ユビキタスワークスタイル変革実践ガイドライン(7)

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ユビキタスワークスタイル変革実践ガイドライン(7)

スマートデバイス 2014/09/25

 今回も引き続き、ワークスタイル変革プロジェクトの実行計画の構成について解説する。

プロジェクト計画の構成例(2)

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 前回の記事で「3. 制度整備計画」、「4. IT環境整備計画」、「5. オフィス環境整備計画」は相互に関係するので、検討体制はチームに分けたとしても同時に検討する事を推奨すると書いた。実際に推進する場合に検討に着手しやすいのは「5. オフィス環境整備計画」であろう。
 最初の検討の段階では、一旦オフィスは無いものとして始めた方が良い。既に、社長室を無くしてしまった企業事例もあり、基本的に無しで行くと決めてしまえばホワイトカラー業務ではほとんど占有スペースは必要ない。社印や保存が義務づけられている文書はどこかに保管しなければならないが、文書保管もアウトソーサーが存在するし、本当に固定化したオフィスが必要なのかと問い直すと理論的には全くなしでも問題ないという結論に至る可能性もある。今オフィスをどう使っているか、から始めてどう削減していくかと考えると、これも減らせない、あれも必要だという事になるが、一度ゼロから考え始めると全く違った世界が見えてくる。
 組織を取り巻く環境は刻一刻と変化する。顧客の需要も変わるし、従業員も入れ替わる。体制もプロセスも技術も日々組み替えし続けなければ持続性は確保できない。理論的にはIT環境とビジネスプロセスを整理し、適切なアウトソーサーを活用すれば自社オフィス等いらないとなったとしても、それは現実的とは言えない。新たな従業員が入ってきたら、どうやって業務を覚えていくのかを考えるだけでも、人が集まって仕事する意義が分かる。従業員が一人前に育っていくためには一緒の空間で一定時間を過ごす必要がある。一方で、一定期間を経過すれば成長は鈍化する。ベテランの高生産性は属人化リスクと密接な関係にある事を意識し無ければならない。オフィス環境整備の検討時には、今行っている業務毎に固定的なオフィスが必要かという観点と、人材育成、組織成長の観点から必要な働く場所の問題を考える必要があるだろう。

 以上を頭に入れておいて、オフィス環境整備を考えるとしたら、現実的なスタートポイントはフリーアクセス方式の選択だろう。フリーアクセス方式だと、帰宅時には机を解放しなければならない。個人での書類の管理を共用キャビネットに移す必要も出てくるし、その段階でどれだけペーパーレスを進められるかによって必要な物理スペースは決まって来る。いずれの業務も占有物理スペースゼロを目指す事を全社共通目標とするのが良い。一定期間を設定すれば、フリーアクセス方式への移行は可能であり、個人用のロッカーも共用キャビネットも一定期間毎に削減していく事はできる。物理的な占有スペースを必要としなくなった業務はどこででもできる段階になっているのである。
 ただし、どこででもできるという事とチームメンバーがばらばらでもできるという事は違う。会議は一例であるが、大勢で集まるのでなくても小さな意見交換が短期、長期の生産性に影響がある事は検討されなければならない。同時に、そういったコミュニケーションを必要とするタスクは高コストタスクとして認識されるべきである。オフィス環境整備は、大雑把な業務種別を想定して、以下の4点が検討されるべきである。

1).

いつフリーアドレス化を実現するか

2).

個人占有スペースをどのように削減するか

3).

共有キャビネット等スペースを期限を区切ってどのように削減するか

4).

会議室等のコミュニケーション環境をどう整備するか

 1).〜3).は現状の文書等を棚卸しすれば検討できるので、テレワーク対象業務の分析が済んでいれば、計画立案はそれほど困難ではないが、4).の「コミュニケーション環境」をどう整備するかの検討は簡単ではない。例えば、1対1のコミュニケーションならチャットやビデオ通話で同じ場所にいなくてもITインフラで代替可能かもしれないが、新参者にはハードルが高い。オフィス環境として小規模な打ち合わせコーナーを準備するのが適切なのか、IT環境を整備するのがより適切なのかは、良く検討されるべきであろう。
 とは言え、上記の検討を行えば、一定の仮説をおいた「5. オフィス環境整備計画」の叩き台は作成できる。「3. 制度整備計画」、「4. IT環境整備計画」の内容との擦り合わせを行って、最終の計画にまとめあげれば良い。
 「4. IT環境整備計画」の中心は、ペーパーレス化である。ユビキタスワークスタイル成熟度モデルでは、IT3(文書共有)として達成基準としては、レベル3で「業務に必要な文書を全て電子化している」と「文書共有環境が整備され、業務に必要な全ての文書が関係者間で共有できる」をハードルとした。テレワーク対象業務の分析が済んでいれば、どのような文書が必要かは洗い出されていて、そのプロセスについても検討がなされているから、誰がその情報にアクセスできなければならないかは分かっており、それを粛々と実現する計画と、受け皿となる情報システムの開発が計画の骨子となる。やればできる内容である。ただ、IT投資として見ると、投資効果をどう考えるかという点ではペーパーレス化は優先順位が劣後しやすい難しい投資である。DropboxやOffice 365等の情報共有をターゲットしたクラウドサービスの台頭はあるが、今後まだまだ変化が起こる可能性が高いだろう。どこまでを自社でやるのか、どこまでをクラウドサービスに依存していくのかを検討するのが重要ポイントの一つになるだろう。

 ユビキタスワークスタイル成熟度モデルではIT3の他は、IT1(コミュニケーション)、IT2(ID)、IT4(コンプライアンス)、IT5(作業環境)に分類している。IT1はメールや予定表、プレゼンス等のインフラ整備の領域で、業務が「ばらばらでもできる」をどこまでサポートできるかが目的となる。また、IT5は「どこでもできる」をサポートする事が目的となる。IT2とIT4はIT基盤の基盤となる。「5. オフィス環境整備計画」の叩き台とつきあわせるのは、IT1とIT3となる。文書共有インフラが整わなければ、オフィス内の物理スペース占有を削減できないし、物理的スペース上のコミュニケーションとサイバースペース上のそれはトレードオフの関係にある。プロセス設計上の重要要素である。

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キーマンズネットとは
2013年3月に29年勤めた株式会社シーエーシー取締役を退任し、合同会社ユビキタスライフスタイル研究所を設立。新しい働き方を容易にするためのサービス開発中。2009年から2010年末までNY勤務経験あり。JISAワークスタイル変革とITプロジェクト座長(2012年度〜)。

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