“場所”に注目してユビキタスワークスタイルを考える(2)

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“場所”に注目してユビキタスワークスタイルを考える(2)

2014/04/17

 前回に引き続きユビキタスワークスタイルを場所から考える。今回は場所とコミュニティについて注目する。

オフィスの価値は仕事をする場所に留まるわけではない

 任意の時間に任意の場所で働けるということは、自由にできる時間を増やし、生産性は向上すると期待したいところであるが問題はそう単純ではない。1人で仕事をしていると行き詰まった時にそこから抜け出すのは難しいからだ。在宅を許可するとしばらくはそれを多用し生産性が上がるのに、しばらく経つとオフィス勤務を中心とするワークスタイルに戻ると悩む企業は少なくない。オフィスは単に作業をする場所という機能を有しているだけではなく、機能以外にも「働くための場所だからそこに行くことでモードが変わる」、「同僚がいるので行き詰まりから脱することが出来る」、「そこには自分がいて良い席があるので安心できる」といった効用がある。他にもあるかも知れない。
 在宅勤務で考えると、「PCを会社に接続してモードを変える」、「TV電話、プレゼンスソフトやチャットを含むグループウェア、ユニファイド・コミュニケーションツールで同僚とつながって行き詰まりから脱する」あるいはそういったツールを駆使することで会社に自分の居場所がある感を維持するという事はある程度可能になる。ICT技術の進展は確かに超えるべき壁を低くしている。しかし、ユビキタスワークスタイルという視点で見直すとこの段階はまだ既存の職場の延長にしか過ぎないと筆者は考える。もっと積極的な見方をした方が良い。

「第三の場所」を現在視点で見直す

 ここで観点を変えて“第三の場所”という概念を紹介したい。Ray Oldenburg氏は「The Great Good Place」という書籍でThe third place、“第三の場所”という考え方を1989年に提唱した。第一の場所は家、第二の場所は職場、第三の場所はより創造的な交流を生むコミュニティのための場である。家には家族というコミュニティがあり、職場には共に働く仲間のコミュニティがある。家と職場だけを往復しているだけでは味気ない人生であり、良質な第三の場所の存在がQOLを向上させるという考え方である。
 第三の場所は「心地良い居場所」であり、職場と異なる自己成長のための場所でもある。ICT技術の進展によるユビキタスワークスタイルの容易化と平行して、コワーキングスペースという新たな動きがあることに触れておきたい。

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コワーキングスペースの魅力

 最初の商用コワーキングスペースはサンフランシスコで2006年に開業したCitizen Spaceと言われている。現在も営業しており、筆者も昨年実際に訪問してみたが、働く場所でもあり交流の場所でもある。欧州でも日本でも既に多くのコワーキングスペースが開業しており、そこを拠点として働く人も少なくない。筆者自身、昨年の創業時に自分の働くための場所を求めていくつものシェアオフィスやコワーキングスペースを回った。登記オフィスでもあるスペースにはパズル芝浦を用い、集中作業のために森ビル平河町ライブラリーを利用している。
 シェアハウスやアジアのビジネスの情報交換には東京では最初に開業したと言われているPAX Coworkingにお世話になっている。ここは興味深いイベントの存在と運営者のキャラクター、コミュニティの魅力が光るのである。
 JISAのワークスタイル変革とITプロジェクトでも打ち合わせ場所としてコワーキングスペース茅場町 Co-Edo等を利用している。ここは自立したIT技術者が集まっている場所というイメージが好ましい。

 仕事は自社オフィスでやるのが当たり前という過去の常識を捨て去れば、執務場所の選択肢は広がり、「テレワーク=在宅」と考える必要もない。コワーキングスペースやシェアオフィスといっても様々な形態があり、価格もサービスも様々である。今後どのように成長していくかは分からないが、恐らくシェアードサービスの台頭は留まることは無いと思われる。 子供を連れて通えるコワーキングスペースも現れている。赤坂にはHatch Cowork+KIDsがあり、他の子供や他の親とも一緒に過ごし、そこで働くという選択肢も提案されている。ライフイベントによる制約の中には超えるのが困難なケースもあるが、在宅、託児所、シッターといった既存の選択肢だけではない新たな執務可能な場所も生まれて来ている。企業側のユビキタスワークスタイル成熟度が高まれば、そういったサービスを利用して執務できるようになる可能性は高まり、利用者が増加すればサービス提供者の収益も改善し、良質なサービスが利用できるようになるという好循環が生まれる事は論を俟たないであろう。
 シェアオフィスでは「機能」が、コワーキングスペースでは「コミュニティの魅力」が隆盛の鍵を握っているように見える。シェアオフィスは第二の場所の延長で、コワーキングスペースは第二の場所を兼ねる第三の場所と言えそうだ。

  次回はもう一度“場所”に注目して、在宅で問題になる「必要な時に集中して執務できる」、「行き詰まりを打破できる」、「居場所があって安心できる」は果たして企業に、職場に求めることなのか?今後も求め続けられる事柄なのか?を再考したい。

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キーマンズネットとは
2013年3月に29年勤めた株式会社シーエーシー取締役を退任し、合同会社ユビキタスライフスタイル研究所を設立。新しい働き方を容易にするためのサービス開発中。2009年から2010年末までNY勤務経験あり。JISAワークスタイル変革とITプロジェクト座長(2012年度〜)。

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