“場所”に注目してユビキタスワークスタイルを考える(1)

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“場所”に注目してユビキタスワークスタイルを考える(1)

2014/03/27

 ユビキタスワークスタイルは、「場所と時間に縛られない形態」の働き方であることは以前に述べた。もちろん「企業競争力強化と就労者のクオリティ オブライフ(QOL)向上を同時に実現」を狙いとしていることも、再度確認しておく。

 まず企業競争力強化に注目した場合、

1.

 リソース当たりのアウトプットの増加

2.

 コストの削減

などが直接的なターゲットとなる。

 QOLに関しては、

3.

 個人が自由にできる時間の増大

4.

 所得増加等による経済的メリット

5.

 個人として快適であること

といった項目を例として挙げることができる。

企業の視点

 業務を遂行する場所には、必要な設備の存在、静粛性や効率的な動線等が確保されたオフィス環境、適切な協働者とのコミュニケーション環境が必要となる。ペーパーレス達成前は業務処理に必要な紙があるところでなければ成果を出せないし、達成後でも執務場所でスキャナが必要なケースもあれば電源設備、ネットワーク接続がなければテレワークは困難となる。
 オフィス環境はコストとのトレードオフである。やや古い資料ではあるが、森ビルの「オフィスワーカー1人当たり床面積動向調査’10(PDF資料)」によれば、日本企業で1人あたりのスペースは3〜4坪、外資系企業で4〜5坪。坪単価はビルのグレードによって異なる。良質で広いスペースが個人作業の効率に良い影響をあたえるのは間違いないだろう。「坪単価2万円×3坪」と「坪単価4万円×5坪」ではコストは3倍以上の差、金額で見れば月額14万円もの差となる。
 一方で自宅のオフィスコストを仮に0円とした場合、9割在宅でオフィススペースを8割削減した場合、1人あたりのコストは1.2万円〜4万円。在宅勤務でも生産性が落ちなければ、企業は従業員あたりの利益を約5万円〜16万円向上させることができる計算になる。1000人の会社だと月1億円の差となる。働く場所の選択はコスト面で想像以上に大きな差を生むことを理解いただけただろうか。

勤労者の視点

 就労者から見れば、もし生産性が同じなら在宅勤務によるコスト削減の半分は本来は自分の取り分と考えても良いだろう。オフィスを使わずに同様の生産性が出せるのであれば、手当を月に2万円〜8万円を支給されるべきだという考え方には一定の合理性がある。そして、それでも企業は利益が増えるのだ。通勤時間の短縮による可処分時間の増加も期待できる。
 ワークスタイル変革の中で、どこで働くか=働く場所の問題は就労者のQOLにも大きな影響を与えるのである。同程度の仕事なのに報酬も高くて働く場所の自由度の高い企業があれば、転職を考える人は現れるだろう。ただし「同様(以上)の生産性」を出し続けられなければ持続性はない。

テレワークの孤独は超えられない課題か?

 注意すべきは、「適切な協働者とのコミュニケーション環境」である。業務遂行に資するコミュニティの存在と言い換えても良い。在宅比率を上げると“孤独感”が増し、生産性が低下するという話は良く出る。田澤由利氏の「在宅勤務が会社を救う」(amazonにリンク)では、ICTの活用により「孤独」の壁は超えられると書かれている。
 一方、私はリアルな対面のコミュニケーションには極めて大きな価値があると思っており、超えられる壁と超えられないものがあると考える。協働者とのコミュニケーションという観点でも同じ場所にいることの負荷と得られる価値にはトレードオフの関係がある。ICTの発展により、オフィスで共に働くことが大抵の場合で合理的であると言い切ることはもうできないと考えるのが適切である。

 次回は、引き続き“場所”について検討する。特に場所とコミュニティという点に焦点をあてたい。

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キーマンズネットとは
2013年3月に29年勤めた株式会社シーエーシー取締役を退任し、合同会社ユビキタスライフスタイル研究所を設立。新しい働き方を容易にするためのサービス開発中。2009年から2010年末までNY勤務経験あり。JISAワークスタイル変革とITプロジェクト座長(2012年度〜)。

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