「実施者」と「実施事務従事者」の役割分担

IT・IT製品TOP > Key Conductors > 武神 健之(一般社団法人日本ストレスチェック協会) > 「実施者」と「実施事務従事者」の役割分担
この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加

IT現場の道先案内人 Key Conductors

「実施者」と「実施事務従事者」の役割分担

基幹系システム 2015/12/16

 過去2回、ストレスチェック制度について産業医の立場から述べてきました。
 今回は、ストレスチェック制度の実施にあたり会社で決めなければならない「実施者」と「実施事務従事者」について、私見を述べさせていただきます。両者の役割など基本的な説明については他記事(5分で分かる「ストレスチェック義務化」の基礎)をご確認下さい。

実施者や実施事務従事者よりも“重要な人物”とは?

 厚生労働省のマニュアルや、多くのストレスチェックテスト提供業者の説明会にいくと、「実施者」「実施事務従事者」の大切さが説かれています。

 しかし、私はそれよりももっと大切なことがあると考えています。それは、会社のストレスチェック制度にあたっては、良い面接指導担当者(医)を選任することが、成功の重要要素として欠かせないことであるいうことです。なぜならば、手を挙げた高ストレス者が実際に接するのは、面接指導を担当する医師です。実施者や共同実施者ではないからです。

 会社・担当者がどんなに苦労して自社(クライエント)のストレスチェック制度を構築しても、実際に面接指導を行う医師の態度や雰囲気により、従業員が自社のストレスチェック制度に対して感じる印象はかなり左右されるでしょう。ストレスチェック制度における従業員への顔となる面接指導担当医の選択こそ、従業員のストレスチェック制度への満足度、信頼度、そして翌年の受検率につながります。

実施者は、影の存在である

 一方、実施者は“影の存在”です。必要な条件を満たしていれば、実施者は表には出てくる必要はありません。実施者に必要とされている資格的条件以外の部分は「知識」です。この「知識」の部分は、実施事務従事者でも誰でも学ぶことはできます。実はストレスチェック制度について詳しく学んで知識のある医師はまだごく少数だと思います。私はメンタルヘルスの現場と法的知識をよく知っている社会保険労務士こそ、知識的な意味での実質的な実施者に適任と考えます(そのような場合も、面接指導は医師でなければなりません)。
 
 では、現実的に誰に実施者を担ってもらうのがベストなのか?

 結論から申し上げますと、実施者は、現場をよく知る産業医が面接指導医と一緒に引き受けてくれることがベストだと考えます。

 実施者の役割は以下です。

1. 調査票の決定
2. 高ストレス該当者の基準設定
3. 面接指導の必要性の有無を判断

 上記3項目は知識さえあれば、実施者資格を満たしていない人でも対応は可能です。しかしその知識がなくても、厚生労働省の標準とする57個の質問など標準的な判定基準を用いて、高得点者すべてを高ストレス者として面接指導を必要と判断すれば、上記の役割は満たしたことになります。

 以上をまとめて考えてみると極端な言い方ですが、実施者は実際のところ“おかざり”的な存在でも、実施事務従事者やストレスチェック制度対策チーム内に十分な知識を持った人がいれば、現場としては何とかなる可能性が高いと考えます。

 そういう意味では実施者は、会社の立てた戦略に沿って動いてくれるのが理想的です。中途半端なこだわり・口出し・押しつけは、百害あって一利なしです。実施者は表に出なくてもいい存在です。いわゆる名義貸し産業医でも、務まります。

 繰り返しになりますが、面接指導担当者は従業員と接するので、従業員満足度のカギとなる存在です。実施者選びよりも、面接指導医選びが大切です。

実施事務従事者に”適した人物”とは?

 実施事務従事者は、基本的には面接指導担当者と実施者の業務の負担軽減と効率化(スピード化)を可能にしてくれる人がいいでしょう。できれば実施事務従事者は、異動や退職の可能性が低い人物が望ましいです。引き継ぎが多いと情報漏洩の可能性も高くなりますし、仕事の引き継ぎ等の時間も無駄にはできません。
 
 すでに定期健康診断や過重労働面談に関連する業務をしている人は、この手の仕事に対する「慣れ」もあります。加えて、産業医面談の受付業務等をやっている人であれば、高ストレス者が補足的面談や面接指導を申し込むときに“高ストレス者の面接指導”であることを隠しやすい(カモフラージュしやすい)ので、適任でしょう。

 実施事務従事者は、ストレスチェックテストを受検する本人と実施者の他に唯一、誰が高ストレス者かを知る存在です(どのような高ストレスかという中身までは知りません)。そういう意味では、社内でも信頼のおける口の硬い人であるといいでしょう。

 加えて、実施事務従事者は、できればパソコンなどの操作に慣れている人がいいでしょう。ストレスチェック制度は、定期健康診断に比べて電磁的記録を扱う可能性やパソコン等を用いたIT作業が多いと予想されます。

会員限定で「読者からのコメント」が読み書きできます! 「読者からのコメント」は会員限定の機能。会員登録を行い、ログインすると読者からのコメントが読み書きできるようになります。

会員登録(無料)・ログイン

Myリストへ 印刷用ページへ

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加


この寄稿記事に掲載している情報は、掲載日時点での情報となります。内容は変更となる場合がございますのでご了承下さい。また、「Key Conductors」の寄稿記事及び当該記事に寄せられたコメントについては、執筆者及びコメント投稿者の責任のもと掲載されているものであり、当社が、内容の最新性、真実性、合法性、安全性、適切性、有用性等を保証するものではありません。


30008425


IT・IT製品TOP > Key Conductors > 武神 健之(一般社団法人日本ストレスチェック協会) > 「実施者」と「実施事務従事者」の役割分担

このページの先頭へ

キーマンズネットとは
医師、医学博士、産業医。これまで20以上の企業を担当。年間千件・通算1万件以上の健康相談やメンタルヘルス相談を通じ、働く人の健康管理をお手伝い。著書に「産業医・労働安全衛生管理者のためのストレスチェック制度対策まるわかり(中外医学社)」「不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣(産学社)」がある。

ページトップへ