マイナンバーのリアル 第13回:利用(その1)

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マイナンバーのリアル 第13回:利用(その1)

2016/09/29

 「第12回:保管と廃棄」から約1年が経過してしまいました。既にマイナンバーの収集を完了し、利用を開始している企業も少なくないと思います。

 この間、マイナンバーの利用が義務付けられている範囲はやや縮小し、実務に即したものになってきました。例えば1年前には、年末調整に用いる扶養控除等申告書にマイナンバーを記載することが義務付けられていました。しかし現在では、一定の条件を満たせばその義務は免除されています。

 今回のマイナンバーのリアルでは、マイナンバーの利用に関する課題を解説します。第13回は「既に開始されている利用」についてです。具体的には、雇用保険、健康保険、持株会と財形貯蓄、年金基金に関係するマイナンバーの利用についての解説になります。

 マイナンバーの運用については今後とも多くの変化が予想されますので、最新情報の確認は怠らないようにしてください。疑問や悩みがあれば、マイナンバーコールセンター(0120-95-0178)へ電話してください。

1. マイナンバーの利用

 まずはおさらいです。事業者は、税と社会保障に関する個人番号関係事務を行うために、マイナンバーを利用します。別の言い方をすれば「税と社会保障に関して国が定めた書類にマイナンバーを記載して、行政官庁に提出する一連の作業を『利用』と呼ぶ」ということです。

2. マイナンバーを何にひもづけるか

 ところで、IT的な視点から見ると、マイナンバー管理とは「従業員番号などの『公開可能なID』に、マイナンバーという『機密のID』をひもづける仕組み」と要約することができます。多くのベンダーがマイナンバー管理を代行するサービスを提供していますが、この「公開可能なID」を管理する仕組みの巧拙により「サービスの使いやすさ」が大きく変わってくるようです。

 例えば、サービス利用の必須条件として、マイナンバー収集対象者の一人一人に専用のIDを新たに割り振ることをユーザー企業に求めるものもあります。この場合、サービス提供企業は「専用IDとマイナンバーとの組み合わせを管理するだけ」です。一方でユーザー企業は「専用IDを管理し続ける」という負荷を負うことになります。

 特に大きな負荷となるのは、従業員の扶養家族の管理です。ユーザー企業は、従業員の扶養家族の一人一人に専用IDを割り振り、それを管理し続けるという仕組みを構築しなければなりません。扶養であれば専用IDを割り振り、非扶養であれば割り振らないという作業も、ユーザー企業の側の責任になります。

 人事業務についての知識が多少なりともあればすぐに分かることですが、実は、家族の扶養と非扶養の切り替えというのは、その事由が多岐にわたるため、意外に面倒なのです。

 例えば、ある社員が離婚して、同じ月内に結婚したとします。前月末と当月末のいずれにおいても結婚している状態ですから、人事データベースの被扶養配偶者データはいずれも「有」のままです。従って、前月末の被扶養配偶者と当月末の被扶養配偶者は別人であるにもかかわらず(マイナンバーを新たに収集しなければならないにもかかわらず)、被扶養配偶者データには差異がないため、マイナンバー収集を開始するためのトリガーとして機能してくれません。

 逆のケースもあります。配偶者は、就職して一定の収入を得ることになれば非扶養になりますし、その後に退職すれば扶養に戻ります。退職により人事データベースの被扶養配偶者データは「無」から「有」に変わります。しかし企業がその配偶者のマイナンバーを既に収集しているとしたら、新たに収集を行う必要はありません。

 専用IDを要求するようなサービスにマイナンバー管理業務を委託したとすると、ユーザー企業は扶養・被扶養の切り替えに伴うさまざまなケースを想定して、人事データベースの改修や業務プロセスの設計を行わなければなりません。そして自ら管理・運用し続けることになります。

 もう1つだけ指摘しておきましょう。ユーザー企業が保有している人事データベースが、被扶養配偶者を複数もつ機能をもっているかどうかも重要です。再婚した被扶養配偶者のマイナンバーを登録するからといって、離婚した被扶養配偶者のマイナンバーを上書き・消去するのは、データ管理の方法として良い手ではありません。ユーザー企業は、離婚した被扶養配偶者と再婚した被扶養配偶者の両方の専用IDを管理し続ける方法を作っておかなくてはなりません。

 これらが、「公開可能なID管理の仕組みの巧拙によりサービスの使いやすさが大きく変わってくる」と申し上げた理由です。使いやすさは特に「利用」に関して顕著になるはずです。手間暇かけて収集・保管したマイナンバーが取り出しにくかったら、2017年1月後半に集中する税関係書類へのマイナンバー記載業務に支障をきたしかねません。

3. 雇用保険

 ここでマイナンバー利用という第13回の本論に戻ります。2017年1月の税関係書類の心配をする前に、まずは現時点におけるマイナンバーの利用から解説していきましょう。

 2015年1月より、雇用保険に関するさまざまな届出書にマイナンバーを記載することが義務付けられました。現実としては、「対応はこれから」という企業も多いと思います。

 雇用保険に関して、入社して最初に提出する書類は「雇用保険被保険者資格取得届」です。この届出書の様式を皆さんが見たことがないのは当然です。社員ではなく、事業主が作成してハローワークに提出しているからです。最上段中央に個人番号記入欄があるのが分かります。

雇用保険被保険者資格取得届

 雇用保険におけるマイナンバー利用に関して申し上げたい第1の点は、「雇用保険被保険者資格取得届は、従業員が被保険者となった日の属する月の翌月10日までにハローワークに提出すべきなのに、企業は従業員の入社後にやっとマイナンバーの収集を開始する」という収集タイミングの問題です。

 もちろん入社手続きの一環として、入社したその日にマイナンバーを収集する企業もあるでしょう。しかし収集作業を外部に業務委託している企業にあっては、雇用保険被保険者資格取得届を提出するタイミングでは、マイナンバーの収集は完了していないはずです。

 そのために(というわけではないのかもしれませんが)、厚生労働省は「個人番号登録・変更届出書」という届出書類を準備しています。これは,雇用保険被保険者番号とマイナンバーをひもづけるための届出書です。事業主は、マイナンバーを記載していない雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出し、後日、個人番号登録・変更届出書でマイナンバーを提出できます。この方法は(少なくとも現時点においては)、他の雇用保険関連の届出書に対しても使うことが許されています。

 第2の点は、「雇用保険の届出にはオンライン申請を使える」ということです。雇用保険被保険者資格取得届も個人番号登録・変更届出書も、電子政府の総合窓口(e-Gov)から提出できます。厚生労働省管轄のオンライン申請は使い勝手の悪さから、2015年までその利用率は10%未満でした。しかしAPIが改善された結果、オンライン申請は企業の社会保険関係業務を大幅に効率化し得るツールとして高く評価され始めています。オンライン申請に対応するパッケージソフトウェアも増えてきていますし、当社も対応を完了しています。

 オンライン申請は、マイナンバーの安全管理措置という観点からも検討に値すると思います。誰もマイナンバーを記載した紙書類を、郵送したり持ち歩いたりしたくありませんからね。

 さて、今回はここまでです。健康保険に関しても「ターンアラウンド方式によるマイナンバーの提出依頼」という耳新しい書類が各健康保険組合から届き始めています。時間を空けることなく、マイナンバーのリアル 第14回で解説したいと考えています。

 おかげさまで当社のマイナンバー管理サービスは、多くの企業にご採用いただきました。お客さまに専用IDを要求するといった不便を強いることもありません。税から社会保障に至るまで、「実務に精通したサービサー」として、最高のサービスを提供してまいります。

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富士通、ソフトバンクを経て、2005年にラクラス株式会社を設立。「クラウドを活用した人事BPO」というビジネスモデルを磨き上げてきた。ITをツールとして使い倒すことで、人材という経営資源のattraction、retaintion、motivationを考える「ゆとり」を、人事部に与えていきたいと考えている。

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