中小IT企業に求められるサービスビジネスへのシフト(4)

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IT現場の道先案内人 Key Conductors

中小IT企業に求められるサービスビジネスへのシフト(4)

2013/09/03

【第4回】テンプレート活用方法

 前回はサービスビジネス、特に「ビジネスアプリケーション活用サービス」と「システム受託開発」を比較することで、サービスビジネスの特徴についてお話ししました。今回、この最終回はテンプレートの活用方法について概要を説明します。

共通キャリア・スキルフレームワーク概要

 IPAでは、IT人材について人材像とその保有すべき能力や果たすべき役割を体系的に整理した枠組みである共通キャリア・スキルフレームワーク(第一版・追補版)(以下「CCSF」という。)を作成し普及活動を行ってきました。テンプレートは、このCCSFの枠組みをベースに作成されています。そこで、まずは簡単にCCSFについてご紹介したいと思います。
 CCSFはIT企業やユーザ企業のIT人材、及び製造業等の組込み人材が共通して利用できるスキル標準の仕組みです。対象とする領域は図1の通りで、ITに関する事業の大部分をカバーするものです。この領域について、具体的な仕事を定義した「タスクモデル」、役割分担を例示した「人材モデル」、仕事を遂行するための能力「スキルモデル」の3つのモデルから構造化されています(図2)。この構造を表形式としたイメージが図3になります。タスクは3階層で表現され、大・中・小分類の3階層の小分類に紐付くスキルが1300項目近くに上ります。これを参照して自社の事業計画に即してタスクモデルやスキルモデル、人材モデルなどをカスタマイズし自社における人材育成のプラットフォームを構築します(図4)。
 CCSFについては下記のURL上段から関連コンテンツがダウンロードできますので、詳しくはこちらをご覧下さい。

図1 CCSFにおけるタスク範囲

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図1 CCSFにおけるタスク範囲

図2 CCSFのコンテンツ構造

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図2 CCSFのコンテンツ構造

図3 CCSF構造イメージ

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図3 CCSF構造イメージ

図4 CCSF活用プロセス

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図4 CCSF活用プロセス

テンプレートとは?

 このCCSFを活用して「ビジネスアプリケーション活用サービス」の実態を具体的に示したひな型がテンプレートです。本テンプレートは、CCSFにおける「タスクモデル」「スキルモデル」から、対象とするビジネスに必要なタスクとスキルを抽出し、表1に示すような関連情報と合わせてパッケージ化したものです。企業においてはテンプレートをベースに自社のビジネスに合わせてカスタマイズすることにより、ビジネスを担う人材に必要なタスク、スキルや知識を明らかにした人材育成の枠組み(以下、自社版スキル標準という。)を作成することができます。

図5 テンプレートイメージ

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図5 テンプレートイメージ

表1 テンプレートドキュメント構成

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表1 テンプレートドキュメント構成

(1) テンプレートの利用者
 本テンプレートを利用する企業は「中小IT企業」を想定しています。特に従来型のシステム受託開発を継続することに危機感を持ち、ビジネス変革を模索している企業にとって有効です。企業内においては、このようなビジネス変革をリードする経営層やこれに準じるマネージャの方を利用者として想定しています。加えて自社版スキル標準や人材育成計画を策定する人材担当部門や事業部門の方々も対象としています。

(2) テンプレートの利用目的
 本テンプレートでは「サービス型ビジネス」の一例を具体的に示しています。中小IT企業がこのようなビジネスへ変革するための参考情報として利用できます。また、人材育成においては自社版スキル標準の策定、見直しに際して参照することができます。

(3) テンプレートの利用タイミング
 新ビジネスへの変革を検討(計画)するタイミングで参照します。一般的には中期事業計画策定時や年度事業計画策定時がこれに相当します。また、人材育成の観点からは人材育成計画を策定する際や自社版スキル標準を策定する際に参照します。

テンプレートの活用

 それでは、実際にテンプレートを活用して、「人材」の視点からビジネス変革を検討するプロセスについて解説していきます。前回(第3回)の「育成PDCAの確立と実践」におけるアプローチを下敷きにテンプレートの活用方法を説明します。ここでは、概要の説明になりますので、詳細については「ビジネスアプリケーション活用サービス型テンプレート 活用ガイド」をご参照ください(こちらからダウンロードできます)。

図6 テンプレート活用プロセス

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図6 テンプレート活用プロセス

■ビジネス変革の検討

 第2回の「ビジネス変革の視点」でお話ししたように、ビジネス変革は様々な視点で総合的に検討する必要があります。この検討結果として、サービスで対象とする業種・業界を定め、サービス価値の源泉となるビジネスアプリケーション製品を定めます。本テンプレートが対象とする「ビジネスアプリケーション活用サービス」を牽引する人材は、ビジネス対象の業種・業界、活用する製品に関する知見などが求められるので、人材育成には適切な環境と長い期間が必要です。したがって、自社の社員が得意とする分野や製品に焦点を当て、現行ビジネスと強い接点のある「業種・業界」と「ソリューション製品」を仮選択することも有効です。

■A.タスク定義
図7 タスクテンプレート(編集用)

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図7 タスクテンプレート(編集用)

 「ビジネス変革の検討」結果をインプットにタスクテンプレート(図7)を参照して、自社版ビジネスアプリケーション活用サービスのタスクを定義します。タスクテンプレートには、ビジネスアプリケーション活用サービスに必須のタスクと、事例における業務内容例が記載されています。「ビジネス変革の検討」で想定したビジネスを念頭にCCSFタスク毎に実行する業務内容をたどり、重要なタスクが不足していないか確認し必要に応じて追加、削除します。また、内容の変更を行います。
■B.スキル定義
図8 スキルテンプレート(タスク別)

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図8 スキルテンプレート(タスク別)

 タスクテンプレート上で、自社タスク定義がまとまれば、タスク別のスキルは自動的に定まります。タスクテンプレート(編集用)上の「CCSFタスク分類コード(小分類)」に該当するタスクを、スキルテンプレート(タスク別)(図8)上で見つけて、その他のタスクを削除すると、「スキルテンプレート(タスク別)」は、自社タスク定義に必要なスキルだけとなり、自社スキル定義が完成します。
■C.人材像定義
図9 人材像定義プロセス

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図9 人材像定義プロセス

 本テンプレートではタスクテンプレートに役割分担例が記載されています。これらを参考にして、ここまでに作成した自社タスク定義及び自社スキル定義をベースとした自社版の役割分担を定義します。
■D.人材育成制度の構築

 ここまでに定義したタスク、スキル及び人材像などをベースとして人材育成制度を構築します。人材育成制度は一般に図6における右側のPDCAサイクルになります。

■E.人材育成PDCAサイクル

 ・PLAN:育成する人材の質と量を設定し、育成アプローチを描く人材育成計画を作成します
 ・DO:計画に基づいて人材育成を行います。実務の遂行を通じた育成(OJT)や教育・研修活動などオフラインでの活動があります
 ・CHECK:育成活動の結果を把握し評価、分析します
 ・ACT:評価結果から計画の妥当性や育成活動の妥当性を見極めます。課題を抽出し改善案を作成します

 このようなPDCAサイクルを会社の制度として構築します。「誰が」「いつ」「何を」行うかを明文化します。また、組織として責任者や担当者を明らかにし、全社的に承認された仕組みとします。

■現状把握

 構築した人材育成制度を使って、最初に取組みたいのは現状把握です。これは「E.人材育成PDCAサイクル」におけるCHECKのプロセスに該当します。定義したスキル項目を使って、各社員の保有状況を把握し、その結果を集計することで自社におけるスキル保有状況を把握します。そのためには、スキル項目に対する回答基準を明らかにする必要があります。例えば、以下のようなスキル充足度などを参考にして自社版を設定します。

ランク0(R0):知識・経験なし
ランク1(R1):トレーニングを受けた程度の知識あり
ランク2(R2):サポートがあれば実施できる、又はサポートを受けながら実施した経験あり
ランク3(R3):独力でできる、又は経験がある
ランク4(R4):他者を指導できる、又はその経験あり
                                                              出典:CCSF活用ガイド2.1.5-(4)

 このような基準に基づいて得られた回答結果は、自社におけるビジネス変革の具体化と、ビジネスに必要な人材育成に活用するため以下のような視点から整理します。

 ●自社の強みを把握(得意とする業界・業務分野、ソリューション製品)
 ●必須タスクに関する強弱の把握
 ●役割分担単位での充足度の把握


 現状把握の結果を使って、ビジネスアプリケーション活用サービスの展開を検討するための材料とします。定量的に把握した自社の強みやスキルの強弱などは、ビジネス変革の具体化や軌道修正する際の基礎情報になります。また、ビジネスを遂行する上で課題となるスキルの弱点や不十分な知識に対して、スキルアップの目標を設定し人材の強化を図ります。 こうした取り組みを通じて自社のビジネス変革を具体化すると共に、自社の新ビジネスに求められる人材を育成します。

事例調査

 今回、作成したテンプレートが”絵に描いた餅”にならぬよう、ビジネスアプリケーション活用サービスに該当するビジネスを既に実施し成果を上げている4社の協力を得て、具体的なビジネス事例を調査しました。この調査結果を分析し統合したものが今回のテンプレートになります。各社の事例においては実際のビジネスとその現場で活躍されるご担当者の「生の声」から編纂されていますので、よりリアルなビジネスの姿が浮かび上がります。テンプレートと同様、自社におけるビジネス変革に活用していただけると思います。

表2 事例調査企業

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表2 事例調査企業

 各社における事例を整理したイメージが以下になります。「ビジネスモデル概要」(図10)では、ビジネスの内容(概要、対象市場、規模、体制)及びビジネス成功の鍵となっている特徴について記載されています。「主担当モデル」(図11)ではビジネスを主体となって担う人材の役割、求められるスキル・経験・知識などがまとめられています。

図10 ビジネスモデル概要

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図10 ビジネスモデル概要

図11 主担当モデル

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図11 主担当モデル

 また、各社におけるビジネスの内訳を「タスク一覧」として整理しています(図12)。各タスクの内容を示す解説と役割分担例をまとめたものです。ここでは、事例調査結果の各タスクとタスクテンプレートを関連付けて参照できるよう、CCSFタスクが紐付けられています。

図12 事例調査におけるタスク一覧

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図12 事例調査におけるタスク一覧

 このような事例調査結果は表2の4社についてまとめられ、テンプレートのコンテンツの一部として提供されています。

おわりに

 今回は”中小IT企業に求められるサービスビジネスへのシフト”というテーマで4回に渡って掲載させていただきました。ご購読下さった皆様にはお礼申し上げます。ありがとうございました。
 中小IT企業の置かれている環境は決して楽観できるものでは無いという認識から、今回、ご紹介したテンプレートが作成されました。従来型のビジネスに固執するのではなく、新しく開けてきた「サービス化」という世界を事業活動における選択肢として検討していただくきっかけになればと思います。しかし、このようなビジネス変革を促すには抽象的な「きれい事」を並べても実行に繋がらないという意識もありました。そこで「サービスビジネス」のなかでも「ビジネスアプリケーション活用サービス」という具体例を設定し、これを更にCCSFベースで詳細に表現するというアプローチを採用しました。
 本コラムと「ビジネスアプリケーション活用ビジネス」テンプレートをご活用いただくことで「サービス化」に向けたビジネス変革への一助となるように願っております。

テンプレートダウンロードURL:https://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/ccsf/download.html

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キーマンズネットとは
PwCコンサルティング株式会社にて、ERP基幹系システムやその他のITシステム導入においてプロジェクトマネージャーを担当。その後、国内ERPベンダーで人事制度策定及び人材育成を担当。2011年より独立行政法人情報処理推進機構(IPA)HRDイニシアティブセンターでIT人材育成に関する企画業務を担当。

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