ワークスタイル変革とシェアードスペース(4)

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ワークスタイル変革とシェアードスペース(4)

2015/03/25

 前回に引き続きdeskmagの記事を引用しながらコワーキングスペースの歴史に触れる。前回は2008年までを紹介したが、今回は2015年3月現在までをカバーする。
※今回の記事では、一部のリンク先が英文記事となっています。あらかじめご了承下さい。

日本で最初に「コワーキングスペース」が誕生したのは?

 前回deskmag社は2009年創業と書いたが、オンラインマガジンが創刊されたのは2010年の7月10日と書かれている。そして10月の記事で、世界に600ヶ所のコワーキングスペースがあると報じた。2010年は、11月に第一回Coworking Conference in Europeがブリュッセルで開催され、22カ国から150人が集まった。その後、最初のグローバルコワーキング調査が実施され、2011年4月に記事が発行されている。

 日本で最初のコワーキングスペースは神戸で2010年の5月に産声を上げた。現在も営業中のカフーツである。そして、2010年6月17日にワンダーウォール社の松田顕代表によるcoworking-jpというブログ現在は2500人以上が参加しているFacebook グループ ※Facebookページへリンクします)も誕生した。日本は遅れていると言う人もいるが、決してそのような事は無く、松田氏のブログはdeskmagのオンラインマガジンの発刊より早い。情報感度の高い人はいたのである。そして、素早く拡散していく。7月には東京の経堂でPAX Coworkingが誕生、ついで大阪は十三でJUSO Coworkingが12月にオープンした。

 2011年3月9日に下北沢オープンソースCafe(※Facebookページへリンクします)が開業。同じ3月9日にソーシャル・コミュニティ・スペース パズル芝浦(※Facebookページへリンクします)がFacebookに最初の記事を掲載している。東日本大震災の2日前の事である。ちなみに、パズル芝浦はサービスオフィス協同組合に属し(当時、現在はパズル一番町が同協会加盟施設)、「サービスオフィス協同組合は今までの賃貸事業者とは一線を画すサービスオフィス事業者の組合」とある。サービスオフィス協同組合の理事長の吉田氏は(株)あきない総合研究所の代表取締役でもあり、2010年の2月に「katana(カタナ)オフィス渋谷」3月オープンのニュースリリースを出している。コワーキングスペースとは称していないが、シェア型のワークスペースの提供を行っている。

 また、同じくコワーキングスペースに分類するのは適当とは言えないかも知れないが、2010年6月に森ビルが「アカデミーヒルズ 平河町ライブラリー」の7月開設をニュースリリースしている。サブタイトルに〜クラウド時代の「個人」に新しいワークスタイルを提案〜とあり、「場を共有し、アイディアを交わすラウンジ」も設定している。

 これらの流れをやや引いて見渡すと、2010年が日本におけるシェアードワークスペースの元年にあたると考えても良いかも知れない。個人やフリーランサー等に注目し、コミュニティ形成に重きを置くコワーキングスペース、小規模事業者や小規模事業所の需要を満たすサービスオフィスあるいはシェアオフィス、企業や組織への所属の有無に関わらずにワークスペースを提供する事を目的とした大資本によるシェアードワークスペースが、ほぼ同時多発的にスタートした。

 2011年12月には、国内で最初のカンファレンス、コワーキング・フォーラム関西2011が開催された。また、2012年の6月にはコクヨ品川オフィスで、Coworking Conference Tokyo 2012が開催され、36スペースが参加している(※Facebookページへリンクします)。これら36スペースの中には既に閉鎖してしまった所も順調に推移している所もある。

世界での動きはどうだった?

 deskmagの記事は、どうしてもドイツに関する部分が目立つが、2011年9月にコワーキングスペースの運営者がベルリン議会の選挙に当選した記事が出ている。2012年には5月にスペインでのコワーキングに関するカンファレンス、6月にはCoworking Conference Tokyo 2012の紹介があり、9月にはパリで初回のFrench  Coworking Barcampが開催される等、この辺りからムーブメントとしてのコワーキングスペースが徐々に社会的な認知を得るようになって来る。

 deskmagは2012年の10月末の時点で全世界のスペース数は2000を越えたと報告している。この報告の中では日本でのスペース数は114となっている。さらに2013年の春に、コワーキングスペースのメンバー(ユーザ)が世界で10万人を越え、スペース数も2500を越えたと報じている。

 また、2013年8月はカナダで、コワーキングスペースで健康保険に加入できるようになった。健康保険制度は国によって大きく異なるが、コワーカーという働き方が社会的に認知を受け始めたのがこの時期と言える。ちなみ、日本ではコワーキング協同組合が2013年12月に「所得保証制度」を始めている。

 情報共有のための会議体は、現時点ではCoworking EuropeとGCUC – Global coworking unconference conferenceが定番となっている。アジアでは、まだ本格的な情報交換の定番は無い。最新の調査によれば、ヨーロッパには2400ヶ所以上のコワーキングスペースがあり、北米で1800弱、その他地域で1500程度と推定されている。特にヨーロッパは多様な文化があり、かつ、シェンゲン協定で人の移動の制約が少ない。コワーキングスペースにも多様な運用形態があり、情報交換の需要も高いのだと思われる。北米は、良くも悪くもお金が動く場所という印象がある。WeWorkの成長は資本調達の果実に見えるし、今後もコワーキングというムーブメントへの注目より、そこに商売のネタがありそうだという空気に満ちていて興味深い。アジアは、中国を除けば米国のような大きなマーケットは見当たらず、アジアはヨーロッパに比べれば国境を越えるハードルが高いので、アジアでの国をまたがった活動はまだ活発化していない。

次回予定:シェアードスペースの今後

 筆者は、登記事務所としてパズル芝浦を利用し、立ち寄り作業場所として重宝しており、集中執務スペースとしては平河町ライブラリーを愛用している。また、いくつものコワーキングスペースを複数回繰り返し利用して、執務や打ち合わせの場所として利用するだけでなく交流の機会を得て感謝している。さらに、出張時にはRegusを常用しており、シェアードワークスペースなくして、ビジネスも生活も成立しない程である。しかし、それは現在自分が一人会社を運営しているという特殊事情で成り立っている点は否定できない。

 スタート時点では、異なった背景を持っているコワーキングスペース、サービスオフィス等の事業体が他のタイプの事業体と競い合うようになり、あらゆるタイプの個人それぞれにとって利用可能なサービスが提供されるように進化しつつある。

 フリーランスや士業はもちろん、スタートアップベンチャーにとっては、既にシェアードスペースは経済的で有効なワークスペースになっている。企業従業員のワークスペースとして利用されるようになれば、現在より遥かに大きなビジネスチャンスがある事は明らかであり、様々な挑戦がなされている。

 次回は、今後シェアードスペースがどう変化するか、また、それが企業ワーカー、企業経営者にとってどうインパクトを与えていくかについて検討したい。

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キーマンズネットとは
2013年3月に29年勤めた株式会社シーエーシー取締役を退任し、合同会社ユビキタスライフスタイル研究所を設立。新しい働き方を容易にするためのサービス開発中。2009年から2010年末までNY勤務経験あり。JISAワークスタイル変革とITプロジェクト座長(2012年度〜)。

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