中小IT企業に求められるサービスビジネスへのシフト(2)

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中小IT企業に求められるサービスビジネスへのシフト(2)

開発 2013/08/20

【第2回】現実的に考えるビジネス変革

ビジネス変革における課題

 第1回では「“作る”から“使う”へのパラダイムシフト」というテーマで、ユーザ企業におけるサービス利用へのシフトと受託開発型ビジネスの縮小について見てきました。こうした中、中小IT企業は受託開発型の仕事が将来、再び増えるのを“待つ”のではなく、サービスビジネスへのシフトを積極的に進めることが生き残りに向けた1つの選択肢ではないか…というお話しをしました。
 しかし、多くの企業(特に中小IT企業)では変革への道筋を描けていないのが実情ではないでしょうか。それは、新しいサービスビジネスが従来型とどのように異なるのか、そこで必要になる人材はどのようなものか、などについて具体的に検討されていないことが原因と考えられます。「ビジネス変革」と言っても抽象的な精神論ではなく、具体的にイメージできるように編纂されたのが第1回の冒頭で触れた「ビジネスアプリケーション活用型サービス」のテンプレートになります。(テンプレートは下記URLの中段からダウンロードできます)

テンプレートダウンロードURL:https://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/ccsf/download.html

サービス型ビジネスって?

 IT業界における「サービスビジネス」と言ってもその解釈は様々です。ここでは読者の皆さまに同じイメージを持っていただくために以下のように定義したいと思います。

“情報システムという『モノ』を販売するのではなく顧客が享受する便益(課題の解決など)に対して対価を受けるビジネスモデル”

 こう考えると、ITに係る仕事の多くが含まれるのではないか?と感じられるかもしれません。しかし、サービスビジネスの観点は顧客視点です。顧客の立場で考え抜かれたサービスであるか否かは大きな分岐点になります。サービス型ビジネスの特徴については次回(第3回)で更に詳しく見ていきたいと思います。

ビジネス変革における視点

 「ビジネス変革」と言っても様々な視点があります(図1)。これらの各要素を総合的に検証し会社の戦略として「ビジネス変革」に臨むことになります。これは「サービス型」への変革に係らず一般的に言えることだと思います。IT企業について考えた場合「人材」が価値を生み出す大きな源泉になっています。他の産業と比べても人材の重要性は高いものがあるのではないでしょうか。

図1 ビジネス変革における視点

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図1 ビジネス変革における視点

 もちろん、人材以外の要素についても表1にあるようなポイントについて検証しながら進めることになります。

表1 ビジネス変革における検証ポイント

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表1 ビジネス変革における検証ポイント

テンプレートにおけるビジネスモデル

 サービス型ビジネスと言ってもビジネスモデルは様々です。抽象的な議論に陥らないよう、今回、IPAで作成したテンプレートは具体的なビジネスモデルを想定しています。それは、「中小企業に的を絞り、既存ビジネスアプリケーションを活用して『業務ソリューション』を提供するサービス型ビジネス」で「ビジネスアプリケーション活用サービス」と呼んでいます。以下、当該ビジネスモデルの特徴を説明します(図2)。

図2 ビジネスアプリケーション活用サービス概念図

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図2 ビジネスアプリケーション活用サービス概念図

1: 

既存のビジネスアプリケーションを活用
アプリケーションを自社で開発するのではなく、既に存在する製品を「活用」するビジネスモデルです。新しいビジネスへシフトする際には初期投資をできるだけ抑えるなど、リスク管理が重要となります。実績の無い領域で独自のアプリケーションを開発するのではなく、既存のアプリケーションを活用することでサービスビジネスへのシフト、いわゆる「サービス化」への契機とします。

2: 

「短期間」「低コスト」プロジェクトで収益を確保
プロジェクトにかかる期間をできるだけ短くし、自社の体制もコンパクトなものとした「短期間」「低コスト」のビジネスモデルです。また、「サービス化」を求めるユーザのニーズもここにあります。

3: 

対象顧客は中小企業
サービス提供先もまた中小企業に絞り、中小企業の特徴に合った方法でサービスを提供します。中小企業は大企業に比べて業務プロセスや組織構造が複雑ではありません。サービス化された業界・業務標準によって多くの課題を解決する可能性が高まります。

4: 

プライムベンダとして顧客と関係構築
ビジネスを継続、拡大するためには、プライムベンダとして顧客との関係を築くことが重要です。顧客の業務に精通し、顧客が意識していない課題を解決することで、提供するサービスの価値は評価されます。

 このようなビジネスモデルについて「人材」という切り口でテンプレート化しています。

 もちろん、このようなビジネスモデルをそのまま踏襲することができる企業は限られていると思います。しかし、「ビジネスアプリケーション活用サービス」という具体的なビジネスモデルを参照することで、自社が現在行っているビジネスや目標とするビジネスとの相違点や類似点を明らかにすることができます。その上で、「人材」を切り口とした、本テンプレートを参考にできるところと、自社独自に構想するところを切り分け、実際にビジネス変革を検討する際に役立てていただけることを期待しています。
 抽象的な展望や方針ではビジネス変革は実現できません。展望を描く場合も出来るだけ具体的なものとし、次のステップである作業ベースへの落とし込みを想定した活動が重要になります。

 今回はビジネス変革をより現実的に考えていただくために、検証する様々な視点を例としてお示ししました。また、具体的に実行していく契機となるよう、テンプレートにおけるビジネスモデルをご紹介しました。
 次回は、従来型の「受託開発」と「サービスビジネス」の相違点を明らかにすることでサービスビジネスの特徴を浮き彫りにしたいと思います。

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キーマンズネットとは
PwCコンサルティング株式会社にて、ERP基幹系システムやその他のITシステム導入においてプロジェクトマネージャーを担当。その後、国内ERPベンダーで人事制度策定及び人材育成を担当。2011年より独立行政法人情報処理推進機構(IPA)HRDイニシアティブセンターでIT人材育成に関する企画業務を担当。

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