IT運用の将来像を考える 〜標準化と自動化の進展〜(第6回)

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IT運用の将来像を考える 〜標準化と自動化の進展〜(第6回)

運用管理 2013/03/11

今回は、将来のIT運用のあり方について、私なりの見解を纏めて述べてみたいと思う。

将来のIT運用について

今迄、過去5回の記事を連載してきた。1〜2回はITILを、3〜4回はクラウドを、5回はSNSをそれぞれトピックに取り上げたが、読者の方もお気付きの通り、どの記事でも最終的な結論は、今後標準化と自動化の急速な促進が図られるだろうというものであった。  

率直に書くが、現在登場している、また今後発展していくクラウドや運用の自動化技術は、今までのような人手による運用管理を急速に時代遅れなものにして行くと、私は考えている。

このような変化はIT側からの自発的なものではなく、ビジネス側からのプレッシャーとして発生して行くだろう。
クラウドの登場によって、ITを自前主義で用意しないという選択をビジネス側が始めている。クラウドを選択し自前主義から転換した企業は、自社運用する場合にくらべて明らかに低コストになったという発表を様々な場所で行っている。
しかも、グローバルレベルでメジャーなパブリッククラウドベンダが提供するサービスの可用性や、セキュリティの堅牢性は、自社運用と比べても遜色ないレベルに達して来ている。

日本にはIT子会社が沢山存在するが、IT子会社の中には親会社(ビジネス部門)から、将来にかけての存在意義を真剣に問われるケースも出て来ている。「自前主義を止めた場合、そもそもIT子会社は必要なのか?」と問われているのだ。

勿論、クラウドが発展しても企業内のITが皆無になる事はないだろう。ハイブリッドクラウドの形態になる場合が殆どであろうから、IT運用というものが全く不要になる訳ではない。しかし、その残存するオンプレミスのIT運用についても、様々な自動化技術の発展により省力化が図られていく。
現在、主だったIT運用ベンダは自動化に関わる製品群を市場に投入しているが、その基本的なアーキテクチャは以下のようなものだ。

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鍵となるのがオーケストレーションと記載されている部分であるが、この部分が様々なIT環境・IT機能を媒介し、人的な作業(変更・リリース・障害検知と復旧・定期的なメンテナンス)を自動的に行うのである。

オーケストレーション機能は、物理・仮想サーバやネットワーク機器・ストレージ等を制御出来るだけでなく、VMWare, Hyper-V, Zen といったハイパーバイザー、或いは様々なベンダが提供するサービスデスクや監視ツール・バッチスケジューラ等との API を広く持ち、広範な作業の自動化に必要なワークフロー実装とインテグレーションの能力を有している。

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参考までに自動化プロセスの設定画面も紹介しておく。殆どのツールは、このようなグラフィックGUIで作業手順を登録し、自動化する事が出来る。

こうなると、企業内に残ったIT運用についても相当の合理化を行う事が出来る。これはある意味で、IT運用に携わる側から見ると深刻な事態である。自分の仕事が無くなるかも知れないという事を意味するからである。実際、一部ではIT運用に関してオペレーション業務は減少していくという将来予想も為されている。

しかし、私も含めてIT運用に関わる者は、一旦客観的にこの事態を眺めてみる必要がある。過去第1・2回の記事で、生産工場に例えて標準化と自動化について述べたが、改めて生産工場を思い浮かべてみよう。
工場の目標は、生産量を増やし、欠品率を下げ、製造コストを落とす事である。その為に製造ラインを組み換え、ロボットを導入して行く。標準化は、自動化の前提であり、工場では目標を遂げる為に作業工程での人的介在を極力少なくしようと努力が行われているのである。

IT運用においても、同様に標準化(例えば ITIL の利用など)は、自動化による省力化・コスト削減を視野に入れて行われるべきである。

しかし、国内のITILの普及過程などにおいては、コスト削減は直視されなかった。ベンダやコンサルタントがIT運用部門に提案するに際して、コスト(人件費)削減は訴えづらい。その為、特に品質向上にフォーカスを当てて、人的作業を単に標準化するという事の意味や効果を、ベンダもコンサルタントもこね繰り回したのではないか。
結果的に、ビジネス部門から見るとITILの価値が今一つ不透明になってしまった。今でもビジネス側はITILに対して関心を寄せていないと思う。
ITILの様なマネジメントフレームワークは、コスト・納期・品質のどれも等しく重んじている。ITプロセスの標準化は自動化とペアであり、それにより人件費が圧縮され、納期も一気に短縮され、作業ミスも減るというのが、むしろ当然の思考である。

自動化され得る作業は、いずれ必ず自動化される。
これからIT運用の領域で生き残っていく為には、クラウドや自動化等の技術を応用して、どこまで合理的なITサービス管理が行えるかを考察し、実現する能力を身につける必要がある。実際に、海外のデータセンタでは、インフラ技術だけでなく市場に出回っている自動化技術に精通している人材を募集し始めている。

将来のユーザ企業内でのIT運用は、自動化が促進され、オペレーション業務に対する人的作業の介在は大幅に減少して行くであろう。その結果、IT運用の役割と責任そのものを軽減して行く事が出来、組織自体のあり方も変貌させる事が可能になる。
以下は、今日見られる一般的なITの組織構造である。

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この様にビジネス部門とIT組織が分離した階層的な構造は無くなり、今まで以上にビジネス部門側でITサービスの開発・調達がより機敏に行われるようになるだろう。

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上記の組織では、ITサービスは必ずしも開発を伴わない、単にクラウドサービスを調達するだけというケースも増えるだろう。
敢えて簡単に「サービス開発」という組織をビジネス部門に置いてみたが、この中にはビジネス意図を汲み取って調達(開発)・運用設計を行う能力が必要となる。従って、現在IT運用部門におられる皆さんは、この組織の中に新たな役割を見出せる筈である。
また、サービス管理組織は、横断的なITサービス全体の管理(ITサービスの品質管理や、標準化・規格の推進など)を行う役割を持つが、この中でもIT運用管理者は大きな役割を果たすであろう。
このような姿が、第4回の記事で紹介した「DevOps」が実際に展開した場合に現れると、私は考えている。

IT運用管理者は、今までの役割・仕事の流儀を超えて、領域を広げて活躍して行くべきである。
とは言え、現在、私達の身の回りに既にあるITを見まわした時に、今まで述べたような事は実現不可能と言われる方も沢山いると思う。
日本の企業内ITは、海外に比べてインフラ設計やアプリケーション設計の標準化レベルが低く、(ユーザ部門の要求に屈して)バラバラに構築されてきた。これはIT運用を標準化し自動化を海外で実現されているレベルに転換する上で、非常に大きな壁である。

しかし、日本特有に存在する課題は、私達日本のIT運用に関わる者が解決しなければならない。ガラパゴス化してはいられない。
私達は将来の自身の付加価値を高める為にも、むしろ積極的にクラウドや自動化と言った技術を吸収し、応用するべきである。
現存するIT環境・アプリケーションがクラウドに移行される過程で、過去の様な個別性を省き、IT全体の標準化を推進するようなアプローチは必要であろうし、その為に、ユーザ部門に対して運用コストを抑え、且つアジリティ(迅速性)や柔軟性のあるサービス提供を行う上でも、標準化や自動化が重要である事を訴えて行くアプローチが必要となる。

多難の感はあるが、それでも私はこの様な変化は確実に起こると思う。
何故なら、クラウドが投げかける問い(ユーザ企業はITサービスを利用するだけで良いではないか?)は、ビジネス側から見ると全く合理的であるからである。自動化による省力化・コスト削減についても、同様にビジネス側から見れば、為し得て当然と思えるだろう。
今まで述べてきた事は、IT側から自発的に発生するのでは無く、IT運用を取り巻く環境(=ビジネス側からの要請)の変化という、外部からのプレッシャーによって発生するのである。
単なる技術の進歩ではなく、ユーザ企業がITをビジネスに用いるという観点において、「本来あるべき形」に変わる動きであるが故に、今回述べたような変化は恐らく止まる事無く進むであろう。

従って、私達は敢えて、前向きに自らを変えるべきである。乗り遅れた方が、取り残された方が、危険なのだ。

次回は、米国で展開されている先進的な自動化を例示しつつ、全体のまとめとしたい。
では、是非次回もご覧頂きたい。

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キーマンズネットとは
1997年BMCソフトウェア株式会社に入社。以降15年に渉り、IT運用に関する様々な領域でソリューションの提案やコンサルティング業務を行ってきました。2004年以降数年間 itSMF の分科会活動(事例研究分科会・SLA分科会・ガバナンス分科会)にも参加させて頂きました。

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