ユビキタスワークスタイル変革実践ガイドライン(9)

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ユビキタスワークスタイル変革実践ガイドライン(9)

スマートデバイス 2014/11/18

 ユビキタスワークスタイル変革実践ガイドラインの解説の最終回。最初の一歩であるレベル1〜2への取り組みについて述べる。

最初の一歩!レベル 1〜2 への取り組み

 千里の道も一歩からというわけで、まずはユビキタスワークスタイルの確立に向けて最初に何からやれば良いかについて触れたい。ガイドラインの3章は直接読んでいただくので十分だと考えるが、ざっと概要に触れる。まず、目次の構成である。

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 本格的な計画との一番の違いは、BPR計画を行わない所にある。言い方を変えれば、できるところからやろうという考え方に立っている。テレワーク対象業務の選定もやれそうなところを選んで、「業務プロセス変更の概要の一覧表」を作って、多少の手直しで済ませば良い。レベル3以上では業務プロセスの棚卸しを行って、BPRを行う形をとるが、この段階では新たな機密情報管理等の整備をやらずに済ませられる範囲で実施する所がポイントになる。

 とにかくやってみると、思ったより壁が低い事が分かる。既に多くの人がスマートデバイスを所有していて、自宅でも高速インターネットのアクセスはあるのが普通。紙に依存しない業務の回し方への転換が可能な範囲は思いのほか広い。まずはやってみれば良いのである。

 基本方針例としては、「機密事項を扱わない業務については執務場所を限定しない。」「全社業務のワークロードの20%以上は、自社オフィス以外の場所で行うことを目指す。」程度の簡単な定義が良いだろう。

 執務場所についてはオフィスと自宅を想定するのが一般的であるが、急速に台頭して来ているコワーキングスペースやシェアオフィスの利用を許す事で可能性はぐっと広がる。機密事項を扱わない業務であれば執務場所の選択は自由とするのが望ましい。自宅が作業場所として適切でないケースは珍しい事ではないので、近場のシェアードスペースの利用が許されればオフィスまで通わなくても一定の執務環境を確保できる時代である。喫茶店には無いスキャナやプリンタを有する施設も少なくないし、入館管理があってセキュリティ観点でも執務場所として設計されているスペースも多い。

 執務時間についても、対象業務については特に限定しないというのが望ましいだろう。ただし、長時間労働はワークスタイルに関わらず許されてはならない事である。日中の子供の送り迎えや、介護等への対応等は従業者の裁量にまかせ、やる事をやれば良いだろうという考え方に立つのが望ましい。この段階では、まだ対象業務も対象者も限定的なので、上司の目も届く範囲である。上司が把握できる範囲で実施すれば良いと言い換えても良い。

 IT整備についても無理な投資を行う事は必要ない。IT1のコミュニケーション環境においては、誰がオフィス外勤務をしているかが把握でき、適切な連絡手段が確保されれば良い。まだ、誰もオフィスにいなくなるタイミングがある段階ではないので、オフィスのホワイトボードで予定が共有されているだけでも現実的に機能する。気軽に考えて良い。IT2のIdentityについては、配慮が必要となる。PCを外部で使う場合、本人確認の手段は最低限行う必要がある。残念ながら、完全に個人単位のID管理ができていない組織もあり、そういった組織においては、ログインID管理だけはきちんとしておく必要がある。とは言え、多くの企業においては現状に手を入れなくてもテレワークに踏み切れるだろう。VPNの利用等については自社で環境を整備する方法もあるが、汎用の商用サービスに契約すればそれで済ませる事も可能である。IT3の文書管理は企業の状況により差が出る部分であろう。ただし、対象業務を特定すれば、とにかくスキャンしてPDF化するなり、文書テンプレートを整備する程度でたいてい乗り越える事が出来る。トライアルの段階では、これも乗り越えられない壁にはならない。IT4のコンプライアンスに関しては、そもそもコンプライアンスが問題になるような業務は選定しなければ良い。一般的な機密保持誓約書レベルで問題無いと考えて良いだろう。追加措置が必要な場合には暫定対応を検討すれば良い。IT5の作業環境での検討点はずばりBYOD/BYOCをどう考えるかだろう。VDI等の環境が整備できていれば、BYOD/BYOCの対応は可能になるだろうが、ケースバイケースとなる。

 IT環境整備で見れば、レベル1〜2では、ほとんど超えられない壁は無い。要はトップの意思一つでほぼ決まるのである。抵抗勢力は現れるかも知れないが、トップの意思がはっきりしていればまず問題は起きないと考えて良い。

 この段階で、オフィス環境の整備は象徴的な意味を持つ。フリーアドレス等の導入で物理的なオフィススペースの変更を行うと、従業者の意識に大きな影響を与える。ケチらずに大胆なレイアウト変更を行った方が良い。平均的に2割の人がオフィス外勤務をするようになれば、フリーアドレスの一人当たり専有面積は増えるのである。大胆なレイアウト変更を行わずに実施すると、この席は誰々さんの席というイメージから脱する事が出来ずに固定化してしまう危険が大きい。

 繰り返し、強調しておく。オフィススペースのレイアウト変更は、大胆に行う事を強く推奨する。レベル1〜2の実現は、気持ちが向かえば別に難しい事ではないのである。そして、一歩を踏み出せば、将来像が見えてくる。ぜひ、すぐにでも挑戦する事をお奨めする。

 今回でユビキタスワークスタイル変革実践ガイドラインの解説を終える。今回、文中でも触れたが、今後の動向で注目すべきはシェアオフィスやコワーキングスペースのような自社オフィスでも自宅でもない「働くための場所」である。気がつけば、既に相当量の供給と利用が始まっている。項を改めて、シェアスペースについて紹介していく予定である。

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キーマンズネットとは
2013年3月に29年勤めた株式会社シーエーシー取締役を退任し、合同会社ユビキタスライフスタイル研究所を設立。新しい働き方を容易にするためのサービス開発中。2009年から2010年末までNY勤務経験あり。JISAワークスタイル変革とITプロジェクト座長(2012年度〜)。

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