3200超のiPhone導入で医療現場が変わる〜慈恵医大の挑戦〜(後編)

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3200超のiPhone導入で医療現場が変わる〜慈恵医大の挑戦〜(後編)

スマートデバイス 2016/01/29

 3200台を超えるiPhoneが導入された慈恵医大のICTプロジェクト。前編では医師間での情報共有などを中心に展開事例を紹介したが、後編ではナースセンターでの導入事例を紹介する。

ポケベルからスマホに変わってナースコール対応の品質が向上

 看護師は絶えず動き回っている。ナースセンターを母艦に、ナースコールで呼ばれれば病室に駆けつけ、救急措置が必要な場合は医療機器を探しに走る。そんな看護師にとって、病棟のどこにいても呼出しに対して確実に応えられることは重要だ。その手段としてこれまで活躍していたのが、ポケベルだ。

 病室のベッドには2種類のナースコール用のボタンが設置されている。1つは一般的な用途、もう1つは緊急用だ。このボタンが押されるとナースステーションに通知が行き、同時に看護師が携帯しているポケベルが鳴った。

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ベッドには、一般的なナースコール(左の白いボタン)のほかに、緊急コール(右のオレンジ色のボタン)がある

 しかし、ナースステーションと病室間では会話できるものの、ポケベルでは患者と直接会話できない。看護師は病室に辿り着くまで詳しい状況は分からず、「患者にとってもどのくらいで看護師が来てくれるのか分からず、不安も大きかったと思われる」と、同大看護部、呼吸器内科・耳鼻咽頭科病棟師長の荒木むつみ氏はもどかしさを明かす。

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東京慈恵会医科大学附属病院 看護部
呼吸器内科・耳鼻咽頭科 病棟師長 荒木むつみ氏

 それが今回、ポケベルからスマートフォンに変わったことで、スマートフォンの画面に病室番号や患者名含めて表示されるほか、患者と看護師とが直接会話できるようになった。「対応までの待ち時間の感じ方は大きく変わったと思う」(荒木氏)

  PHS時代は各部署に4台のみ配布されていたが、スマートフォンになってからは10台ほどが配布された。スマートフォンには番号が割り振られており、最初の3台は担当主任が携帯し、外部からの通話も受けられるように設定。残りはナースコール専用に割り当てているという。
 「現在はナースコールの受信機としてスマートフォンを活用しているが、今後はスタッフ間のコミュニケーションツールとして機能の拡充などを図っていきたい」(慈恵医大・先端医療情報技術研究講座・研究員・畑中洋亮氏)

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ナースコールシステムと連携するナースコール用のiPhone。着信履歴にはコールした病室名などの情報が表示されている

看護師と作り上げるナースコールシステム

 母艦となるナースステーションには、アイホンのナースコールシステム「Vi-nurse」(ビーナース)が導入された。Vi-nurseは、24型液晶画面の壁掛け型タッチパネルの電子ナースボード(親機)とスマートフォン(子機)とを連携するシステムだ。ナースコールをした患者の詳細情報、コール履歴、対応状況などが一目で分かる。「同姓同名の医療事故を防ぐために、重複する苗字などには違いが分かるよう下線を入れるなど、現場のニーズに応える工夫が様々施されている」(アイホン担当者)  

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ナースコールシステム「Vi-nurse」。iOS対応は今回が初めて

 ナースボードが従来のホワイトボードから大きく変わったことで、各部門では導入する1週間前に説明会が開催され、導入後も説明書などと合わせた使い方の説明会があったと、東京慈恵会医科大学附属病院、看護部、小児科病棟師長の板垣信子氏は言う。「師長を集めての説明会も何回か開催してもらった。その後、昼夜ローテーションの関係で不在だった看護師に説明するなど、互いに教え合っている」

 不便さについても、アイホンの協力で少しずつ解消される方向にあるという。「当初スマートフォンはバイブレータ設定にしていると、通知時に1回しか振動せず、気付きにくいという問題があった。また、ナースボードやスマートフォンの画面についても、アレルギー情報など現場対応に必要な最低限の情報がない点もフィードバックした」(板垣氏)

スマホ活用で医療用おしぼりも誕生

 動きの激しい看護の現場なだけあって、スマートフォンは導入から3台ほど画面が割れているという。こうした事態に備え、またバージョンアップでCLOMO含むアプリが動かなくなった場合を想定し、慈恵医大内には現行バージョンのiPhoneを100台、予備に確保していると同大の先端医療情報技術研究講座、准教授、高尾洋之氏は述べる。「NTTドコモによると、iPhoneを1000台規模で導入している飲食系の店舗では、1か月で2〜3台が割れていると聞いた。その意味で、比較的優秀なのではないか」と高尾氏はいう。

 もちろん、現場でも破損事故を防ぐために対策している。「スマートフォンはPHSの1.5倍の大きさ。スマホカバーをして管理する、体を大きく動かす場面では危なくない場所に置くなど、みんなで注意喚起しながら利用している」(東京慈恵会医科大学附属病院・看護部・腎臓高血圧内科・病棟・血液浄化部師長・飯久保素子氏)

 また、物理的な扱いだけではない。「通話時に患者の病態などプライバシーに関わる内容を話す場面もある。どこでどう利用するか、モラルやマナーの面でも意識向上を図っている」と飯久保氏は付け加えた。

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東京慈恵会医科大学附属病院 看護部
腎臓高血圧内科 病棟・血液浄化部 師長 飯久保素子氏

 2016年1月末からはスタディストのTeachme Bizの利用を開始する。病院全体の感染症マニュアル、危機管理マニュアルの最新版公開や、各種アプリ、現場が必要としているマニュアルを現場と協同して作成しながら展開していく。

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Teachme Bizで作成したマニュアル(1)

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Teachme Bizで作成したマニュアル(3)

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Teachme Bizで作成したマニュアル(2)

 また、現状は衛生面からアルコールティッシュなどで拭き取っているが今後は抗菌・抗ウイルス液を湿らせたおしぼりを藤波タオルサービスなどと、共同開発し効果の実証をすべく進めている。

 今後について、「様々に追加される機能を活用しながら働き方を変える必要がある。現場がより生産的で便利になると思っているので、業務内容を見直しながら対応していきたい」と荒木氏は言う。

 病院にスマートフォンを大規模導入したのは、今回が初めてのケースと考えられる。まだ手探り状態だとしながらも、「だからこそ、モデルケースとして全国の医療機関に広がるよう、情報漏洩含むセキュリティをきちんと対策しながら、同時に大胆な改革を進めていきたい」と高尾氏は述べる。

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