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IT現場の道先案内人 Key Conductors

IoT時代に備えよ!(前編)

ネットワーク機器 2015/10/26

IoTを成功させるにはモノと業務、人をつなぐこと

 インターネットに接続されるデバイス、いわゆるIoT(モノのインターネット)は、ここ10年で飛躍的に増えた。その数は今や世界人口を優に超え、シスコシステムズによれば2015年の世界人口が72億人に対してネット接続デバイスは250億台、2020年には倍の500億台に上るという。

 IoTの普及によって得られるメリットの1つが、これまで見えなかったデータの可視化だ。「大型の製油所では1日当たり1TB、BMW 7シリーズは1時間当たり1TB、飛行機に至っては30分ごとに10TB、1日2万5000便でペタバイト単位のデータが生成されている。世界で概算すると、日々2エクサバイトのデータが生成されているという」。

 こう述べたシスコシステムズの八子知礼氏は、その一方で、この2エクサバイトのデータのうち活用されているのは、わずか5%に過ぎず、使われないまま捨てられているという。

 原因の1つは、モノがインターネットにつながっているだけで、業務プロセスとの連携がきちんと構築されていないからだ。「例えば、午前中に売れた商品の情報から、既存または新しい商品の企画・開発、機能の決定、販売などマーチャンダイジングに活かされているかと聞かれたら、そこまでの取り組みができているところは少ない。実際、これらを

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シスコシステムズ シスココンサルティングサービス シニアパートナー 八子知礼氏

リアルタイムに実施するには業務プロセスがもっと自動化されなければならない。
 モノ同士をインターネット経由でつなげる、またはインターネットを介してモノにつなげるだけでなく、つながった輪の中に業務プロセスや人を組み込む。これにより、ビジネス全体のワークフローを再構築したり、自社データと協業他社のデータの両方を分析して新しい情報に再生したりと、新たなイノベーションを実現する。数年前からシスコシステムズが提唱する「Internet of Everything(IoE)」は、こうしたコンセプトが基盤にある(ただし、IoEは同社が独自に提唱する用語であることから、以降でもIoEの概念を含めた意味でIoTを使うことにする)。

IoTに取り組んだ場合の経済価値

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IoTに取り組んだ場合の経済価値

 それによると、IoTの経済価値はグローバルで1,440兆円あり、うち日本は76.1兆円となった。特に日本の活用事例では、スマートファクトリーが経済価値13.9兆円と期待が大きく、「モノづくり大国の日本では、大きな駆動力になると同時にビジネスチャンスを得られるのは、やはり製造業だろう」と八子氏は述べた。

 ただし、この数字はあくまで実現した場合の数字だ。やらなければまったく意味がない。

IoT化と既存ビジネスをマトリクスで整理する

 では、実現するには何をすればよいのか。八子氏は、既存ビジネスとIoTを融合する新しいビジネスを考えるための、課題抽出・ビジネス検討フレームワークを提案した。

 まずは、縦軸にIoTの要素となる人・プロセス・データ・モノ(設備)を並べて、横軸にIoT化したい、またはIoTからデータを取得して活用したい業務などを並べてマッピングする。すると、つながれていない部分が見えてくる。そこをどのようにすればつなぐことができるか考えることで、新しいビジネスや価値が生まれると八子氏は言う。

 例えば、カメラや時計、PCなどを扱う精密機器製造業の場合、横軸にバリューチェーンの要素を並べて、つながりが不足している部分での課題を書き出す。「人」の部分では、バリューチェーン全体で担当者や専門者間の横串のコミュニケーションが確立されていないために、問題解決に時間がかかる。「モノ」の部分では、製造過程と流通・販売でリアルタイムに状況が確認できておらず、急な案件に対応できない、といった具合だ。

精密機器製造業によるIoT活用例

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 実例として、八子氏は同社が携わったドイツ最大の港、ハンブルク港を管理する「ハンブルグ港湾管理局」を取り上げた。年間1万以上の船が入港し、2014年のコンテナ貨物取扱量は900万TEU(20フィートコンテナを1と換算する貨物取扱量の単位)となった同港だが、当初はシステムも業務プロセスもつながっておらず、入港業者がそれぞれ独自にオペレーションを行っていた。そのため、入港しても前の船の作業状況によってはすぐに貨物を下すことができず、それを引き取りに来たトラックでも待ち時間が発生、港までの一般道でも渋滞が慢性化、更にはコンテナを移動させるヤードクレーンとガントリークレーンとの接触事故が発生するなど、問題が多発していた。

シスコシステムズが提案するIoTの課題抽出・ビジネス検討フレームワーク

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シスコシステムズが提案するIoTの課題抽出・ビジネス検討フレームワーク

 2009年、同管理局は4つのネットワークを1つの仮想化ネットワークに統合するプロジェクトに取り組んでいる。コンテナトラックのスマートフォンから上がってくる位置情報や各港湾設備の情報、積載物などあらゆるデータを集約、可視化し、船舶の入港時刻に合わせてトラックを港内の駐車場に入れるか、郊外の駐車場で待たせるかなど、的確な判断が出せるようにする。実際、プロジェクトは着々と進み、TCO30%削減が実現できたという。

 「これまでのモデルと違うところは、モノで食べていくのではなく、モノを導入した後のサービスでどうやって食べていくかを考えることだ」。モノだけで終わらせない発想の転換が、IoTで成功するためのポイントになる。

 現在活用されていない残り95%のデータを分析し、インテリジェンスを引き出して現場のアクションにつなげ、ビジネスに転換する。本格的なIoTの取り組みは、今後数年間で一気に加速することは間違いない。

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