうか。プロジェクトを進める上で、リスクについて考え、事前に対策を施し、「不確実性」を克服するように進めることが、プロジェクトを成功に近づけるポイントになります。

 プロジェクトの定義を考えることによって、プロジェクトとはどのようなものなのかを見てきました。「不確実性」=リスクにしっかり対応しなければいけないですね。そこで、力を発揮するものが、プロジェクトマネジメントです。

 次回は、その「プロジェクトマネジメント」についておさらいしていきましょう。

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キーマンズネットとは
松下電器産業(現パナソニック)に入社後、SEとしてICTシステム構築のプロジェクトを多数担当。2008年 教育部門に転身、現在に至る。PMを中心とした企業向け教育、P2M試験対策講座の講師を担当。50歳でマラソンを始めスローランニングを楽しんでいる。PMS、PMP、ITIL foundation、情報セキュアド、阪神タイガース検定など資格を保有。

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