覚えておくべき3つのストレス反応 〜身体と行動の症状編〜

IT・IT製品TOP > Key Conductors > 武神 健之(一般社団法人日本ストレスチェック協会) > 覚えておくべき3つのストレス反応 〜身体と行動の症状編〜
この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加

IT現場の道先案内人 Key Conductors

覚えておくべき3つのストレス反応 〜身体と行動の症状編〜

2015/11/02

 私たちは、自らにかかる負荷が、自分のキャパシティを超えて“ストレス”と感じると、その反応が心か体か行動かの3種の表現形式をとって現れます。この症状を「(ストレスの)表現形式」と言い、人にもよりますが大まかに3つの表現形式に分けられます。
 前回は「心に現れる症状」についてご説明しました。今回は他の2つ「身体に現れる症状」と「行動に現れる症状」について、解説したいと思います。

身体の症状

 ストレス反応としての身体症状は分かりやすいと言えます。例えば、寝付けないとか夜中に目が覚めるなど睡眠に関するものが多いのですが、そのほかにも食欲がない、性欲がない、あるいは腹痛や腰痛、めまいや動悸などの症状として現れることもあります。
 しかし、必ずしもすべての身体症状が“メンタルヘルス不調”によるものとはいえません。当然ながらこうした症状は、ストレスのせいでなくても、肉体的な不調のせいで起こることも多々あります。例えば20代の人にこうした症状が出ればストレス反応である可能性は高いといえますが、50代、60代の人が食欲不振とか腹痛などの症状を自覚したときは、まずは病院に行って検査を受けるべきでしょう。年相応に見合った検査をして、それでも異常が見つからなければ、ストレスが原因となるのでしょう。

 ストレスの身体症状も前回ご説明した精神症状と同様、気づかれず、見逃されやすく、対処されにくいのが実情です。
 まず、身体症状があっても、すぐにはそれがストレスや精神的不調からきているとは考えにくいことが挙げられます。体の症状を訴える多くの人は、最初から精神科、心療内科にはいきません。まずは近所の内科にいきます。そこで簡単な検査などをしても結局原因が分からず、「しばらく様子を見ましょう」などとなってしまいます。原因を知りたくてもう一軒くらいお医者さんに行っても、同じような検査をして異常が見つからないと、その後はもう自己判断で通院を止めてしまいます。
 そして、数ヵ月のうちにより症状が進んでしまい、2軒目、3軒目の内科を受診します。そこでも簡単な検査では異常は見つかりません。このときのお医者さんが、運良くメンタル系に明るい先生だと、「実は最近笑顔がなくなったなどと指摘されることはありませんか?」とか、「良く眠れていますか?」「ストレスが溜まっていると感じますか?」などと聞いてくれます。
 はっと気づいて、そのことを受け入れることのできた人は、内科から精神科に紹介され、うつ病などの診断となるのが、典型的なメンタル疾患の患者さんです。
 ここでもエリートな人ほどこの現実を受けれられず、そのようなことを指摘する医者はヤブ医者だ、ひどい医者だと断定し、自分の思い描く診断を語ってくれる医者を探しに行く傾向があります。ところがそのような医者はあまり見つからず、気づくと治療はどんどん先延ばしになっているのです。

行動という症状

 最後に行動ですが、これは周りから見て一番分かりやすい変化でしょう。例えば、アルコール、タバコ、食欲亢進・低下(どか食い・拒食)、ギャンブル、衝動買い、登校拒否・出社拒否、ひきこもりなどが一般的です。
 職場では、遅刻や早退、欠勤が増えたり、集中力が低下してミスを多発したり、仕事の結果を出すのに時間がかかるため時間外労働や休日出勤が増えたりします。「ほうれんそう(報告、連絡、相談)」が減ったり、職場での仲間との会話が少なくなることもあります。女性だと眠れなくてやつれた顔を隠すため化粧が濃くなるとか、男性だと寝癖のついた髪や無精ヒゲのまま出社するなど身だしなみの変化もあります。
 
   なお、職場の同僚や部下の中でこのような行動の変化に気付いた場合は、「いつもと違うけれど、どうしたの?」と少し声をかけていただけると良いでしょう。決して、「それってうつかもしれないから、お医者さんに行けば?」などとは言わないで下さい。やはり上司や人事部から「医者に行け」と言われるのは、本人にとっては非常にイヤなことですから、「ちょっと心配なんだけど…」くらいに留めておく方が無難です。あるいは産業医やカウンセラーのいる会社であれば、「ちょっと行ってみたら?」と声をかけるのも良いかもしれません。

まとめ

 ストレスによる表現形式には、以上のように精神症状と身体症状、行動の変化の3つがありますが、医者に行くきっかけは本人が身体の不調を自覚してからというケースが多数を占めます。ただし多くの人は最初、メンタル系の専門医のところに行くのではなく、内科に行きます。そして検査をしても診断がつかなくて別の医者のところに行ったりするうちに、運良く心ある医者に出会い、初めて精神症状にも気付くというのが良くあるパターンです。
 その時に、自分が今「メンタル不調なのだ」ということを納得して、メンタル系の専門医のところに行かなければと考えてもらえれば良いのですが、「自分にそんなことはあるわけがない」と否定して専門医を訪ねないという人も少なくありません。
 ストレスが自分の許容限度を超えた場合は、心と身体の症状や行動の変化がありうるのだ、ということを知識として身に着けておいた方が良いというのは、そういうときのためです。眠れないからといって即座にうつ病だと考える必要はありませんが、何か原因の分からない、説明しきれないような身体症状が続くときは、メンタルな問題である可能性も少しは考えていただけると良いでしょう。もしくは誰かに相談した時や、かかりつけの医者のところで「それって精神的なことじゃない?」と言われたら、端から否定したりせず「そういうこともあるのかな」と思える余裕を持っていただけたらと思います。
 そのために、セルフケアとしてあらかじめストレス反応について知っておくのが大切だと思うのです。

 また、心と身体と行動の表現形式は、身体で出てくる方はいつも身体に出やすく、心に出てくる方はいつも心に出やすいものです。自分の初期症状がどこにでてくるのか?を知っておくというのは、大変有用です。

会員限定で「読者からのコメント」が読み書きできます! 「読者からのコメント」は会員限定の機能。会員登録を行い、ログインすると読者からのコメントが読み書きできるようになります。

会員登録(無料)・ログイン

Myリストへ 印刷用ページへ

この記事をtweetする このエントリーをはてなブックマークに追加


この寄稿記事に掲載している情報は、掲載日時点での情報となります。内容は変更となる場合がございますのでご了承下さい。また、「Key Conductors」の寄稿記事及び当該記事に寄せられたコメントについては、執筆者及びコメント投稿者の責任のもと掲載されているものであり、当社が、内容の最新性、真実性、合法性、安全性、適切性、有用性等を保証するものではありません。


30008246


IT・IT製品TOP > Key Conductors > 武神 健之(一般社団法人日本ストレスチェック協会) > 覚えておくべき3つのストレス反応 〜身体と行動の症状編〜

このページの先頭へ

キーマンズネットとは
医師、医学博士、産業医。これまで20以上の企業を担当。年間千件・通算1万件以上の健康相談やメンタルヘルス相談を通じ、働く人の健康管理をお手伝い。著書に「産業医・労働安全衛生管理者のためのストレスチェック制度対策まるわかり(中外医学社)」「不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣(産学社)」がある。

ページトップへ