ビーコンで始めるワークスタイル変革 〜数値だから説得できる〜

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ビーコンで始めるワークスタイル変革 〜数値だから説得できる〜

ネットワーク機器 2015/11/26

さまざまなシーンで活用が進むビーコン

 最近、いろいろなニュースで「ビーコン」という言葉を耳にしませんか?
日本語訳すると「無線標識」という意味ですが、このビーコン技術を利用した身近なサービスとしては、「VICS(Vehicle Information and Communication System)」という、高速道路や主要幹線道路の混雑・渋滞情報をカーナビ画面に表示するサービスが知られています。

 小型・軽量で取り付けが簡単なビーコンは、さまざまなシーンで活用が進んでおり、最近では、店舗での集客・売り上げ増大に向けたプロモーションにも応用されています。たとえば、店舗に配置したビーコンから来店客のスマートフォンにクーポンをプッシュ配信してお客様を店舗内に誘導する、といった使い方です。また、店舗前の電子看板(デジタル・サイネージ)に、その来店客に適した内容を表示する、といった使い方もあります。

 このような仕組みが一般に利用されるようになったのは、Appleが2013年9月に公開した「iBeacon」の影響が大きく、iOS7.1以降では、スマートフォンのアプリが起動していない状態でもビーコンの電波を検知できるようになったことから、利用範囲が拡大しました。

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 更に、2015年7月にはGoogleが「Eddystone」を発表したことも利用を促進しています。これはAndroidとiOSの両方をサポートしているオープンフォーマットで、1つのハードウェア(発信機)で異なるOSのスマートフォン(受信機)に対応しています。また、スマートフォンに対して直接URLを送信できるので、特別なアプリケーションがインストールされていなくても、ブラウザー(Chrome)に情報を表示することができるようになったのです。
 このように、技術の広がり・周辺機器の対応などにより汎用化が進んだ結果、私たちの生活の身近なところでも様々なビーコン技術が利活用されるようになっています。

なぜ今、ワークスタイルを変革する必要があるのか? 

 さて、ここからは本題に入り、オフィスでのビーコンの活用事例をご紹介したいと思います。主には、当社内で生産性向上、および、フリーアドレス導入に伴うワークスタイル変革のために、実証実験システムとして開発、約1年近く運用してきたもので、更にその実績と経験を踏まえ、お客様企業にもソリューション提供させて頂いているビーコンシステムを中心にお話しさせていただきます。

 はじめに、「なぜ今、ワークスタイルを変革し、生産性を向上させることが必要なのか?」その背景について簡単に触れておきます。皆様もご存知のことと思いますが、名目GDPでは世界3位である日本の労働生産性は、OECD加盟国34ヵ国中22位となっています。また、業種別データで見ると、日本の製造業は先進7ヵ国中3位と健闘していますが、非製造業いわゆるホワイトカラーにおける労働生産性には、まだまだ改善の余地があります。

更に、公益財団法人日本生産性本部の調査データを見ると、【図1】の通り、「労働人口は今後50年で44%減少する」という推計も出されており、日本企業が、これまでと同じ採用や働き方で今後安定した労働力を確保するのは非常に困難な状況にあると言えます。今や、経営者層の多くがこの課題を意識しており、企業全体の生産性を向上することと、ダイバーシティの推進を両輪で取り組み、様々な背景で勤務時間や労働条件に制約を持つ人材でも、戦力として働き続けることができる労働環境や人事制度の整備、風土醸成に取り組む企業も目立つようになってきています。

【図1】日本の労働人口推移

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【図1】日本の労働人口推移
出典:公益財団法人 日本生産性本部

 このような市場背景において、IoT/M2Mの新技術をオフィスビジネスに活用し、企業の課題解決に取り組む当社では、小型・軽量かつ短期間で導入可能なビーコンシステムを、ワークスタイル変革を実現する重要な仕組みの一つと位置づけ、お客様と共に『働き方の見える化』に取り組み、見える化することで把握できる課題と、その解決を積み重ねていくことで、お客様企業のワークスタイル変革を実現するご支援をさせて頂いております。

ワークスタイル変革の糸口を定めて数値化し、PDCAサイクルをまわす

 では、「ワークスタイル変革」は実際に何から手を付ければよいのでしょうか?
「ワークスタイル変革」と聞くと、とても壮大なプロジェクトに感じられます。実際、複数の企業経営者や働き方変革ワーキンググループのリーダとお話をさせて頂くと、明確な中長期の計画の立案は困難であり、当面「会議時間1時間以内ルールの徹底から着手します」とか、「在宅勤務を推奨します」といった、風土醸成やしつけに近い取り組みを中心に検討される企業も少なくありません。

 「ワークスタイル変革」ブームは、実はこれまでも何度か訪れ、結果、変革されたか、されなかったか曖昧な中、風雪にうずもれていった過去があり、これは「風土醸成で何とかできる範囲」で取り組んできた歴史そのものだと考えています。2015年のワークスタイル変革は、新しい技術を味方にし、具体的な問題・課題を見える化するところから取り組むことをお勧めしております。

 また、問題・課題を把握し、それらを解決・解消する取り組みを行ったとして、本当に働き方変革を“実現した”といえる企業になるには、【図2】のようにPLAN、DO、CHECK、ACTIONを設定し、【図3】のようにPDCAサイクルを回し続けることを“普通の働き方”として定着させるための仕組みづくりが肝要です。一つひとつの取り組みを継続することによって、従業員が自分自身の行動を振り返る習慣が生まれ、「生産性を上げるためにどんな働き方をすべきか?」と、常に意識する土壌が形成されます。

【図2】PDCA

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【図2】PDCA

 そのため、経営者の指示や組織のルールに縛られるのではなく、従業員の意識が変わることで、ワークスタイル変革が加速すると考えています。 PDCAサイクルで特に重視すべき点は、「現状の働き方と目指すべき姿の見える化」ですが、可視化する方法については、慎重に考える必要があります。

 たとえば、一つの方法として、日報やグループウェアのスケジューラーなどから、働いている状況を可視化するための指標を定義し、実績値を抽出することもできますが、その場合、取得できるデータの粒度や頻度、精度にばらつきが出ることや、入力・集計作業に負荷がかかるなど、必ずしも最適な方法とは言えません。

 そこで、この問題解決に有効なツールがビーコンです。ビーコンなら、対象部門・期間を区切って、人の位置情報を自動的に検知・収集・蓄積し、分析・改善する仕組みを簡単に構築でき、可視化することができます。そのため、業務負荷を抑えながら、“小回りのきくPDCAサイクル”を確立し、容易に繰り返すことができます。

【図3】PDCAサイクルを回し続ける

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【図3】PDCAサイクルを回し続ける
※例はシンプルな事例であって、実際の業務分析・改善施策はより実業務に即した具体的な内容になります。

 以上の理由から、私たちは、ワークスタイル変革を実現するための方法の一つとして、ビーコンを使った位置情報の見える化をお客様におすすめしています。

ビーコンで「見える化」できる情報

 ここまで、ワークスタイル変革におけるビーコンの有効性についてお話してきましたが、「実際にどんな情報を見える化できるのか?」PDCAサイクルに即して説明します。
まず、PLANとして以下の仮説を立て、それを実証するためにビーコンを使って社員の在席状況を収集しました。

<仮説>
・第3営業部の営業担当は、十分に顧客接点を持てていない。
・月末に急に残業時間が増え深夜残業も多いのは、月次の業務計画が不十分だから。
・報告形式の会議が多く、課題検討、解決に必要な議論が不足している。

 【図4】のデータから、14〜15時の時間帯は社内会議への参加率が高く、「外回りができていない」という仮説を検証することができました。そこで、改善に向け、「社内会議を月曜日に集中させる」といったアクションプランを策定・実行しました。そして、アクションプランを基に実行した結果をビーコンによって得られたデータで確認し、「アクションプランどおりに顧客接点時間が増えたのか」を検証しました。具体的には、火曜日から金曜日は、日中外回りができるようになったかを検証しました。

【図4】在席状況

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【図4】在席状況


このように、対象の組織・期間を細かく区切って、ひとつ一つ仮説・検証を繰り返すことがワークスタイル変革実現に向けたPDCAサイクルであり、その際の判断材料となるのが、ビーコンによって見える化された働き方の実態なのです。

 第1回目は、以上となります。次回は、「ビーコン活用によるワークスタイル変革〜実践編〜」と題し、実際に当社で行っている組みを具体的にご紹介したいと思います。

【豆知識コラム】ビーコンの送受信方式について

 ビーコンの送受信方式ついては、大きく分けて以下A、Bの2種類があり、それぞれ特長が異なります。
 

【A】ビーコン移動型
・名札などに小型・軽量のビーコン発信機を取り付け、携帯する人の位置情報を検出する方式です。
・ビーコン発信機の電波を屋内に固定されたビーコン受信機で受信し、サーバーに送信するため、特定のキャリアの電波状態などに依存することなく、安定した通信を実現することができます。

【B】ビーコン固定型
・会議室や受付など、検出したいエリアにビーコン発信機を固定する方式です。スマートフォンを持った人が近づくと、ビーコンの電波を受信し、スマートフォン経由で位置情報をサーバーに送信します。
・スマートフォン本体の通信機能を利用して情報を伝送するため、ゲートウェイなどの情報中継機器が不要となるメリットがあります。一方、スマートフォンの電波が届かない場所では位置情報を送信できない、という点は考慮しておく必要があります。

【図5】ビーコンの送受信方式

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【図5】ビーコンの送受信方式

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キーマンズネットとは
パナソニック株式会社に入社後、法人顧客向け業務システムの企画・設計開発に従事。パナソニック ソリューションテクノロジー株式会社にて、数万クライアントを超える大規模顧客向けシステムや新規事業の立ち上げを行うなど、ソフトウェアやクラウドサービスに関する多数の実績を有する。

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