ワークスタイル変革とシェアードスペース(7)

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IT現場の道先案内人 Key Conductors

ワークスタイル変革とシェアードスペース(7)

2015/05/01

 前回、「ユーザ側の視点」と「企業の視点」を別々に記載したが、それを並列して見ると以下のように考える事ができる。

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 企業にとっては、アウトプットの最大化が少なくとも短期的には最も大事な目標になり、個人にとっては、能力開発は自分の将来を左右する重大問題である。もちろん、企業も個人も一方向だけから見ているわけにはいかない。
 今回は、全体を鳥瞰して今一度本当に必要な事は何かを検討する。

女性だけの問題ではない!多様化する「ワークスタイル問題」と「生産性」の考え方

 育児や介護等の制約があってオフィスで働くのが困難な人にとって、オフィスへの移動コストは無限大となる。就労継続は無理だからである。100%無理でなくても、体力的な面を含めて高くつくと考える人は少なく無いだろう。例えば、保育園のコストはオフィスに通うための追加コストと考える事もできる。無論、在宅で子供と一緒に過ごしたとしても育児には時間や体力が必要だから単純に移動コストと考える事はできない。しかし、保育園に支払うコストの一部は育児によって拘束される場所と時間の制約を解き放つためのコストと考えて良い。キャリアを継続したい、する事によって将来の収入の拡大をはかりたいと思う人にとっては、自己負担となっても、一時それが所得を越える支出になっても負担するのが適当という結論に至る可能性がある。従来はそういう選択は自己責任において行うものであった。

 その負担が大きすぎて離職に至るケースが多く、雇用側もそれを前提として、子供が生まれたら女性は退職するという仮説をおいて制度を設計していた。その仮説に従えば、女性は離職リスクが高いから、長い職業経験が活きるタイプの業務を任せないという話になる。結果として、長い職業経験が活きるタイプの業務で成果を出せるのは男性だけだという誤解、思い込みが進んでしまった。しかし、性差より個人差が大きい事は少し考えれば誰にでも分かる。有能な離職者から本来期待できる将来の利益を棒にふるのは合理的ではないのである。加えて、介護の問題も明らかになり始め、離職リスクの問題は中堅男性でも高まって来ている。ワークスタイルの問題はもはや女性の問題ではないのである。

 一方で、技術が進歩し、ICTがサポート可能な範囲は格段に拡大した。本稿の最初で提示した表のように「一人でやる作業」、「方向性のある共同作業」、「相互貢献が必要な共同作業」のように業務のサブタスクを分けて、電子的な情報共有が可能になると、自宅の環境が良ければ、「一人でやる作業」は在宅勤務の方が割安になる。働き手に取っては移動時間の削減になるし、企業に取ってはトータルではオフィスコストの削減、移動コスト負担の削減になる。企業側で負担する環境整備コストが従来型コストを下回るようになれば、その方が合理的な選択になる。もちろん、離職による期待利益の喪失防止もメリットとなる。やがてVR技術が進歩すれば、共同作業の生産性もオフィス以外で実施しても遜色が無くなる可能性は高い。

 勤務場所は在宅が良いとは限らない。保育機能や介護機能を有する施設の近傍で勤務できればより効果的な場合もある。重要なのは、個人の制約や嗜好を満たし、なおかつ十分な生産性を発揮できるコスト負担が可能なスペースである。それが自宅であっても良いし、オフィスやシェアードスペースであっても良いのである。例えば、OA機器や静粛スペースの確保では自宅よりコワーキングスペースが優れているケースはあるし、顧客訪問の前後で使うような場所は自宅ではあり得ない。従業員視点、あるいは従業員育成視点から見れば、能力開発の機会の大きい場所で執務する事も期待利益の増大の可能性にもつながるのである。

自分が最大の生産性を出せる場所とは?「テレワーク時代」に必要な事

 在宅勤務、シェアードスペース利用が可能な時代に必要な事は何かを突き詰めると、「従業員が自分が最大の生産性を出せる執務場所を探索できる事」と考えて良いだろう。自分の置かれている制約条件、業務要件に基づいて効果的な場所が見つかれば良いのである。それがオフィスであっても自宅であってもシェアードスペースであっても構わない。

 実際にはこの探索は現時点では容易ではない。自宅かオフィスかの二択であれば今日はこのタイプの業務をまとめて自宅で片付けてしまおうとか、明日はミーティングをうまくオフィスで進めようとか、そういった事を考えれば良い。他者との調整は必要となるが、選択肢が狭ければ決定はやさしい。

 逆に選択肢が狭ければできない事は増える。企業はワークスタイル成熟度を上げて、柔軟な働き方が可能になるように競争する事になり、シェアードスペースは企業が求める要件に応える事で収益の拡大をはかる。競争が成り立つ程度に需要が高まれば、残るのは柔軟な検索システムの有無が課題となる。ホテル予約やレストラン予約と同じで、日時と要件を指定して探索し予約、利用ができれば良いのである。

 スペース提供企業は囲い込みができれば良いと考えるが、ホテル予約のシステムを例にすれば明らかなようにブランドにこだわらずに探した方がずっと選択肢は広がる。もちろん、マイレージプログラムのようなインセンティブを準備して囲い込みをはかるスペース(群)も現れるだろう。

 執務スペース探索がホテルと異なるのは、正に執務スペースであるというところにある。特に、セキュリティ要件や例えばテレビ会議システムの互換性要件等設備要件は重要となる。また、大人数が複数の施設を利用するようになるとその管理も容易ではなくなる。

 従業員からすると、確実な予約ができないといけない。行ってみたら満席で入れなかったでは、業務に穴をあけ被害が出る事になる。出張先等で一生に一度しか行かないかも知れない場所であっても期待レベルを予想できるようになりたい。また、能力開発イベントも念頭においた公私共存共栄モデルを狙って良いのである。育児や介護等のライフイベントに適合するためにという防衛的な面だけでなく、攻めの選択もあって良い。短期、長期両面で成果を高める事を目指すのは自然な行為になるだろう。

次回予定:「シェアードスペース、今後の進化」を未来予測

 次回はシェアードスペースの今後の進化を予想する。「こんな場所だったら嬉しい」、「こんな機能や設備があれば便利」という夢を考えた上で、未来予測を行う。

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キーマンズネットとは
2013年3月に29年勤めた株式会社シーエーシー取締役を退任し、合同会社ユビキタスライフスタイル研究所を設立。新しい働き方を容易にするためのサービス開発中。2009年から2010年末までNY勤務経験あり。JISAワークスタイル変革とITプロジェクト座長(2012年度〜)。

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