第2回 アジャイルなチームを育てる「カイゼン」

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第2回 アジャイルなチームを育てる「カイゼン」

開発 2013/09/10

 「第1回 アジャイル開発にまつわる誤解」では、アジャイルとは開発の姿勢であるという話をしました。今回は、アジャイル開発のベースとなる“フィードバックを回す”という行程を有意義なものにする「カイゼン」という考え方をご紹介します。この考え方は、ウォータフォールでもそれ以外の手法でも、もっと言うと開発以外の仕事にも応用可能です。  

フィードバックによりチームを成長させる

 アジャイル開発は、工程を短く区切り、都度課題を解決していくことで、よりニーズに合ったシステムを作ろうというものです。そのため、“フィードバックを回す”ことが非常に重要で、アジャイル開発が成功するか否かを分けるポイントにもなってきます。このフィードバックは大きく分けてプロダクトとチームの2つに対して行われます。

プロダクト

1週間〜4週間区切りで、できあがったソフトウェアを確認する。
従来は仕様書ベースでの確認のため、ソフトウェアが完成するまで問題が見えませんでした。しかし、実際にソフトウェアを操作しながら確認することで、必要だと思っていた機能が実は不要であること、逆に想定していなかった機能が必要であること、などに気づくことができます。このフィードバックの繰り返しがゴールへの近道となり、本当に必要なソフトウェアができあがっていきます。

チーム

毎日や週に一度、目的に応じたミーティングを実施し、課題を確認する。
開発のネックになっている課題を見いだし、解決策をメンバーで検討します。これを繰り返していくことで、自律的に課題を見つけ、常により良くなっていくアジャイルなチームができあがっていきます。

 アジャイル開発では、前者のプロダクトへのフィードバックについて語られることが多いように思います。日々の開発作業に追われると後回しになりがちですが、アジャイル開発においてはチームのフィードバックも同じように重要です。

 チームのフィードバックでは、「カイゼン」の考え方が役立ちます。「カイゼン」は、日本の製造業で生まれた考え方で、トップダウンではなく、現場の作業者自らが意識的に課題を洗い出し、改善策を考える活動のことです。これを繰り返すことで、自律的に課題を見つけ、「カイゼン」していけるチームに成長することができるのです。

「カイゼン」で重要な“3つ”の要素

計画を立てる

 「アジャイル開発は計画を立てないのでは?」というのは大きな誤解で、アジャイルな開発においても計画はとても重要です。計画は「1日」、「スプリント」、「リリース」という3つの単位で立て、それぞれ、「朝会」、「スプリント計画会議」、「リリース計画会議」という3つのミーティングがチーム全員で行われます。計画を立てることで、何を目標にするかと、何を行わなければならないかを明確にします。そして、計画通りに進まなかった場合には、何が問題だったのかをチームで考え、「カイゼン」すべき課題として共有します。

見える化する

 システム開発では、重要情報はパソコンの中や人の頭の中だけに入ってしまいがちです。それらの全てを取り出すのは容易ではなく、読者の皆様も「まさか!」と思う重要なことが周知されていなかったりする経験があるのではないでしょうか。それを防ぐのが見える化です。見える化すると、チームのいい部分も問題点もだれでも認識でき、カイゼンの「ネタ」を見落としづらくなります。

BIGLOBE社内の見える化の例

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BIGLOBE社内の見える化の例
BIGLOBEでは、タスクボードを使いチームのタスクをいつでもだれでも見えるようにする、バグが出たらホワイトボードに貼り付ける、チームのルールを掲示しておくなど、チームで様々な工夫をしています。

ふりかえりを行う

 プロジェクトが進んでいくと、様々な問題が起こってきます。それらを解決するために行うのが「ふりかえり」です。ふりかえりにはいくつかの手法がありますが、よく行われているのは“KPT法”と呼ばれ、「Keep:良かったこと」「Problem:悪かったこと」「Try:今後行うこと」をチームで出していきます。開発中の出来事を思い出し、問題点を洗い出して施策を実行していくことで、チームがどんどん変化していきます。その効果を目の当たりにしている私は、スクラムのプラクティスの中で最も重要なものがふりかえりだと考えています。

「カイゼン」の効果

 NECビッグローブでこのようなやり方を始めた所、色々な効果が現れました。

障害やトラブルの半減

障害が減少した大きな理由のひとつは、コミュニケーションが取れたことで、システム開発の依頼者との認識のズレが少なくなった点です。できる限り多くのことを見える化したこと、ふりかえりによりズレが生じやすいポイントを認識していくことで、半分以上の障害を防ぐことができるようになりました。

「カイゼン」のサイクルが回り、開発パフォーマンスが上がる

障害の半減と重複しますが、無駄な障害や開発のやり直しなどが減り効率化ができました。  

チームの会話量が増え、認識違いなどが極端に減る

「チームでカイゼンしていく」という意識が根付いたことで、些細なことでも積極的に共有されるような風土ができあがりました。口に出して確認することで、より密な連携ができるようになりました。

チームが活発になり、雰囲気が良くなる

目的や課題をしっかりと共有することでチームの雰囲気がとても良くなります。そうすると「みんなで良いものを作ろう」という空気が自然と生まれてきます。  

 「計画」、「見える化」、「ふりかえり」というのは、基本的なことのように感じると思います。しかし、頭で意識するだけで「カイゼン」を行うのは簡単ではありません。だからこそ、まずはアジャイルで決められている方法を取り入れ実践していくことで、自然とチームが変化していきます。お客様の事情などでフィードバックサイクルは回しにくいというチームでも、自分たちのチーム内でできる「カイゼン」活動は必ず行うことができます。完璧なアジャイルのプラクティスができなくとも、まずは「カイゼン」のサイクルだけでも行うのはオススメです。

 次回は、「カイゼン」を手軽に取り入れられる開発プロセス「スクラム」をご紹介します。スクラムには、ふりかえりや朝会などのミーティング、タスクボードなど情報の見える化などがプロセスに組み込まれているので、「カイゼン」を手軽に導入できるおすすめの開発手法です。

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キーマンズネットとは
基幹業務システムの開発を経て、2011年よりNECビッグローブでアジャイルな開発を行なっている。チームの立ちあげ、スクラムマスター、アジャイルコーチなどのチーム作りから、チームメンバーとしてコーディングも行なっている。最近のマイブームは「ドメイン駆動設計」。

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