第1回 成果が劇的に簡単に出る、アジャイル開発の3つのポイント

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第1回 成果が劇的に簡単に出る、アジャイル開発の3つのポイント

開発 2014/12/02

 みなさんは、ソフトウェア開発において、どのような開発手法を使ってビジネス成果を出していますか?ここでは、筆者がアジャイル開発を利用して、成果が劇的にかんたんに出た事例を紹介します。あるWebサービスにおいて、修正コストがほぼゼロにも関わらず目標とする売上が2.4倍アップした事例です。そのプロダクトでの具体的なカイゼン内容とアジャイル開発を実践していく上での3つのポイントを書きましたので、ビジネス成果を出す参考にしていただければ幸いです。

Webサイトのボタンの文言を「次へ」に変更して売上が2.4倍アップ!

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 Webサービスとしてカイゼンしたのは、上図の通り、ボタンの文言のみです。したがって、ほぼ修正コストゼロで対応し、Webサービスの購入数が2.4倍アップして売上が向上しました。また、離脱率(目標とする購入画面に至ることなくWebサイトから離れてしまう割合)も、13%から5%へカイゼンできました。そもそも、なぜ今回のかんたんな対応で劇的な成果が出たのでしょう?
 それはアジャイル開発の良さを実践したからだと思っています。日本のソフトウェア開発において、従来からよく使われる開発手法としてウォーターフォール開発があります。それと比較して、アジャイル開発の違いを以下に示します。

ウォーターフォールとアジャイルの違い[1]

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 上記以外にウォーターフォール開発の良さももちろんあり、他の観点での比較もあると思いますが、今回は割愛します。
 アジャイル開発では、期間を短く区切って、優先順位の高い機能から実装を繰り返し、ユーザ(プロダクトを利用する人)や顧客(プロダクトにお金を支払ってくれる人)からのフィードバックをもとに軌道修正しながら仮説検証サイクル(PDCAサイクル:Plan(計画)⇒Do(実行)⇒Check(評価)⇒Action(行動))を回していきます(一般的に1サイクルの期間は1週間から2週間が多いです)。
 アジャイル開発で成果を出していくためには、継続的な仮説検証サイクルのプロセスを回していくことが大切です。具体的に3つのポイントを今回のWebサービスの事例でご紹介します。

アジャイル開発で成果を出していくための3つのポイント

一つめは、関係者全員をチームにすること

 本事例のWebサービスは、売上が低迷し、仮説検証サイクルが回っていないサービスでした。また、一部のWebページは、別の部門の担当領域で、対話が少なく自分の領域のみカイゼンすることに集中していました。そのため、関係者全員を一つのチームにしてサービスを提供することが出来ていませんでした。
 そこで、関係者全員を一つのチームにするために以下のことを実践しました。

1. ビジョンやゴールを共有
2. 現在のWebサービスに関するふりかえりを実施
 (何が良くて、何が課題か、今後何をしていく必要があるかを確認)
3. ふりかえった結果をもとに計画を実施(何をいつまでにカイゼンしていくかを確認)
4. カイゼン施策を実施
5. カイゼン施策の実施結果を共有
6. 共有結果をもとにふりかえりを実施
7. ふりかえった結果をもとに再計画を実施(これ以降、上記同様に繰り返し回していく)

 その結果、様々なカイゼン施策が出て、協力しながらカイゼンすることができるように変わりました。また、他の関係者を巻き込み、協力者を増やすことも出来ました。

二つめは、プロダクトを計測して、継続的にカイゼンすること

 様々なカイゼン施策のアイデアのうちの一つが、アクセス解析ツールの導入です。このWebサービスでは、アクセス解析ができていなかったため、プロダクトの計測がきちんと出来ていませんでした。また、何が本質的な課題なのか、今後どこを伸ばしていくべきなのかを把握することができず、成果を上げていくためのカイゼン活動が出来ていませんでした。
 そこで、チームでプロダクトの責任者に提案し、アクセス解析を行っていきました。アクセス解析とは、Webページを訪れたすべてのユーザの動向を数値化してくれる機能です。そのツールは、様々ありますが、無料で使える強力なアクセス解析ツールである、Google Analyticsを利用しました(サイトでのヒット数が月間1,000万件を超えると有料となります)。実質無料で利用でき、高機能かつ多くのユーザから利用されているため、おすすめのツールです(今回は、Google Analyticsの利用方法や詳細機能については割愛します)。
 まずは、ゴール設定を行い、ゴールについての詳細なアクセス解析、ゴールに因果関係のある要素を抽出して確認を行っていきました。ゴール設定を行った際、プロダクトの責任者のみが抱えていた数値目標がありました。関係者全員に共有する場となり、同じ目標意識で進めていくことができました。
 次に、様々な分析を行った中でも、ボトルネックを確認する際に以下の2つの機能が非常に役立ちました。

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 上記のようなアクセス解析を行った結果、サービスにおける購入画面への動線で離脱率の高い誘導画面を発見することができました。ボトルネックの発見に至るまで、アクセス解析ツールを導入してから2ヶ月経過しましたが、多くの関係者と対話を行い、全体像を捉え、少しずつ継続的にカイゼン施策を検討して実施しました。
 ウォーターフォール開発でもアクセス解析は実施できますが、仮説検証を小さいサイクルで繰り返すアジャイル開発のプロセスの方がリズムよくカイゼン施策を実施できたのではないかと思います。
 また、アジャイル開発のプロセスを回していても、計測をしていないと仮説検証サイクルが回らず成果を出せないこともわかりました。今回は、計測のプロセスを導入して、的を射た仮説と検証が出来るようになり劇的にかんたんに成果が出たと思います。

三つめは、ユーザや顧客からのフィードバックをもらい、継続的にカイゼンすること

 様々なカイゼン施策のアイデアのうちの二つめが、ユーザテストの実施です。ユーザテストとは、プロダクトやWebサイトの使いやすさ(ユーザビリティ)を実際のユーザに使ってもらうことで確認するテストです。
 このWebサービスでは、今までユーザにどのように使ってもらえているのかを確認していませんでした。そのため、社内で協力者を募り、ユーザテストを実施してフィードバックをもらうことにしました。ユーザテストには、関係者全員を呼び、ユーザテスト中に気づいた点を付箋に書いてもらいました。
 次に、ユーザテスト後、関係者全員で「何が課題か?」、「課題をどのように解決していくか?」といった気づきの対話を行いました。その結果、課題の共通認識が生まれました。 次のアクションにつなげるために大切なのが、2軸の座標軸を描いて、課題解決するカイゼン施策の優先順位をつけることです。

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 特に、効果的かつ効率的な施策エリアが非常に重要です。今回は、アクセス解析結果とユーザテスト結果を踏まえて、「次へ」ボタンに変更する施策を次のアクションとしました。「次へ」ボタンに変更した理由は、変更前のボタンの文字数が長く、ボタンの文言がユーザに不安を与えていたからです(ユーザテストでは、変更前のボタンで約2割の方が離脱し購入画面への誘導が失敗しました)。
 そして、ユーザからのフィードバックをもらい、「次へ」ボタンに変更して検証することにしました。アジャイル開発の良さである、もし成果がでなかったら次にカイゼンして軌道修正すれば良いという小さな失敗を許容できる点が成功につながったと思います。

まとめ

 アジャイル開発では、継続的な学習が成功の鍵を握っています。継続的に学習するためには、仮説検証サイクルを回すことが大切です。今回の事例では、関係者全員を一つのチームにして、アクセス解析やユーザテストの検証結果にもとづいて仮説を立て、効果的にカイゼンすることができました。もし、関係者をチームにしていなかったら、継続的にカイゼンすることや成果を出すことは不可能だったことでしょう。また、チームで失敗を恐れずに継続的にカイゼンを行い、共通認識を育んでいくこと、同じゴールやビジョンに向かっていくことがアジャイル開発で成果を出すポイントだと思います。

 次回は、アジャイル開発手法の一つである「スクラム」に関する「スクラムマスターの役割と実践ポイント」についてご紹介します。スクラムマスターは、チームの成長や成果を最大化するために重要な役割です。従来のプロジェクトリーダーとは違った考えや行動が必要です。筆者の実践経験とおすすめのツールをご紹介します。

参考文献
[1] アジャイル開発とスクラム 顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント(平鍋 健児 (著), 野中 郁次郎 (著)、翔泳社、2013年)

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キーマンズネットとは
2011年よりビッグローブでアジャイル開発を始め、2013年よりアジャイル研修講師や複数イベントに登壇。2014年10月より現職にて、アジャイル事業、ビッグデータ事業、社内スタートアップを担当。アジャイルコーチやスクラムマスター、開発メンバーとしてアジャイル開発の導入や現場カイゼンを行ってきました。

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