Google X創設 セバスチャン・スランが描く人工知能の未来(前編)

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Google X創設 セバスチャン・スランが描く人工知能の未来(前編)

2015/12/25

人工知能は人類の敵ではなく、人間の潜在能力を向上させる存在

「人工知能」というキーワードは、私たちに両極端な近未来を想起させる。1つは、人間にとって役立つロボットが私たちの仕事を支援し、より快適に暮らせる世界。もう1つは、そのロボットが劇的なスピードで進化した結果、私たちの仕事を奪って人間が不要になる世界だ。

「友人のイーロン・マスクやスティーブ・ホーキンスは人工知能を危険視し、規制すべきと提唱している。だが、人工知能の進化を止めることは誰もできない。むしろ、みんな人工知能を愛すべきだ。農業や製造業の効率化と同じように、人工知能を受け入れるべきなんだ」。

今回は、ワークスアプリケーションズ主催「COMPANY Forum 2015」のオープニングセッションに登壇したワークスアプリケーションズの代表取締役最高経営責任者 牧野 正幸氏とGoogle X 創設者のセバスチャン・スラン氏の対談内容をご紹介しよう。

スラン氏は自動運転車やGoogle Glassなどの研究開発に携わり、現在は共同創業したオンライン教育サービス「Udacity」でCEOを務めている。

セバスチャン・スラン氏

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セバスチャン・スラン氏
ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者、牧野正幸氏と対談する、Google X創設者、現Udacity共同創業者兼CEO、セバスチャン・スラン氏

機械効率化は人間から単純作業の仕事を奪ったが、同時にワンステップ先の能力を求める新たな職業も生み出した。「人工知能もしかりだ。現在アメリカ人の75%以上はホワイトカラーだが、スプレッドシートの入力スキルがあるだけで就職できているケースもある。人工知能の登場はそうした人たちの仕事を奪うが、更に高い能力が必要な職業へと導いてくれる。人間の能力をこれまで以上に底上げしてくれる人工知能は、喜んで迎え入れるべき存在だ」(スラン氏)。

では、映画「ターミネーター」のような人工知能搭載ロボットが人類を滅ぼす近未来は来ないのだろうか。

「その話もよく聞くが、セッション冒頭で牧野氏がPepperくんを使ったデモンストレーションをしようとしたところ、カーペットの凸凹を乗り越えられずに動かなかった。それを見るかぎり、今のところロボットはまだまだ人間の秘書レベルにすら到達していない」。そう指摘したスラン氏は、人工知能も人間の仕事を効率化するだけと笑う。

手動操縦でやっと牧野氏の側に到達したPepperくん

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手動操縦でやっと牧野氏の側に到達したPepperくん

ただし、人工知能の学習速度は人間をはるかに凌駕する。しかも、同種の機能を実装する機械同士で学習経験を簡単に共有できる。人間のように、失敗を1人だけの経験に止めるようなことはない。

「Google Carの開発当初は、インテリジェントな車なんて作れないと笑われた。成功した現在、自動運転車は人間よりも安全に運転できる。妻は僕が運転するよりも自動運転車に任せた方が安心すると言うほどだ」。人工知能の学習と共有のスピードに人間は追い付けないし、追いつけないまま人間の仕事が取って代わられていくため、シンギュラリティの話題が上っているのだろうとスラン氏は述べる。

「民間飛行でも自動操縦モードという形で人工知能が実装されている。今では、悪天候時は人間ではなく自動操縦モードに切り替えることが義務付けられているところもある。こうした現実を認識して受け入れること。まずはそれが重要だ」(スラン氏)。

Google Xが牽引する「人工知能の活躍する未来」

そんなスラン氏が人工知能に初めて出会ったのは、大学時代だ。当時は荒唐無稽な話だと一蹴されることが多かったが、人間を理解する1つの手段として私の目には魅力的に映ったと同氏は振り返る。

1995年、カーネギーメロン大学のコンピュータサイエンス学部の研究者になり、同大学の博士課程の機械学習および科学的発見講義の前進となるプログラムに携わったスラン氏は、人工知能の肝となる機械学習や論理的推論などを研究した。
 
Google Xを立ち上げた理由は、テクノロジーの可能性を拡げたいと思ったからだ。Google Xでは、「Project Self-Driving Car」、「Project Loon」、「Project Glass」のプロジェクトに携わった。

Project Self-Dirving Carは、文字通り自動運転車の研究開発プロジェクトだ。目的地まで自動運転で届けてくれて、乗客を降ろしたら勝手に近隣の駐車スペースを探して待機、帰りは呼び出せば迎えに来てくれる。「自動車は走行しているよりも駐車場に停められている時間の方が長い。事実、米国では自動車の稼働率が5〜10%程度と言われている。自動運転車でカーシェアなどができれば、これを75%以上にすることも夢じゃない」(スラン氏)

Google Xが開発した自動運転車

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Google Xが開発した自動運転車

Google Carは当初、完全に自動化せず、あくまでもドライバーを補助する位置づけだったという。しかし、社員に貸し出してモニタリングしたところ、走行中に誰も前方を見ている人がおらず、「スマホをいじったりお菓子を食べてよそ見をしている人ばかりだった」(スラン氏)

人間の判断に任せない方が安全なのではないだろうか。こうして、ハンドルもアクセルもブレーキもない完全な自動運転車が開発された。走行1万マイルを超えても性能に問題は発生しないことを確認しており、今のところは順調だそうだ。

Project Loonは、成層圏を飛ぶ気球に無線ルータを搭載し、回線の敷設が困難な地域にインターネット接続を提供しようというプロジェクトだ。そしてProject Glassは、音声認識で操作できるヘッドマウント型ディスプレイの開発プロジェクトで、Google Glassとして近日発売予定と噂されている。スラン氏も、セッション時に装着していた。「クラウド上でデータの解析や共有をするなど、第2の脳のような存在になると期待している」(スラン氏)

Google Glassの発売日については言及されず、いつになるのか期待は高まる

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Google Glassの発売日については言及されず、いつになるのか期待は高まる

Google Glassを発展させたコンタクトレンズ型も開発が進んでおり、これは糖尿病患者の治療目的で血糖値を測定することができるという。

人工知能が劇的に進化したのは、ここ3年ほどの話だ。その牽引役の1つがGoogle Xであるのは間違いない。では、そんな未来において人間の仕事は具体的にどう変わるのだろうか。人工知能のある世界で働くには、どんな準備や心構えが必要なのか。後編では、スラン氏が考える未来の仕事とUdacity創設の理由に迫る。

後編に続く

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