ストレスチェックで考える組織改善とセキュリティの問題

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ストレスチェックで考える組織改善とセキュリティの問題

基幹系システム 2015/09/30

 前回は12月より施行される「ストレスチェック制度」について、あえて問題点を取り上げさせていただき、それをどうカバーするかを解説した。今回は、ストレスチェックの組織改善のポイントや情報セキュリティ上の問題点について解説したい。

組織改善のポイント

 ストレスチェックでは、「心身のストレス反応」「仕事のストレス要因」「周囲のサポート」に加え「ストレス対処」なども併せて測ることにより、高ストレスとなっている個人のどこに問題があるかを把握し問題解決に繋げることができる。加えて、ストレスチェックの結果を組織ごと、属性ごとに集計し、ストレス反応が高い従業員が多い部門にはどのような特徴がみられるのかを手掛かりにして組織改善にも役立てることができる。

 「仕事のストレス要因」にはどのようなテストを採用しても必ず「仕事の量・質」「仕事の裁量度」という項目が入っているが、これはKarasekの提唱した「仕事の要求度―コントロールモデル」をベースとしており、仕事の要求度(責任、仕事量)と裁量のバランスがみあっているかどうかで仕事の特徴を類型化する。仕事の要求度が高いのにもかかわらず裁量度合いが低い時(高デマンド/低コントロール)には緊張状態が高く疾病のリスクが高まるとされ、一方、仕事の要求度が高くかつ裁量度合いも高い場合(高デマンド/高コントロール)にはやりがいを感じて生き生きと仕事をしている状態であると考える。困難な仕事を遂行しているのにも関わらず上司が逐一口を出すような状況ではストレス反応が高まるので、権限の委譲などを実施することが組織のストレス緩和に繋がり得る。  

 「仕事の裁量」以外にもストレス反応に大きな影響を与えるのが、他者からの承認である。よって上司が誠実であるかどうか、評価が納得できるものであるかなども重要な事項であり、チェック項目に加えたほうがいいだろう。職場の人間関係が円滑かどうか、職場が物理的に快適かどうかなども含むべきである。見落としがちなのがプライベートの要因であり、職場以外でストレスが高まっている可能性もあるのでそうした設問も加えておきたい。

 では、こうしてあぶりだされた組織分析の結果をどう活用すべきであろうか。
 もちろんすべての問題について手を付ければよいのであろうが、組織には優先順位があり、資源は有限である。そこでなるべく効果の高い施策から手を付けていくということが必要になる。具体的には上で見てきたように組織の問題とは多くの場合「マネジメント」の問題であることに着目する。管理職が適切な仕事の調整をし、仕事にふさわしい裁量を部下に与え、納得感のある評価を下し、組織内の人間関係が安定するように心を砕く、時には部下の顔色から不調を察して声を掛けたり産業医と連携したりする、など管理職の役割は重要である。
 組織の鼎(かなえ)である彼らの行動が変容することにより、レバレッジが働き組織がよい方向に転がりだす、ということは我々のコンサルティングの経験でもよく見られる事象である。もちろん管理職はプレイヤーとしての役割を担うことも多くすべてのことができるわけではないので、組織分析の結果を彼らにフィードバックしたうえでより緊急性の高いテーマについて管理職が適切にふるまえるようにする研修やワークショップを行うなどの手を打つことがまずは初手となろう。

セキュリティ上のポイント

 ストレスチェックをインターネットやイントラなどICTを活用して行う場合、その情報管理に関して厚労省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を参照することが望ましいとされている。また、ストレスチェックの結果をネットワークを通じて外部に保存する場合は、総務省の「ASP・SaaS事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン」を参照するのがよいだろう。多くの会社はチェックの実施を外部委託することになると考えられるが、委託先がこうしたガイドラインにのっとりきちんとした対策をしているのか、明確に情報セキュリティサービスレベル定義書を文書化しているかなども選定のポイントになると考えられる。

 次回は最終回として、ストレスチェック制度に関するよくある疑問についてQ&Aをお送りしたい。

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キーマンズネットとは
(株)アドバンテッジリスクマネジメント 取締役 常務執行役員。東京大学法学部卒業、文部省(現文部科学省)入省。2001年にアドバンテッジリスクマネジメント入社。経営企画を中心に、メンタルヘルスケアや就業障がい者支援などの分野で現在の事業の柱を作る。

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