中小IT企業に求められるサービスビジネスへのシフト(3)

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中小IT企業に求められるサービスビジネスへのシフト(3)

開発 2013/08/27

【第3回】“サービスビジネス”は“システム受託開発”と何が違うのか?

「作る」ことがゴールではない

 前回はビジネス変革を現実的に検討するため、様々な視点が存在すること、また、具体的なビジネスモデル(ビジネスアプリケーション活用サービス)を拠り所にすることなどについて解説しました。今回は従来型の「システム受託開発」と「サービスビジネス」の違い、特に「ビジネスアプリケーション活用サービス」を比較することで特徴を明らかにしていきたいと思います。

 ビジネスアプリケーション活用サービスとシステム受託開発では、作り出すビジネス価値や評価基準が大きく異なります。これらを比較したのが以下の表1になります。システム受託開発のビジネス価値はユーザ要件を満たすシステムの開発であり、ユーザとIT企業の両者にとって、開発計画のQCD遵守が最大の関心事です。一方、ビジネスアプリケーション活用サービスでは、多くのサービス型ビジネスと同様、提供するサービスによって、顧客における業務上の課題が解決されることが最大の関心事です。さらに、顧客が想定していなかった課題が解決されることで顧客満足を最大化することを目指します。

表1 システム受託開発との比較

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表1 システム受託開発との比較

図1 システム受託開発との比較

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図1 システム受託開発との比較

 ビジネスアプリケーション活用サービスは「作る」ことを最小化し、既存の製品やサービスを「使う」ことで顧客課題の解決を図ります。また、プロジェクト規模は非常にコンパクトで「低コスト」「短期間」によるサービス提供を行います。このような特徴をシステム受託開発と比較したのが右図1です。

どのような人材が求められているか

 このような特徴を持つサービスビジネスを牽引し成果を上げるのは、どのような人材でしょう?以下の表2はビジネスアプリケーション活用サービスに求められる知識・スキルと行動特性について、システム受託開発と対比したものになります。例えば、システム受託開発では業務知識は顧客から示され、これを理解しシステムに実装することが求められます。一方、ビジネスアプリケーション活用サービスでは、業界や業務に関する知識によって課題を抽出し解決策を提示することで顧客をリードすることが求められます。
 また、ITスキルについても両者に違いが認められます。システム受託開発では専門領域に応じた高い技術力が求められます。一方、ビジネスアプリケーション活用サービスにおいては基礎的なITスキルは必須になりますが、顧客のシステム環境を理解し、自社サービスの標準的な動作環境を必要に応じて顧客に説明できることが求められ、高度な専門性までは要求されません。

表2 システム受託開発との比較(知識・スキルと行動特性)

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表2 システム受託開発との比較(知識・スキルと行動特性)

人材育成の取り組み

 このような「ビジネスアプリケーション活用サービス」に従事する人材を育成するために必要な取り組みは、(1) 育成を促進する環境を整備すること(2) 求められる人材を具体的に定義した上で育成のPDCAを実践することです

(1) 育成を促進する環境
必要な知識・スキルを習得するためには、実際の業務を通じた多様な経験が効果的です。様々な局面を主体的に体験する機会を高める環境作りが重要になります。
 人材育成目的のプロジェクトアサインや人事異動などを組織的に行える環境を整備すること
 社員の希望や資質を把握するためのコーチングやメンタリングの体制を整えること
 様々な顧客の価値観や課題意識に触れるため、顧客と対面する仕事の機会を多く提供すること
 日常的に業界・業務動向に触れる機会を提供すること(協議会やカンファレンスへの参加、人的コネクションの確立)

(2) 育成PDCAの確立と実践
人材育成をする上では、ビジネスと直結した業務、スキル・知識を具体的に定義し、それらを関係者間で共有することで、人材育成の目標と方向を共有することが重要です。また、継続的な育成のPDCAを実践するための体制を確立することも重要です。
その具体的な取り組みと手順は以下のようになります。
A) 自社におけるサービスビジネスの実践に必要な業務(タスク)を明らかにする(タスク定義)
B) 自社におけるサービスビジネスの内容に応じて、定義した自社タスク毎のスキルと担当者が共通して持つべき知識・スキルを明らかにする(スキル定義)
C) ビジネス規模、現行社員の保有スキルを踏まえて、標準的な実行体制と役割分担を定める(人材像定義)
D) 以上をコンテンツとした人材育成の仕組みを策定する
E) 策定した仕組みを使って育成PDCAを実践しながら「人材育成の仕組み」を改善する

 次回は以下の図2に示したプロセスに沿って、テンプレートの活用方法について具体的に解説したいと思います。

図2 育成PDCAの確立と実践

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図2 育成PDCAの確立と実践

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キーマンズネットとは
PwCコンサルティング株式会社にて、ERP基幹系システムやその他のITシステム導入においてプロジェクトマネージャーを担当。その後、国内ERPベンダーで人事制度策定及び人材育成を担当。2011年より独立行政法人情報処理推進機構(IPA)HRDイニシアティブセンターでIT人材育成に関する企画業務を担当。

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