イノベーティブな企業へ変身させる「フューチャー・センター」

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イノベーティブな企業へ変身させる「フューチャー・センター」

情報共有システム・コミュニケーションツール 2013/08/29

1. 企業が抱える難題を解決するフューチャー・センター

 イノベーションという言葉を初めて用いた経済学者のシュンペーターは、異なる知識や技術を結び付け、新たな価値を生み出すことがイノベーションであると唱えた。

 異なる知識や技術を結び付け交流を促すために、時間や空間の制約を超えたコミュニケーションを実現させることはITが得意とする分野である。しかし、時間や空間の制約を超え、異なる知識が結びつきやすい「場」そのものを提供しただけでは十分ではない。見知らぬ人をただ単に対面させただけでは、自然と対話が発生し、イノベーションを生む活動へと発展することは到底期待できないからである。

 ところが、バーチャルではなく現実の世界では、イノベーションを起こす目的で社内外の異なる知を結びつける様々な方法が存在する。その取り組みの1つが 「フューチャー・センター」である。フューチャー・センターは異なる知識を結びつけるための「場」を提供する。

 フューチャー・センターはスウェーデンが起源で、1996年に活動がはじまった。その後、欧州では政府機関が開設したのを皮切りに、20程の組織が存在する。日本では、富士ゼロックスKDIや東京海上日動システムズなどの企業が先導して取り組んでいる。

 日本企業の多くは、今後徐々に縮小していく国内市場からグローバル市場に活躍の場を広げようとしている。しかし、グローバル市場において、日本発の製品やサービスは未だに技術先行、高品質指向であり、それによって新興国においては必ずしも成果を上げていない現状が指摘されて久しい。これまで企業が取り組んできたように新製品開発のプロジェクトを立ち上げるなどの一辺倒なやり方では、画期的で世界を変えるようなアイデアが湧いてくるとは限らない。世界経済フォーラムのイノベーションランキングで上位にランクインするほどの技術力を持つ日本だが、企業内に閉じこもっていてはもはや解決できない複雑な問題を企業は抱えている。そして今、企業はもっと開かれた関係性を生み出す「場」を必要としているのではないだろうか。

 フューチャー・センターでは、この難題を解決するため、様々なステークホルダーを集結し課題に取り組むのである。場合によっては顧客やNPOを招くなどして、幅広い人の英知を借りることになる。多様な人を集め対話することで新たな気づきが生まれることを期待し、対話の積み重ねによって難解で複雑な問題を解決しようとする、その「場」となるのがフューチャー・センターである。フューチャー・センターが着目される理由は、難解な問題を解決する新たな手法として期待されているからである。

2. 企業がフューチャー・センターに取り組む理由とは

 フューチャー・センターを開催するにあたって、重要なキーワードの1つが「未来志向」である。製品開発プロジェクトなどでは近視眼的になりがちだが、自分が関わる課題を解決することがはたして未来をどう変えるか、という観点で捉えることができるようになるのである。こうして、異なる考えや知識を一堂に集結し、目先のことではなく、将来を見据えることで新結合の期待が高まり、新結合によってイノベーションが起こりやすくなるのである。

 フューチャー・センターの特徴として、「フューチャー・センター・セッション」(フューチャー・セッション)というものがある。これは、個々の課題について検討するミーティングのことである。セッションを円滑に進めるために進行役(ファシリテータ)が必要となる。セッションは複数回行われることもあり、ファシリテータの誘導で未来を描きつつ、アイデアを形に変えていく作業を行う。

 フューチャー・セッションが行われる場所は、会議室とは一味違った、リラックスした環境で対話ができるようにデザインされた「場」である。これはリラックスして対話できる環境を作りだすことが目的であり、リラックスできる環境で、非日常の空間でアイデアが湧いてきやすい工夫があれば、本格的な施設がなくても、社内の会議室などの施設を利用することも可能である。

 企業がフューチャー・センターに取り組む理由には、以下の3つのレベルがあるという。

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 このレベルは1から順に上っていく。それは、1が成立しなければ、2は達成できない、といったように段階をふまなければならないからである。フューチャー・センターでのセッションは現実の空間と時間を共有して行われるが、セッションの熱意を維持し、継続させ、セッションをより活性化させるには、バーチャルな「場」を補助的な支援ツールとして利用することが有効ではないか。バーチャルな場では、リアルな世界のセッションの雰囲気を維持し、話し言葉で対話できることが条件である。 この条件を満たすITツールに社内SNSがある。

3. 企業のソーシャル技術導入の成功率はわずか10%

 ガートナーの調査によると、企業のソーシャル技術導入の成功率はわずか10%という。大変ショッキングな数字である。10%という低い数字の理由は、“provide and pray”によるアプローチが原因とのことである。つまり、企業側が「場」を提供すれば、利用者が自ずと効果的な利用方法を探し出して使ってくれるようになる、という姿勢に問題があると指摘している。目的が欠如したまま導入に踏み切ったことが成功率を下げているのである。

 ガートナーの調査記事では、この状況を改善し導入を成功させるポイントとしていくつかの対策が提言されている。

・参加者にとって魅力のある目的を設定する。
・コミュニティを引き寄せる魅力をだす。
・事業としての価値を明確にする。
・発展の促進を促す。(企業と利用主体となる組織の、双方の基になる目的を明確にする。)

 「目的を明確にする」のは、ごく当然のことのように思える。しかし、実は多くの企業が目的を見いだせずに頭を悩ませていることも事実である。ソーシャル技術導入の目的を、イノベーティブな企業への変身と位置付け、それを実現する具体的な手法として、フューチャー・センターを開催する、というのも1案ではないだろうか。(参考書籍「フューチャーセンターをつくろう」)

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キーマンズネットとは
株式会社リンコム「智泉」事業推進部 シニアマネージャ。2001年に株式会社リンコムへ入社し、WEBユーザビリティ診断事業の立ち上げ、米国GIGA Information Group社のサービスであるウェブサイト・スコアカードの日本展開に従事。現在は社内SNS「智泉」を提案する第一線で活躍中。

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