第4回 スクラム開発(後編) プロダクトを成長させる開発のコツ

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第4回 スクラム開発(後編) プロダクトを成長させる開発のコツ

2013/10/07

 「第3回 スクラム開発(前編) モチベーションを上げるチーム作り」では、スクラムの概要とチーム作りのポイントについてご紹介しました。今回は、後編ということで、スクラムで価値のあるプロダクトを作るために、チームがどのように活動していくと良いかを紹介します。

スクラム開発における3本柱

 スクラムでのプロダクト開発では、“透明性”、“検査”、“適応”の3つが重要な柱となります。

1.透明性

 “透明性”とは、現在の状況や問題点を常に明らかにすることです(見える化)。問題が小さなうちに発見できれば迅速に対応できるので、効率的な開発には“透明性”が重要です。 

 “透明性”を維持するために必要なのはチーム力です。問題点が出てきたときに「誰が悪かった?」のではなく、「何が悪かった?」のかを考えられるチームでなくてはいけません。これがもし「誰が悪かった?」を問われたとしたら、どうなるでしょうか。誰も問題点を言いづらくなり、終盤になって問題点が浮き彫りになり、手遅れになってしまいます。問題に対して全員で向き合えるチームを作ることが、“透明性”を実現します。

 また、関係者全員が共通理解を持つことも“透明性”の要素の1つです。例えば、プロセスを指す用語が、関係者全員で共有されていなければならないですし、「完了(Done)」の定義が、作業をする人と成果物を受け取る人で共有されていなければなりません。関係者は日頃から密にコミュニケーションをとり、お互いの認識を共有することが大切です。

2.検査

 “検査”とは、開発しているプロダクトが価値あるものになっているか、進捗状況が仕事の進め方に問題がないかを定期的に確認することです。スクラムによる開発では、スプリントプランニングで決めた計画通りにタスクが進捗しているかを、以下のバーンダウンチャートを使って毎日の朝会で確認します。

バーンダウンチャート

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バーンダウンチャート

 バーンダウンチャートは、縦軸に残りのタスク数、横軸にスプリントの営業日を書いた折れ線グラフのことです。計画されたタスク数がスプリントの最終日に0になるように線を引くことで理想線ができます。また、毎日の朝会時に残っているタスク数の合計を記入してプロットして線を引くことで実績線ができます。

 この理想線と実績線を比較することで進捗が順調かどうかを確認できます。例えば、実績線が理想線よりも上回っている場合は、遅れが発生していることを表します。

 遅れがわかった時には、その原因は何か、どのように対応するべきなのかをメンバーで話し合い迅速に対応することが重要です。

3.適応

 “適応”とは、やり方に問題がある時、より良い方法があった時などには、やり方そのものを変えることです。カイゼンの考え方と同様で、従来のルールに縛られて思考停止することなく、自分達で考えて、自律的に変化してくことが大切です。NECビッグローブでは、プロダクトのリリース前に実施していた出荷判定会議のやり方を変えました。どのように変えたかというと、出荷判定会議をなくしたのです。

 従来の出荷判定会議には以下のような課題があり、「出荷判定会議が儀式になり機能していない」という状況でした。

会議の目的が、出荷判定に合格することになりつつあった。

品質状況やリスク、課題の確認が“やらせされる”ものになっていた・     

合格してもバグが出ることがあった

顧客(プロダクトオーナー)が望んでいるものや、開発チームの描く完成図などを書類や数字で確認するのに限界があった。

そこで、よりよいプロダクトを作り出すため、出荷判定会議という儀式をやめ、チーム全員でデモ(動くソフトウェア)を確認して出荷可能かを判断するように変えました。すると以下のような効果が得られました。

チーム全員が何を持って完了かの定義を明確にして意識して行動するようになった。

自分達で自律的に考えて率先して行動するチームになった。

テスト駆動開発(TDD)や継続的インテグレーション(CI)などを積極的に導入して品質強化を図った。

顧客(プロダクトオーナー)との対話が増えた。

 リリーススピードが速くなった。

 そして、従来よりもプロダクトの品質を向上することができました。

顧客視点でプロダクトを考える

 価値のあるプロダクトに成長させていくには、スクラムの3本柱以外に、常に顧客視点でプロダクトの価値を追求していくことも大切です。NECビッグローブでは、チーム全員でプロダクトの価値を考えながら開発することを大切にし、ユーザテストでチーム全員で立てた仮説を検証しています。これにより、チーム全員がユーザと向き合い、開発をすることができるようになりました。また、これまでは開発メンバーがプロダクトオーナーへ提案することは少なかったのですが、積極的にプロダクトの仕様を提案できるチームに変わりました。

 価値のあるプロダクトを開発するためには、顧客視点でプロダクトを考え、透明性をもって検査を繰り返し、思考を止めずに適応を繰り返していくことが必要なのです。次回は、プロダクトオーナーとしてアジャイルな開発を委託する際のポイントをご紹介します。

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キーマンズネットとは
基幹業務システムの開発を経て、2011年よりNECビッグローブでアジャイルな開発を行なっている。チームの立ちあげ、スクラムマスター、アジャイルコーチなどのチーム作りから、チームメンバーとしてコーディングも行なっている。最近のマイブームは「ドメイン駆動設計」。

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