ユビキタスワークスタイル変革実践ガイドライン(4)

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ユビキタスワークスタイル変革実践ガイドライン(4)

スマートデバイス 2014/07/28

 今回はユビキタス成熟度達成指標の上位レベルの内容について触れる。

上位ユビキタスワークスタイル成熟度達成指標の考え方

 まずレベル3、レベル4の判断指標でまずポイントになるのは、「ユビキタス勤務対象業務の業務プロセスが明確である」という点である。対応するレベル3の経営目標が、「ユビキタスワークを中心とした勤務形態を実現可能とし、業務内容、従事する従業員のライフイベント等の制約に応じた柔軟な対応により、高い生産性と従業員満足を両立させる」であり、「ユビキタスワークを中心とした勤務形態」を前提条件とすると業務プロセスの可視化問題を避けて通れない。記述方法の如何は問わないが、何らかのフォーマルな記述あるいは前提となるシステムが必要となる。逆に達成指標上の判断はフォーマルな記述あるいは前提となるシステムの存在が達成の是非を区別する基準となる。評価は低レベルのケースと同様にYes/Noで判断すれば良い。

達成指標(レベル3、4)

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達成指標(レベル3、4)

 制度面でも細かく設定した。まず、執務場所であるが、通常オフィスを除いて2ヵ所以上での勤務を許可していなければいけない事にした。自宅とコワーキングスペースあるいはシェアオフィス等を指定すれば良い。実際には、業務プロセスの可視化と連動した設定になる。
 対象業務は複数のタスクからなり、そのタスクを実行するために満たさねばならないセキュリティ要件等の制約が規定されなければならない。特定タスクに制約が無い場合は、原理的にはどこでやっていても良い事は明らかであり、制約がある場合はその条件を満たせる場所でなければ執務を許す訳にはいかないのである。業務分析が進めば、「在宅=安全な執務場所」とは言えないケースがあり、むしろ、十分なセキュリティ管理が行われているシェアードスペースの方が望ましいケースも出てくる。これらは企業の方針の問題でもあるし、取引先との関係でも制約を受けるものである。

 制度面でもう1つ特に注目していただきたいのは、コンプライアンスの項目である。執務場所、プロセスの明確化と密接に関係するが、扱う情報の機密度を判断できるようになっていなくてはならないという点を明記した。加えて、執務場所、執務時間に関するルールの設定を求めた。プロセスの可視化、モニタリングができるようになっていたら、そもそもサービス残業等あり得ないが、法制上問題になるのは深夜勤務の割り増しの扱いは出るだろう。同じ生産性で同じ8時間労働で、本人の裁量で深夜勤務を選んだだけなのに給与が違うというのは公平性に欠ける。厚労省の労働基準行政全般に関するQ&A(http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei07.html)によれば「割増賃金には時間外労働に対するもののほか、休日労働に対するものと深夜業に対するものがあります。休日労働とは、労働基準法で定められた法定休日(週1日又は4週を通じて4日。曜日は問いません。)に労働させることをいいます。休日労働に対する割増賃金は、通常の賃金の3割5分以上です。深夜業とは、午後10時から翌日午前5時までの間に労働させることをいいます。深夜業に対する割増賃金は2割5分以上となります。」とある。公平性を保つためには執務時間を午前5時から午後10時までで月単位の変形労働時間制を選択する等の対処が必要となる。個人的な感想ではあるが、ユビキタス勤務時代は物理的に海外で働く事も珍しい事ではなくなるから、時間帯で区切る深夜業の規定は就労環境によっては合理的で無くなる日が来ると考えている。レベル3達成企業では、例えば配偶者に同行して海外居住になった場合でも業務要件が許せば働き続けられるような企業をイメージして検討を重ねた。
 ITに関しては、制度を現実的に運用できるために必要な環境は何か、という観点で基準を設定した。技術の進化によって、将来基準を変える必要はある可能性はあるが、現時点では納得感のある指標になっていると思う。

 レベル4の経営目標は「法的な制約やその他の理由により不可能な業務を除いて、過半の業務、過半の従業員に対して、ユビキタスワークを中心とした勤務形態を実現可能とし、取引先を含めたユビキタスワークスタイルにより高い生産性と従業員満足を両立させる」であり、自社のみで執務形態が決められない取引先等との関係についても整理ができている事を指標に加えてあるのがレベル3との主な差異となっている。国をまたがったクラウドソーシングも自由に使いこなしながら信頼性の高い業務遂行が可能な企業というイメージを念頭において設定したが、現状からの距離があるので、まだ十分な指標とはいけないかも知れない。業務によっては、達成可能なものもあり、評価事例の蓄積とともに改善されるべきものと考えている。  

ユビキタスワークスタイル成熟度を業務、部門、全社で格付ける

 部門評価、全社評価は基本的に低レベルの本来方式と同じである。

達成状況、達成指標

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達成状況、達成指標

 レベル3を企業として達成できていれば、就労環境としてはかなり自由度が高くなるのは容易に想像できるだろう。同時にプロセスの明確化が進み、サポートするIT環境が整備される事で労働時間あたりの生産性も向上できているだろう。国際アウトソースも進み、コスト競争力も向上しているはずである。
 蛇足となるが、現在筆者は従業員1名(自分だけ)の会社を経営している。サービス開発は自分で設計し、複数のパートナー企業の助けを借りて洗練化し、システム開発はネパールの企業に委託している。向こう1年以内のサービスのロールアウトが見えてきたので、いよいよ従業員の採用を検討し始めた。現在、募集要項を整理中であるが、ユビキタス勤務前提で週20時間〜40時間勤務、年齢性別居住地不問で、TOEIC800点程度の英語力と応用情報技術者試験合格相当のIT力を有する人を念頭に担当業務の明確化を試みようとしている。小さな会社だからできる部分もあるだろうから、手本になるような形でレベル4企業を実践してみたいと考えている。

 次回は、ガイドラインの2章「ワークスタイル変革への取り組み」、改革プロジェクト計画について触れる。今回までで、到達したい未来のイメージをある程度つかんでいただけた事を期待して、どうやってそこにたどり着こうとするかという課題に取り組んで行く。  

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キーマンズネットとは
2013年3月に29年勤めた株式会社シーエーシー取締役を退任し、合同会社ユビキタスライフスタイル研究所を設立。新しい働き方を容易にするためのサービス開発中。2009年から2010年末までNY勤務経験あり。JISAワークスタイル変革とITプロジェクト座長(2012年度〜)。

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