SDNと日本のインターネット基盤の未来とは

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SDNと日本のインターネット基盤の未来とは

仮想化 2016/01/28

 2016年1月14日、15日の2日間に渡り、SDN(Software Defined Networking)やNFV(Network Functions Virtualization)といった技術にフォーカスを当てたカンファレンス「SDN Japan 2016」が開催された。これまでにない柔軟なネットワーク制御を実現するとして注目を集めるSDN/NFV。O3プロジェクトのように日本発のソリューションが登場したほか、クラウド普及と相まって、地に足の付いた現実的なソリューションが登場している。その一部を紹介したセッションの模様を紹介しよう。

ネットワークサービスに関わる人もソフトウェアに関する「たしなみ」を

 SDN Japanの冒頭、インターネットマルチフィードの外山勝保氏が「SDNと日本のインターネット基盤の未来」と題して基調講演を行った。

 インターネットを当たり前のように利用できるようになったのは、せいぜいこの10〜15年のことだ。現在では、光回線を用いたブロードバンド接続は約3700万世帯に普及し、市場はほぼ飽和に近付いている。


 市場が成熟し、安価な常時接続が可能となったのは、ユーザにとってはありがたいことだ。一方で通信事業者はやや苦しい立場に置かれている。「ユーザを増やして収入を増やすのは難しい。一方で、動画サービスの利用者増加やHD化にともなう容量の増大といった要因により、トラフィックの増加はますます続いている。だが、収入がない中で設備投資を行い、帯域を増やすのは困難だ」と外山氏は述べる。


 こうした変化を踏まえ、インターネットサービスプロバイダ(ISP)の事業形態も多様化しつつあり、「自社のネットワーク基盤を、どこまで自分で持つか」が問われている。中には、ローミングという形態を採用して大規模なプロバイダに「間借り」し、コスト削減と付加価値サービスの提供に注力する事業者も増えている。


 その基盤にあるのは、アクセス網(=光ファイバ網。いわゆる「フレッツ網」)だ。これを1つの広大な閉域網と見なし、その上でトンネル技術を活用して仮想アクセス網を作ることによって、ISPごとに様々な足回りが構築されている。これも一種の「仮想アクセスネットワーク」と表現できるだろう。


 外山氏は、このアーキテクチャをSDNを用いてもっと進化させることにより、回線を集約してISPのコストを下げたり、機能やサービスの追加を簡単かつ迅速に実現できる可能性があるとした。

SDNの活用で一歩進んだ仮想ネットワークを

 外山氏は「ここから先は個人としての期待になるが」と前置きし、「ハイパーバイザーによってホストOSの上に様々なゲストOSを搭載できるようになったのと同じように、ホストネットワーク上に、ISPやサービス事業者ごとに様々なゲストネットワークを載せる形ができればいいのではないか」という将来像を紹介した。

 同氏が先にも説明した通り、フレッツ網は巨大な閉域IPネットワークととらえることができる。そこにPPPoEやLT2Pといったトンネル技術を用いて各ISPそれぞれに独立した足回りを構築しているが、それでもまだ、各社のネットワークが混在してしまい、運用が自社だけで完結しないという課題がある。

 外山氏が期待するのは、もう一歩進んだ仮想ネットワークだ。「各ISPが自前で物理ネットワークを構築したのと同じように扱える仮想ネットワークを実現できれば、付加価値の追加などが容易になるだろう」(同氏)。そこではISPごとの仮想ネットワーク(=面)が、個別のパスやフローによって構成される。更に、各面では仮想ルータが動作し、それぞれ最適なルーティングを行う、というイメージだ。そんな仮想ネットワークを設計し、コントロールする役割は「やはりSDN」だと外山氏は述べた。

基調講演を行う外山 勝保氏

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基調講演を行う外山 勝保氏

 このようなネットワークが実現できれば、「機能面での付加価値も実現できるだろう。コンテンツ配信サーバやキャッシュ、セキュリティといった様々な機能をまとめておき、必要に応じて機能を切り出すようなこともできると期待している」(同氏)

 最終的には固定回線ネットワークにとどまらず、MVNOや公衆無線ネットワークも含めた様々なサービスやアクセスネットワークをまとめ、各ISP独自の付加価値を加えたサービスが可能になる。例えばクラウドサービスを提供しているならば、そのクラウドとシームレスかつセキュアに接続することをISPの「ウリ」にすることも考えられる。

 外山氏は「将来、IoTが広がっていけば、必要な帯域や使い方は各ISPやサービス事業者ごとに更に多様化していく。『たくさん帯域が必要』『そんなにいらないから安くして』といった様々なニーズに合わせることができるだろう。家庭用のCPEをうまく活用することで、一括したネットワーク管理もできるようになるのではないか」と述べた。

ソフトウェア習熟度が足りない?

 ただ、こうした次世代インターネット基盤が現実になるには、いくつかの課題がある。1つは規模の問題だ。「単純なアクセス集約やNFVによる付加価値機能は現実性が高いが、仮想ネットワークや仮想ルータを実現するには、コンピューティングパワーの関係で時間がかかるかもしれない。それを低コストで提供できるかという問題もある」(外山氏)。

 加えて同氏は、通信事業者ならではの観点として、顧客管理や課金、サービスオーダーといったバックヤードの部分も含めてサービスやインフラを考えていく必要があるとした。

 更に「それを実現するにはサービス開発担当者や運用者のソフトウェア習熟度がちょっと足りないかもしれない」という。

 例えば、サービスオーダーのフォーマット1つとっても、形式が固定化され、オプション追加が容易に行えない一方で、工事情報や障害情報の共有は、構造化されていない非定型のメールでやり取りされている。この部分を効率化し、同氏の言うバックヤードも含めた講義のSDNの中で処理しやすい形にしていく必要があるという。インターネットや様々なサービスを提供するインフラにソフトウェアが組み込まれていく中で、「サービスを提供する人全体が、ソフトウェアに関する『たしなみ』を身につけていく必要があるのではないか」(同氏)

 外山氏は、インターネットエクスチェンジという通信事業を提供している会社ならではの視点も付け加えた。

「SDNが進化すると、AS間の相互接続の形態も変わってくるだろう。現在の宛先ベースの経路制御ではなく、ポリシーに基づいてAS間の制御を行えるようになるかもしれない。さらには、ISP間のトラフィックに基づいて、費用の精算も実現できるかもしれない」(同氏)

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