第5回 アジャイルな開発におけるプロダクトオーナーの心構え

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第5回 アジャイルな開発におけるプロダクトオーナーの心構え

開発 2013/10/23

 NECビッグローブは、企業から開発受託する立場であるとともに、BIGLOBEとして提供するアプリやサービスを企画し、アジャイルな開発を委託するプロダクトオーナーという立場でもあります。今回は、双方の立場からの経験を元に、プロダクトオーナーとしてアジャイルな開発を委託する際の心構えを紹介します。

プロダクトオーナーの役割

 プロダクトオーナーの最も重要な役割は、サービスに対するパッションとこれから開発していくプロダクトが、「だれ」をターゲットにし、「なに」を解決/実現するものなのかといったビジョンを明確にすることです。プロダクトのビジョンが明確になっていれば、開発チームが課題に直面した時にも、プロダクトの価値を最大化するためにすべき解決策や優先順位を選択できるのです。開発をオーダーする前には、ターゲットとゴールがはっきりと設定されているかどうかを社内や部門内で再度検討してみてください。

プロダクトオーナーとしての心構え

パッションやビジョンを丁寧に共有する

 現状は、「この仕様はどういたしますか?」と開発から確認されることが多いのではないでしょうか?「ご希望の仕様とは異なりますが、○○の仕様ならユーザにも満足してもらえると思いますがいかがでしょうか?」といった開発者ならではの提案をしてもらえるチームを築くことは、プロダクトの価値最大化には欠かせません。こうしたモチベーションの高いチームを作るためには、「このサービスによって○○といったユーザの課題を解決したい」といった、「なぜこのプロダクトを開発しようと考えたのかという開発の背景なども丁寧に伝え、開発メンバーにもプロダクトビジョンに共感してもらうことが重要です。

メンバーの意見を尊重する

 登山で例えると、プロダクトオーナーの役割は、登るべき山を決めて、登る意義をメンバーに理解、共感してもらうことです。メンバーとともに、ゴールである山頂を目指しますが、どのようなコースで山頂へ臨むのか、途中で起こる課題をどのように解決するのかは、メンバーの意見を尊重し、チームで合意形成して進んでいくことが大切です。

 開発メンバーの意見を尊重しながら、予算や納期をコントロールすることは難しいことのようにみえます。しかし、プロダクトビジョンがはっきりしていれば、自ずと必要な機能に優先順位がつき、プロダクトオーナーも開発メンバーも納得する地点に、決められた予算と納期で目指すべきゴールを設定できるのです。決められた条件の中で、より良いものを作る、価値を最大化するのがアジャイルな開発の最大の魅力です。

NECビッグローブの事例

 NECビッグローブでは、プロダクトオーナーとして様々なサービスを開発し、価値の最大化を実現しています。例えば、スマホ向けの写真コラージュアプリ「ミルフォトブック」は、日本国内だけでなく台湾や香港でも好評で、現在では100万件以上ダウンロードされています。また、企業向けのIaaSパブリッククラウドサービス「BIGLOBEクラウドホスティング」は日経BP社が主催する「第7回 クラウドランキング」でベストサービスに選定されるなど高い評価をいただいています。どちらも、アジャイルなチームにより開発されたものです。

 NECビッグローブでは、プロダクトオーナーとして明確なターゲットとゴールを設定するために、ビジネスモデルの仮説を立て検証する「リーンキャンバス」や、サービスの全体像や方向性などを明確化する「インセプションデッキ」といったツールを活用しています。ツールを使うだけで完璧なプロダクトビジョンを作成できるわけではありませんが、ターゲットやゴール設定に迷ったときは、こうしたツールを活用してみることをおすすめします。

もちろん、気軽に意見交換ができ、自律的に「カイゼン」を続けられるチームを作るためのコミュニケーションも欠かせません。

 「第1回 アジャイル開発にまつわる誤解」でもご紹介しましたが、アジャイルは、“「早く」「安く」、しかも柔軟に仕様変更もできる”といった夢のような開発手法ではありません。しかし、チームで協働していくことで、よりよいプロダクトを作り上げていくことができる手法です。また、もう一度一緒に仕事をしたいと思えるチームメンバーと巡り合える機会も増やしてくれるものだと体感しています。

 もし、アジャイルな開発を受託する立場で、プロダクトオーナーのビジョンに疑問を感じたときには、仕様やゴールだけでなく、ぜひ開発に至った背景やサービスでもたらす未来をどのように考えているかなども聞いてみてください。そこには、プロダクトビジョンを明確化するためのヒントがあるはずです。

 次回は最終回として、NECビッグローブが考えるこれからのアジャイルな開発についてご紹介します。

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キーマンズネットとは
基幹業務システムの開発を経て、2011年よりNECビッグローブでアジャイルな開発を行なっている。チームの立ちあげ、スクラムマスター、アジャイルコーチなどのチーム作りから、チームメンバーとしてコーディングも行なっている。最近のマイブームは「ドメイン駆動設計」。

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