第3回 スクラム開発(前編) モチベーションを上げるチーム作り

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第3回 スクラム開発(前編) モチベーションを上げるチーム作り

2013/09/24

(前編)モチベーションを上げるチーム作り

 今回はアジャイル開発手法のひとつである“スクラム開発”を取り上げ、メンバーのモチベーションを上げるチームの作り方と、プロダクトを成長させる開発のコツを前後編に分けてご紹介します。

 昨今、ソフトウェアが多様化・複雑化していることから、明確なゴールを決めて、要件通りに開発していくウォーターフォールでの開発が難しくなりつつあります。そこで、変化するニーズに対応しながら開発を進めることができる手法として注目されているのがアジャイルです。(「第1回 アジャイル開発にまつわる誤解」参照)

スクラムとは

 スクラムは、複雑で変化の激しい問題に対応するためのフレームワーク(枠組み)で、いくつかのイベントや役割が定義されています。このフレームワークをベースとすることで、アジャイルな開発を実現できる手法です。スクラムは日本の製造業で行われてきた考えが含まれたもので、第2回でお話した「カイゼン」が朝会やふりかえりといったイベントとしてフローに組み込まれています。

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■イベント
スプリント

短い間隔で反復しながら行われる開発サイクルのこと

スプリントプランニング

スプリントでやる事を決める計画のこと

朝会

毎日15分以内で、チーム全員の活動状況や課題を共有する場のこと

スプリントデモ

スプリント中の成果である機能をデモすること

ふりかえり

プロジェクトの現状を点検しカイゼンを推進すること

■役割
プロダクトオーナー

プロダクトの唯一の責任者のこと

スクラムマスター

チームが成果を最大化できるように促進する責任者のこと

チームメンバー

動くソフトウェアの開発者のこと

スクラムの第一歩 チーム作り

 スクラムは、チームを作ることから始まります。従来のウォーターフォール型では、要件定義に基づいて決められた役割を、1人ひとりきちんとこなすことが重要でした。一方で、アジャイル開発は変化に対応しながら、メンバー全員でゴールを考えるものですから、メンバーが活発にコミュニケーションし、シナジーを起こせるチームを作れるかどうかが非常に重要です。

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 ウォーターフォール型では、縦割りの組織でドキュメントによるバトンリレーが行われていたために、様々な齟齬がおこり、結果として品質問題や開発遅延につながることも多くありました。アジャイルでは、コミュニケーションが密になることで、コミュニケーションギャップによる無駄をなくすこともできるのです。

 先日の2020年オリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決まった事例も、日本の関係者全員が一丸となったチームをつくることができたため、他の競合国から勝ち取ることができたのだと言えると思います。

メンバーのモチベーションをあげるチーム作り

 チーム作りにおいて最も重要なのは、メンバーのモチベーションをあげ、プロジェクトを通じて個人が成長できるチームを実現することです。そのためには、1人ひとりの意見を尊重した役割分担と、作業を指示せずに任せられる環境づくりが求められます。さらに、個々を尊重しながら、チームとしてのバランスも実現しなくてはいけないのが難しい点です。

 そこで、NECビッグローブでは、「メンバーの意思を明確にする」「メンバーがお互いに何を期待しているかを共有する」ことを目的としたワークショップを実施しています。こうした場を設けることで、メンバーが納得して開発に取り組める、自主性を持ち積極的に行動できる、短期間でお互いを理解し機能的なチームになるということが実現できます。

■NECビッグローブでのチーム作りの例
チーム編成グループワークショップ

プロダクトオーナーがプロダクトの説明やどんな開発を期待しているのかを説明

誰がどのチームのロールとして活動していくのが向いているのかをグループ内で数人に分かれて議論

各グループで議論した結果を全員に共有

各自の意向調査

各自がどのチームのロールとして活動していきたいかをチーム編成シートに記入して立候補(いくつか志望をたてる)

チーム編成の決定

上記の結果をもとに、チームを編成

プロジェクト関係者全員で顔合わせ

チームビルディングのワークショップ

各自がどのようにプロダクトやチームに貢献するか、どう成長していきたいかを共有

自分の強みと弱みを共有し、他のメンバーから支援して欲しいことなど期待値を共有

チーム結成

リーンキャンバス(ビジネスモデルの仮説・検証ツール)やインセプションデッキ(プロジェクトの全体像やこれからの方向性等を明らかにしてくれるツール)を作成し、プロダクトのビジョンやミッションなどを議論

全員が本音で語れる場をつくる(例えば、付箋を活用して一人ひとりの意見を引き出す等)

チームのルールをつくる

ランチや飲み会も取り入れながら親睦を深める

 こうしたプロセスがスムーズに進み、チームとしてのバランスがとれるようさりげなく舵取りをするのがスクラムマスターの求められる役割です。できあがったチームでは、役職や肩書きなどに縛られることなく全員が同じチームになり、コミュニケーションをすることが大切です。メンバーが本音で対等に意見できる空気を作ることで、気づきを率直に共有し、問題を早期に発見、カイゼンできるチームへと成長していくのです。 スクラムはアジャイル開発をスムーズにしてくれる手法ですが、この手法を導入すれば成果がでるというわけではありません。アジャイルなチームは、採用した手法にかかわらず、常に「カイゼン」し続けることで成長していきます。

 次回は、スクラムチームがどのように価値のあるプロダクトを成長させていくのかを解説します。

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キーマンズネットとは
基幹業務システムの開発を経て、2011年よりNECビッグローブでアジャイルな開発を行なっている。チームの立ちあげ、スクラムマスター、アジャイルコーチなどのチーム作りから、チームメンバーとしてコーディングも行なっている。最近のマイブームは「ドメイン駆動設計」。

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