第2回 チームの「成長」を最大化する、スクラムマスターの役割

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第2回 チームの「成長」を最大化する、スクラムマスターの役割

開発 2014/12/22

 「第1回 成果が劇的に簡単に出る、アジャイル開発の3つのポイント」 では、アジャイル開発がもたらした劇的な成果と3つのポイントをご紹介しました。その要点は、関係者全員を一つのチームにして、継続的な学習の仮説検証サイクルを回すことでした。
 第2回は、アジャイル開発手法の1つ、「スクラム」を取り上げ、「スクラムマスター」という役割と実践のコツをご紹介したいと思います。スクラムマスターとは、チームの「成長」や「ビジネス成果」を最大化できるように促進する重要な役割を担っています。

スクラムとは、複雑なプロダクトを開発・維持するためのフレームワーク

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 スクラムは、スクラムチームとその役割・イベント・成果物・ルールで構成されています[1]。スクラムチームは、プロダクトオーナー、スクラムマスター、チームの3つの役割で構成されています。チームスポーツと同じように、全員が一丸となって目標を達成できるようにソフトウェアを開発していきます。
 スクラムとは、スクラムチームで計画すること、短期間の開発を複数回繰り返すこと、メンバーがどんなことをして、どんなふうに協力できたかをふりかえること、ふりかえった結果をカイゼンすることです。
 スクラムのメリットは、問題を見える化できること、プロダクトやチームにすばやいフィードバックができること、反復による経験からの学びでムダの排除や頻繁に軌道修正ができることです。
 スクラムの詳細な説明は割愛しますが、参考文献のスクラムガイド[2]を参考にしてください。今回は、スクラムの役割の中でスクラムマスターにフォーカスしてご紹介します。

スクラムマスターの役割

 スクラムマスターの最も重要な役割が、チームの「成長」や「ビジネス成果」を最大化できるように促進することです。促進するために、重要な考えとして、「サーバントリーダーシップ」があります。サーバントリーダーシップとは、ロバート・グリーンリーフ(1904〜1990)が1970年に提唱した「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップ哲学です。[3]
 従来のウォーターフォール型開発におけるリーダーとは、指示型(支配型)のリーダーシップでした。指示型のリーダーに従うメンバーは、言われてから行動する、思考停止して言われたことしか行動しない、やらされ感によるモチベーションダウンといった傾向があります。
 一方、サーバントリーダー(奉仕型のリーダー)に従うメンバーは、言われる前に行動する、自主的に考えて自律的に行動する、信頼感によるモチベーションアップといった傾向があります。スクラムでは、メンバー自身で決めながら自律して動くことができるチームを「自己組織化された」チームと呼びます。
 スクラムマスターは、「自己組織化された」チームを育成するコーチのような存在です。

スクラムマスターとしての心構えと実践のコツ(例)

裏方でメンバーを信頼して支援する

 優秀なスポーツのコーチは、選手を信頼して、任せます。試合をするのは、コーチではなく、選手だからです。よくある例として、コーチが一つひとつ細かく指示して、選手に考えさせず、自分が試合をしていることがあります。この場合、短期的には試合に勝利が出来たとしても、選手の成長を妨げてしまうことになり、長期的には、勝利ができなくなります。
 同様に、スクラムマスターは、メンバーを信頼して、裏方で支援をします。メンバーに手伝えることやチームの役に立つことはあるかを確認して、裏でチームを支えます。
 たとえば、「チームとプロダクトオーナーの関係性を改善して、なんでも言い合える場に変えたい」といったニーズをいただいたときは、お菓子を買っていき、会議の場を和ませたことがありました。一緒にお菓子を食べることで、いろいろなことを話せる雰囲気ができました。その結果、フラットな場になり、少しずつ何でも言い合える場に変わっていきました。

メンバーの意見や考えを引き出す

 従来の指示型のリーダーをする方が、スクラムマスターをする際に、一番はじめに壁にぶつかる点が、意見や考えを引き出すことです。従来のリーダーシップは、場を仕切り、伝えることが重視されていました。それが、アジャイル・スクラムでは、聞くこと(引き出すこと)を重視するように変わるのです。
 急に考えや求められる行動が変わると人はすぐに変わることが難しいものです。筆者も従来の指示型のリーダーをしていた経験があり、スクラムマスターをする際、考えや行動を変える際に悩んだことがありました。
 そんな中、「コーチング」と「ファシリテーション」という2つのスキルを学び、徐々にメンバーの意見や考えを引き出すことができるように変わることができました。
 「コーチング」とは、コミュニケーションを通じて相手が成し遂げたいことを見つけ出し、どうやったら実現できるかを探求し、行動を促し、実際に結果を創り出すことをサポートするスキルです。10のものを20にしたり、30にしたり、あるいは50にするのが「コーチング」です。
 一方、「ファシリテーション」とは、人々の活動が容易にできるように支援し、うまくことが運ぶよう舵取りするスキルです[4]。
 これらのスキルを身につける一番の方法は、実践することです。実践方法は、様々ありますが、おすすめは、「相手に考えさせる質問をすること」です。Yes/Noの質問ではなく、どのように考えていて、今後どのような行動をしようと思っているのか?を質問するのです。すると、偏った考えや行動をしようとしていたことに自ら気づき、目標を達成するために最短のルートで行動できるように変わります。
 その結果、チームメンバー一人ひとりが本質を考え、自律的に行動できるように変わっていくことが出来ます。

変化を促進する

 「変化していない=安定している」と考えることができます。一方、「変化していない=改善していない」と考えることもできます。前回の記事では、継続的にカイゼンしたことで成果を出した事例をご紹介しました。また、人は安定していると、向上心や探究心がなくなり、成長が止まってしまいます。そのため、変化することが「成長」や「ビジネス成果」を出していくために必要だと思っています。
 では、どのようにして、変化を促進すればよいでしょうか。
促進方法は、様々ありますが、おすすめは、「チームの問題や課題、カイゼン状況を見える化して、メンバー自身に気づかせること」です。
 たとえば、チームで決めたカイゼン策には、必ず期限と誰がやるのかを付箋に書いて、ホワイトボードや壁など、メンバーが毎日目にするところに貼っておきます。そして、その状況を毎日確認できる場(朝会)で確認します。もし、緊急であれば、気づいてもらえるように仕向けることもあります。
 あくまで、メンバー自身が率先して変化してカイゼンすることが大切です。そのため、ある意味辛抱強く、メンバーに気づいてもらうことも必要になってきます。チームの「成長」や「ビジネス成果」を出すには、短期的な視点だけでなく、長期的な視点も大切です。
 その結果、メンバー自身で気づいてカイゼンすることができるように変わりました。なお、中には、メンバーが気づいてくれない、変わってくれないといった場合があります。人を変えることは、非常に難しいことです。その場合は、スクラムマスター自身ができるところからカイゼンして変化することがおすすめです。すると、それを見たメンバーは自分もやってみよう、変わってみようと伝搬してくれることがあります。

まとめ

 チームの「成長」や「ビジネス成果」を最大化できるように促進するスクラムマスターの役割をご紹介しました。現代のビジネス環境が急速に変化する時代では、メンバー一人ひとりに指示してチームを動かして成果を出すことは難しいと思います。今回ご紹介した、サーバントリーダーシップは、ソフトウェア開発に限らず、どのような業種や組織にも適応できる考え方です。メンバー一人ひとりが本質を考え、自律して行動できるチームを作ることが、チームの「成長」や「ビジネス成果」を最大化する秘訣だと思います。
 また、実践からの学びがスキルを身につける一番の方法です。実践しながら、他の方からフィードバックをいただき、カイゼンしていく。または実践のポイントを経験者から学ぶことが早く身につけるポイントです。ということで、以下ご案内です。

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 教科書(Webや書籍など)による頭だけの理解では、実際の現場で実践することがとても難しいものです。教科書の課題は、大きく次の2点が課題だと思います。一つ目は、文字数の制限により、筆者の伝えたいことが一部伝わりにくくなること。二つ目は、読者の文脈の違い(現場の環境状況や課題)により、一人ひとりの理解度が変わることです。これらを解決するには、実践型のワークショップがおすすめです。本研修では、頭だけでなく、身体全体で実感できるワークショップや多くの実践経験の紹介、質疑応答の時間を設けております。
 このたび、中小企業の対象者には、実質無料でアジャイル開発研修を提供しますので、この機会をお見逃しなく、こちらからお申込みください。

・参考文献
[1] スクラムのプロセスの1枚の絵 http://www.ryuzee.com
[2] スクラムガイド http://www.scrumguides.org/docs/scrumguide/v1/Scrum-Guide-JA.pdf
[3] サーバントリーダーシップ http://www.servantleader.jp/about_servant.html
[4] ファシリテーション https://www.faj.or.jp/modules/contents/index.php?content_id=23

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キーマンズネットとは
2011年よりビッグローブでアジャイル開発を始め、2013年よりアジャイル研修講師や複数イベントに登壇。2014年10月より現職にて、アジャイル事業、ビッグデータ事業、社内スタートアップを担当。アジャイルコーチやスクラムマスター、開発メンバーとしてアジャイル開発の導入や現場カイゼンを行ってきました。

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