ストレスチェック制度の問題点 足りない要素をどう補うか?

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ストレスチェック制度の問題点 足りない要素をどう補うか?

基幹系システム 2015/09/24

 前回は、今年12月1日から施行され「ストレスチェック制度」とも呼ばれる制度の概要について紹介させていただいた。今回はあえて本制度の問題点を挙げ、それをどうカバーするか、企業が考えるべきポイントを紹介したい。

 ストレスチェック制度の目的は、ストレス反応の高い従業員に早めに気づきを与えることである。そのために、従業員全員に対して広くストレスを測るチェックを実施して、その結果をもとに高ストレス者を抽出し、面談に繋げる。しかし、制度上ストレスチェックは従業員にとっては“義務”ではなく、医師への面談もハードルが高いものであるため工夫が必要である。基本的には以下の3点を意識することが重要だ。

(1)

なるべく多くの従業員がチェックを受ける

(2)

高ストレスと判定された従業員をなるべく専門家に繋げる

(3)

高ストレスと判定された従業員以外にも意義のあるチェック内容にする

(1)なるべく多くの従業員がチェックを受ける

 そもそもチェックは会社にとって義務であるが従業員にとっては義務ではない。かといって実施率が上がらなければそもそも“気づきの機会”を与える制度としては失敗である。
 実施率の向上は実務においては大きなポイントになる。これを解決するには、高ストレス者に対して衛生委員会でのアナウンス、目標設定などを明確に定めて取り組む必要がある。厚労省の指針においても「強要や不利益取扱いに繋がらないことを前提に」受検勧奨をすることが適当とされている。チェック自体を外部委託する場合にも、受検率を上げるために有効な打ち手を持っているかどうかが、どの機関を選定するかの1つの材料になり得よう。

(2)高ストレスと判定された従業員をなるべく専門家に繋げる

 本人がストレス状態を自覚して自発的に休養をとったり仕事のペースをセーブしたりすればよいが、ストレスは自覚が難しく自ら適切なケアを行うことには限界がある。特に高ストレス者についてはなるべく専門家に相談して解決することが望まれる。
 しかし本制度では、専門家に繋げる部分である医師面談は「本人が高ストレス状態である場合」「本人が希望する場合」「会社を通して」申し込むことになっている。これは極めて高いハードルである。本人は会社に自分が高ストレス状態であることを知られたくないかもしれないし、個人を特定する必要がある医師面談(就業環境に関する面談)ではなく、プライベートな問題について匿名で悩みを相談したいだけかもしれない。あるいは、もう少しカジュアルに話を聞いてほしいということかもしれない。 
 それにも関わらず、法定のルートしか持っていなければ、そこで高ストレス者が足踏みしてしまい、繋がるべきところが繋がらず、本来の目的が果たされない可能性がある。

 そこで、公式のルート以外にも人事に名乗り出ることなく相談できる窓口を用意しておくことが必要だろう。産業医との連携のもと、保健師や看護師を活用することも考えられる。また、外部のカウンセリングサービスを提供する機関と提携するのは有効な手段だろう。プライバシーを守り安心して相談できることを明確にして周知すると、従業員は相談に来やすい。外部カウンセリング窓口で問題解決がされてしまえばそれで良いし、やはり企業サイドに問題があって産業医や人事への連携が必要な場合は、カウンセラーが本人の了解を取りながら産業心理の専門家として対応する。  
 当社が関わった事例では、単に相談窓口を設置するだけではなく、相談窓口の利用を高めるために、相談に対応する専門家個人の名前で相談窓口は気軽に使っていただけるものである”ことなどをわかりやすくお伝えするメールを送ると、機械的なメールよりも好意的に受けとられやすく利用率も高まる結果となった。ストレスチェック制度は、細部にわたってこうしたきめ細かい配慮を行わなければ形式的なものになってしまうので、ノウハウと実績を持つ外部機関との連携がキーとなるだろう。

(3)高ストレスと判定された従業員以外にも意義のあるチェック内容にする

 厚労省が指針で示しているストレスチェックの項目は「心身のストレス反応」「仕事のストレス要因」「周囲のサポート」がある。しかし、個人にはストレスに対処する「ストレス対処」というべき要素があり、この巧拙でストレス反応の出方が変わってくる。困難なことが生じた場合、前向きに受け止めるか逃避するような行動をとりやすいか、といったストレスに直面した際の対処により、ストレスをあまり感じないで済むか、あるいは必要以上にストレス反応が出てしまうか、変わってくる。
 
 よって、ストレスチェックの項目には、厚労省の示す項目に加えて「ストレス対処」に関する要素を入れると、専門家は個別対応もやりやすくなるし、セルフケアも単なる対処療法を超えた幅を出すことができるのだ(下図参照)。

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 次回は、ストレスチェックの集計結果を用いた組織改善のポイントや、情報セキュリティ上の問題点について説明したい。

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キーマンズネットとは
(株)アドバンテッジリスクマネジメント 取締役 常務執行役員。東京大学法学部卒業、文部省(現文部科学省)入省。2001年にアドバンテッジリスクマネジメント入社。経営企画を中心に、メンタルヘルスケアや就業障がい者支援などの分野で現在の事業の柱を作る。

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