ストレスチェック義務化の背景 日本におけるメンタルヘルスの現状

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ストレスチェック義務化の背景 日本におけるメンタルヘルスの現状

基幹系システム 2015/09/02

 労働安全衛生法という法律が改正され、今年の12月から50名以上の事業場では従業員に対してストレスチェックを行うことが義務付けられることとなった。
 今回はこの「ストレスチェック義務化」の背景にある、日本企業におけるメンタル不全の現状について紹介していきたい。

 当社の調べでは、30日以上の長期間なんらかの傷病で会社を休む方のうち、メンタルを原因とする方の割合はこの10年で約3割だったものが約7割まで急増している(図1)。

図1

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図1

 また、精神疾患を原因とする労災(職務を原因として精神疾患になったり自殺してしまったりすること)が認められる件数もここ10年で4倍近くになっている。 

  この背景には日本経済の長期的な落ち込みによる生産性の低下がもたらす様々な問題(長時間労働の恒常化)や労働力構成の変化(若年労働力の減少)など様々な背景が取りざたされている。マクロ的な環境は変えることは難しいものの、何かしら対策を打ちたい政府が考えたのが、個別の企業にストレスチェックを義務付けることであった。

■「メンタルチェック」ではなく「ストレスチェック」のワケ

 労働安全衛生法の改正の検討は2010年ごろから始まったが、当初この制度は「メンタルチェック」と報道されていた。精神疾患患者を見つけ出すという印象を与えるが、実際に精神疾患の予兆をアセスメントすることは極めて難しいし、そもそもその方が精神疾患であるかどうかということと実際に業務に支障が出るということは全く別の話である。精神疾患を抱えて通院しながら勤務している方は多くいると推定されているし、企業に一定の雇用義務がある障害者には精神障害者も含まれている。  

 メンタルチェックという呼称はうつ病などの傾向を持つ方のあぶりだしというイメージを持つことからふさわしくなく、その後厚労省は「ストレスチェック」という言い方を使っている。本人の疾病傾向を診断するのではなく、仕事等によってもたらされるある程度把握しやすいストレス反応(いらいら、落ち込み、不眠など)に着目し、高ストレス反応者に気づきを与えたうえで早期の対処につなげ(早期発見早期対応=2次予防)、最終的にはストレスをもたらす環境を変えて組織を健全にする(未然予防=1次予防)という目的だ。  

 最近、従業員の健康に配慮する企業こそが価値を生み出すという考えから、政府や証券取引所、銀行などが「健康経営」という概念を打ち出して、従業員の健康管理について優れた取り組みを行っている企業を格付け、表彰したり低利で融資が受けられたりするなどの取り組みを始めている。健康の中でもメンタルに関する問題は特に職場や業務との関連性が高く、環境も含めて変えていかなければ根本的な解決にはならない。そこで、健康経営の中でもメンタルヘルスの問題は企業が主体として率先して取り組むべき優先順位が高い。ストレスチェックは個人の問題のみならず、ストレスがどんな要因で引き起こされているかを統計的に分析することを通して会社の環境要因を分析するにも役に立つ。環境には仕事の量・質などだけではなく、企業ビジョンの浸透度合い、上司のマネジメント、同僚とのコミュニケーション、サポートの有無などがある。これらを改善していくかということが組織を健康にするための最終的なゴールとなる。ただ、ストレスの高い社員を見つけ出す、個人のための制度、ということではないのである。  

 紋切型となった言い方であるが、他にみるべき資源のない我が国において「ひと」への投資はもっともROIの高いものと考えられる。従業員がしんどい顔で不健康に働いているようでは成長戦略もイノベーションも望めないのである。
 
 今後具体的なストレスチェック制度の解説を通して、会社としてどのように備えていくべきなのか、個人はどのように制度を活用すべきなのかを明らかにしていきたい。

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キーマンズネットとは
(株)アドバンテッジリスクマネジメント 取締役 常務執行役員。東京大学法学部卒業、文部省(現文部科学省)入省。2001年にアドバンテッジリスクマネジメント入社。経営企画を中心に、メンタルヘルスケアや就業障がい者支援などの分野で現在の事業の柱を作る。

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